日本社会福祉学会 第67回秋季大会

大会校企画シンポジウム

会場 大分大学 旦野原キャンパス

テーマ:
自立は社会福祉の規範たり得るか〜存在の多様性を支える論理とは
趣旨:

 社会福祉学の基礎にあるのは「存在の多様性の承認」であり、それは2014年に採択された国際ソーシャルワーク定義においても明示されている。そこでは、障がいや疾病を持つ人、民族的文化的多様性、さらにはいわゆるマイノリティと言われている人々の尊重まで、「多様な生の保障」が語られるが、実はその根底にあるのは共通して「近代的個人」への信頼であり、例えそれがエスニックマイノリティであり、障がいのある人であり、疾患のある人々であったとしても、「自立し、自己決定出来る」道徳的な人格への陶冶についての無批判な信頼は肯定されたまままである。
 多様性とは、こうした一元的な「人格のあり方」を前提として、表層的な嗜好の選択の自由のみを保障するのではなく、もっと根源的という意味でラディカルな、「存在のあり方の多様性」つまりは「自立し、自己決定出来ない存在であっても、その存在を肯定すること」ではないだろうか。折しも、わが国における精神障がい福祉の長期入院への国連からの人権侵害との批判、あるいはいわゆる「自己決定能力を持たないと思われる」認知症高齢者の社会における生活のディレンマなどが顕在化することによって、「存在の多義性」とは何を意味するのかが改めて問われている状況があると思料する。
 本シンポジウムはこうした関心に基づいて、社会福祉の実践の基礎を提供する「学」がいかなる「存在の多様性と多義性」を担保しうるのか、それぞれの立場から研究実践してきた論者からの所論を提供されることによって、ポスト「自立」論の在処と可能性を探ろうとするものである。こうした試みを通じて、社会福祉「学」が真に担保しうる「多様性を許容する論理」とはいかなるものか、またそれを価値基盤とする実践の様相はどのようなものか、単に机上の空論で終わらない実証的にクロスオーバーする議論の展開を目指す。

【シンポジスト】
奥田 知志(NPO法人抱樸代表)
生活困窮者の自立支援の立場から、「自立とは何か」について考える
杉野 昭博(首都大学東京)
障がい者福祉における「自立」概念の変遷についての観点から
山縣 文治(関西大学)
子ども家庭福祉と子ども権利擁護に関する観点から
湯澤 直美(立教大学)
フェミニズム/ジェンダーの観点から
【コーディネーター】
相澤 仁
(大分大学)

※敬称略