日本社会福祉学会 第68回秋季大会

大会について

学会長挨拶

会長あいさつ

日本社会福祉学会会長
木原活信

日本社会福祉学会会長 木原活信

 2020年以来、世界はコロナ感染症に揺さぶられた異例の暗い年を過ごしています。コロナ禍の中で、皆様の所属の大学、福祉機関等も不自由を強いられ、また不便を余儀なくされていることを案じています。被害に合われた方々におかれましては衷心よりお見舞い申し上げます。

 周知の通り、コロナ禍において社会福祉の課題も露出しています。ステイホームによる家庭内におけるDV、児童虐待の増加はすでに報告されているところですが、とりわけ深刻なのはコロナの影響で生じた解雇、雇止めによる失業など生活困窮の深刻な問題です。また、世界的にみて、致死率などの指標が人種差別、所得格差などの社会的不平等を反映し、社会的弱者層に一層深刻な影響を直接に与えていることも分かってきました。ワクチン接種においても南北問題が顕著となっています。つまり、コロナ禍では脆弱なところ、弱いところに最も深刻なしわ寄せがきているのです。社会福祉学会としても、この問題に今後も真剣に向き合っていく必要があるように思います。

 さて、東北福祉大学での第69回の秋大会は、新型コロナ感染症により一年延期しての大会となりました。そしてコロナ感染症は終息するどころか、現在、首都圏など緊急事態宣言下にあり、感染の勢いは収まらない状態となっています。これを受けて、現地での対面での開催ではなく、オンラインによってこの大会を実行することとなりました。このような困難な中で開催をすすめてくださった実行委員会委員長の都築光一先生をはじめ東北福祉大学の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 今大会のテーマは、「「死から生を見つめる福祉」~改めて生と死から社会福祉を捉えなおす~」ですが、今問われている根源的なテーマです。これまで本学会では社会福祉と「死」の問題を本格的に取り上げることは多くはなかったかと思います。しかし、「死」は、かつて仏陀が正面からとらえた「生老病死」という人生の問いそのものであり、人間存在の根底にある重大な課題でもあります。現代の社会福祉の問題においても、それは、人生の終末として考えた場合の高齢者福祉の問題、自死自殺の問題、など直接的にかかわる問題でもあります。ここで取り上げる課題は、生物学的な死の問題だけでなく、その死をどう受け止めるかという社会的課題、あるいは宗教含めたスピリチュアルな問題もかかわってくることになります。

 旧約聖書の一節に以下のような言葉があります。「死ぬ日は生まれる日にまさる。弔いの家に行くのは酒宴の家に行くのにまさる。そこには人皆の終りがある。命あるものよ、心せよ」(コヘレトの言葉7:1-2、新共同訳)。この言葉は、古代イスラエルの知恵ですが、現代の日本においても、深く考えさせられる言葉ではないでしょうか。是非、「死から生を見つめる福祉」というテーマを通して、改めて社会福祉学の中に死と生を真摯に受けとめていきたいと思います。


大会長挨拶

日本社会福祉学会秋季大会開催にあたって

第69回秋季大会 大会長
東北福祉大学 学長 千葉公慈

第69回秋季大会 大会長 東北福祉大学 学長 千葉公慈

 日本社会福祉学会第69回秋季大会を、皆様をお迎えし開催できますことを、心から喜びとするところです。この大会は、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、一年遅れて本学において開催となりましただけに、ひとしおの感があります。

 私たちは、様々な課題を抱えながらも、絶えずこれを克服し前進しております。新型コロナウィルス対策についても、世界中の多くの人々の叡智を結集して、ニューノーマルに対応した国際的なプロジェクトが実施されており、本学におきましても大学教育の社会に対する責任を果たすために、様々な取り組みを実施したところでございます。

 東北福祉大学は、開学以来146年を迎えます。この間、曹洞宗の宗門の人材養成のほか、社会福祉関係者の人材養成に取り組み、今日に至っており、各界で活躍しております。また、長く東北において数少ない社会福祉関係の大学ということもあり、人材養成のほかに、各種の社会福祉関係の学会の開催会場ともなりました。

 今日、少子高齢社会と言われ、かつ人口減少時代が到来してきている中で、今後の社会福祉のあり方について広く多くの方々と議論することは極めて重要であり、本学にてオンラインで学会を開催できますことを意義深いものと考えるところです。

 今回の大会において、今後の社会福祉のあり方等について、様々な議論がなされることと存じます。

 皆様の充実した研究の礎が築かれることと、日本社会福祉学会のますますの発展をお祈り申し上げます。


実行委員長挨拶

大会のご挨拶

第69回秋季大会 実行委員長
東北福祉大学 教授 都築光一

第69回秋季大会 実行委員長 東北福祉大学 教授 都築光一

 パンデミックの影響で一年遅れの開催となりました。これまでの開催要項を見直し、あらためてご案内申し上げるところです。なお今回は、オンライン開催となりました。
 今回の大会のテーマは、人の「死」について取り上げました。
 少子高齢化に加えて人口減少社会をむかえ、私たちは毎日のように、人の死の知らせを耳にしております。死を迎える方々には、家族のほかに医療関係者や福祉の関係者が見守れている方々もおります。一方で、誰にもみとられずに、ひっそりと迎えている方々もおります。さらには、既に他界されているにもかかわらず、人々が集まると必ずと言ってよいほど話題に上る方もいます。一方で、実際に地域内で生活されているにもかかわらず、誰にもその存在を知られることなく暮らしている方もいます。このような現実から、人の死をとおして人の存在も含め、あらためて社会福祉の立場からどのように認識するのかを議論することは、こんにちの日本において、とても意義のあることと考えます。
 亡くなる方の中には、その死の前後に、様々な場や人を通じて社会福祉との関わりを持っている方がおります。また、亡くなる方の周囲には、多くの方々が様々な形で関わりを持っている場合もあり、亡くなる方の死を周囲の方々がその人々なりに受け入れていっております。人々の生活があるからこそ、病や災害、事故など様々な死がそこにあり、そうした姿は、東北においても数多く見受けられます。
 こんにち社会福祉の関係者は、多様な価値観と変転する複雑な社会システムの中で、様々な生活上の課題を抱えて生活している人々に対する実践を展開することと併せて、有無を言わさずに対応を迫る人の死という現実に直面し、その対応のあり方が課題となっております。わが国のこれからの社会において、社会福祉の役割が一層重視されていく中で、死の認識のあり方と、死にゆく人々とその関係者に対する社会福祉の対応のあり方を、しっかりと議論し深めてゆく必要があります。
 これまで取り上げられることのなかったテーマであるだけに、多くの皆さんに参加いただき、活発な議論がなされることを期待しております。
 実行委員会をはじめ、関係者一同、皆さんのご参加を心からお待ち申し上げます。