「日本社会福祉学会秋季大会における口頭発表分野のあり方を考える」
【趣旨】
秋季大会における口頭発表分野のあり方に関する討論をうけて会員間で意見交換を行う。
【企画背景】
秋季大会における口頭発表分野(分科会)は、特定課題セッションを含めると18にものぼる。確認すれば、①理論・思想、②歴史、③制度・政策、④方法・技術、⑤児童福祉、⑥家族福祉、⑦障害(児)者福祉(精神障害含む)、⑧高齢者保健福祉、⑨女性福祉・ジェンダー、⑩地域福祉、⑪国際社会福祉、⑫貧困・低所得者福祉、⑬社会保険(年金、医療、介護)、⑭医療保健・医療福祉、⑮司法福祉・更生保護、⑯社会福祉教育・実習、⑰震災・災害福祉、⑱特定課題セッションⅠ、となる。
こうした乱立状況をうけ、2016年度に設置された「大会のあり方検討委員会」の報告書は、口頭発表分野の見直しに言及した。その後、2018年12月8日に開催された第5回理事会では、全国大会運営委員会より口頭発表分野の見直し案が示された。同案は、「大会のあり方検討委員会」での議論や、これまでの大会運営の経験を踏まえて、発表分野の大幅縮小を提案するものであった。理事会での審議は紛糾し、見直しは先送りされた。当日の白熱した議論は、発表分野の再編が思いのほか難問であることを強く印象づけた。
では、なにゆえ発表分野の再編問題は紛糾・白熱するのだろうか。おそらくそれは、当該問題が、研究フィールドへの拘りや研究者としてのアイデンティティといった心情的側面に触れるばかりでなく、社会福祉学の分け方や捉え方に関わる根本問題を惹起するからでもあろう。
秋季大会の発表分野と学問的な分野設定は、基本的に次元の異なる事柄であることはいうまでもない。前者については、後者の次元とは切り離し、分野を事前提示せず発表希望者が申告したキーワードに基づいて事後的に振り分ける、といった実務的対応で事足りる。その際、横断的・包括的な分野への再編は不可避であり、旧来の分野名のいくつかが消え去ることになる。しかし、愛着が込められた分野名が大会の発表分野から消えてしまうことで「学会離れ」を加速させるおそれもある。分野別学会の増大に伴う求心力低下が懸念される本学会の現状からいって、それは真剣に受けとめるべき問題といえる。
他方で、発表分野の事前提示は、「何でもあり」ではないことを内外に示す指標として機能していることも軽視すべきではない。もし発表分野が、いかなる発表が求められているか/求められていないかを示すメッセージとして機能しているのであれば、その不提示は無用な混乱を生じさせかねない。
そこで我々としては、発表分野のあり方を公開の場であらためて論じ合う必要があると考えた。社会福祉学の分野設定とその境界自体がゆらいでいる中で、発表分野をめぐって問題意識を共有することは重要な意味をもつはずである。秋季大会の発表分野をどう編成するかという実際的な課題と、社会福祉学における分野設定をいかに現代化するかというアカデミックな課題は、分析的に区別可能な事柄ではある。だが、両者の過剰な切り離しも、過度な一体化も、事の本質を見誤らせてしまうだろう。このような観点から、理事会としてセッションを企画し、発表分野のあり方に関する会員どうしの意見交換の場を設けることとした。
なお、当日の議論については報告書にまとめ、学会ホームページに掲載する予定である。
【シンポジスト等】
- 問題提起:
- 原田 正樹(大会のあり方検討委員会委員長)
委員会報告の経緯と意図 - 討論者:
- 柴田 謙治(機関誌担当理事)
2018年度大会校代表としての経験に基づき課題を整理 - 岡部 卓 (研究担当理事)
社会福祉学における分野設定のあり方を原理的に考察 - 山野 則子(広報担当理事、大会のあり方検討委員会委員)
発表分野の新機軸の提案 - コーディネーター:
- 圷 洋一(日本女子大学)
山縣 文治(関西大学)
※敬称略