日本社会福祉学会 第66回秋季大会

大会校企画シンポジウム

大会日程(1日目)9月8日(土)

テーマ:
21世紀の社会福祉と「運動性」
【趣旨】

 確認できた結果に間違いがなければ、過去の日本社会福祉学会の秋季大会で「社会福祉運動」というテーマは採用されなかったようである。社会福祉運動と政治(政党)とのかかわりも影響したのかもしれないが、愛知では作業所づくり運動や自立生活運動、学童保育運動などが盛んでもあり、そこから「一人ひとりの物語」への共感も芽生えている。日本社会福祉学会秋季大会の66回の歴史のなかで、一度くらいはこのテーマを取り上げたい。
 ただし「社会福祉運動」では運動を進める組織や団体とその活動に議論が限定され、ソーシャルワーカーや社会福祉法人も含めた議論が難しくなるおそれもある。そのため「運動性」と抽象化し、根底にある価値や思想、「運動」の枠に収まらない自助や福祉サービスの開発・調整などの活動、排除から包摂に向けた活動なども含めて、幅広く議論できるようにしたい。
 19世紀にボランタリー・アクションとしてのセツルメント運動は、福祉国家の生成を後押しし、制度としての社会福祉に血を通わせることを目指した。1960年代以降の日本の社会福祉学では戦後の社会福祉本質論争に対して、「新政策論」論争が公的責任を求める運動を通じた権利の実現という視点を提起した。
 1980年代以降には福祉サービスの供給主体の多元化という潮流もあり、住民や地方自治体の労働運動組織が行政に福祉サービスの充実などを要求するという従来のスタイルにとどまらず、社会福祉法人格やNPO法人格を取得して行政から財源を獲得し、自らサービスや支援を創り出す運動や協同組合運動も成長した。また「ソーシャルワークの方法の一つとしてのソーシャルアクション」では独立型社会福祉士による新たな展開もみられ、社会福祉法人改革では社会福祉法人の原点に連なる、制度の枠を超えた活動も求められている。
 このシンポジウムでは、「自立と選択、契約による利用」を基調とする21世紀の社会福祉における「運動性」の位置(労働運動との相違や互助に基づく市民運動としての広がりと市民社会の形成への貢献)や役割、課題、などを検証したい。

【シンポジスト】
伊藤 葉子(中京大学)
障害者自立生活運動
山田 壮志郎(日本福祉大学)
ホームレス状態の人々を支援する運動
石原 剛志(静岡大学)
学童保育運動
朝倉 美江(金城学院大学)
協同組合運動
【コメンテーター】

髙良 麻子(東京学芸大学)

【コーディネーター】

柴田 謙治(金城学院大学)

※敬称略