第58回日本社会福祉学会秋季大会開催に向けて
日本社会福祉学会第58回秋季大会 大会長
日本福祉大学学長 加藤 幸雄
日本社会福祉学会第58回秋季大会(日本福祉大学)に、みなさんをお迎えできることを大変うれしく思っています。前回、本学が担当した名古屋大会は、丁度、社会福祉士法が成立する前夜でした。今回は20年のあいだをおいて、社会福祉士法が改正され、ソーシャルワークへの認知度や職域拡大が飛躍的に進んだなかで、大会運営を担当させていただきます。担当する者としては大変感慨深いものがあります。また、学会が一般社団法人化した最初の秋季大会ということでも意義深いものを感じています。
今回は、新自由主義的な「過度の競争」原理から脱却して、「持続可能な社会福祉の展望と課題-経済・環境・福祉の視点から」というテーマでの開催となります。持続可能な社会の原点は「いのち」です。「いのち」がゆたかに育まれるための絶対条件は「平和」です。今回は、ノーベル物理学賞を受賞され、憲法第9条や平和への思いを人一倍つよく持っておられる益川敏英氏に登壇願います。「くらし」への不安が高まる昨今、雇用保障と社会保障を一体として考えなければならない現実が迫っています。昨年度の大会では、宮本太郎氏に「生活保障」の視点から、「排除しない社会」のあり方について問題提起をしていただきました。今回は、個別の問題に着目して「コミュニティの生活の質」を改めて問うことになります。また、持続性可能な社会のためには未来が開かれていなければなりません。希望や「いきがい」がどう拓かれるのか。その一つの重要な視点が「環境」です。大会開催中は、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開かれています。自然環境との共生を考えた、わたしたちの日常の生活環境はどうあるべきなのか。ゆたかさの本質が問われます。
1つの事例を紹介します。彼は、知的障害があり、精神疾患も疑われ、受刑歴4回の高齢刑余者です。彼には「住所」がありません。資産も、受け入れてくれる施設もありません。保護観察所と地域生活支援センターが協力して彼の生活をなんとか支えています。今般、地域生活定着支援センターが法定化されました。刑務所とセンターに配属された社会福祉士は、「受刑」というスティグマから開放される生活環境を切り拓くことになります。
成年後見が一定の理解と広がりをみせています。本来、ケアと権利擁護は両輪の支えのはずなのに、地域で後見を支えるしくみづくりは緒に就いたばかりです。
いま、2つのことに触れました。これからも社会福祉や社会保障に関わる職域や人材養成への期待はさらに広がるであろうと考えています。今回のテーマに即した研究成果が、広がる実践を励ますものであってほしいと願っています。
最後に一つだけご報告したいことがあります。それは、日本社会福祉学会の理事・副会長として貢献され、日本社会福祉教育学会の会長であった宮田和明日本福祉大学前学長の急死についてです。今大会は、先生の豊富なご経験や研究実績に依拠して実質的にリーダーシップを発揮していただくことを期待していました。大きな羅針盤を失うことになりましたが、残された者で、大会を創り上げてまいります。よろしくご支援ください。
日本社会福祉学会第58回秋季大会
1.大会趣旨
現代社会における新たな社会問題の登場は、これまで地域社会や企業社会、家族に支えられてきた一定の生活の「安定」に大きな変換をもたらしている。具体的には、社会的排除と社会的孤立、あるいは貧困と格差、また心身のストレスといった問題群が、複合化しながら市民生活を脅かしている状況である。
現代社会の市民生活をとりまく諸問題は、都市や中山間地を問わず、 就労・所得・家庭生活といった個別生活者の日常生活の場面から、地域の居住環境にいたるまで、いわゆる「コミュニティの生活の質」にかかわる地域生活保障のあらゆる面にわたっている。例えば、紛争地域の難民問題、途上国の貧困と地球温暖化等の環境問題、エネルギーや食の安全問題、外国人労働者や外国籍住民の生活保障問題、感染症の拡大等々である。今回の政権交代は、これまでの経済・社会・政治システムが、さらには生活のあり方までが、将来への持続性や継続性を失い始めている時代においての選択であろう。そして同時に、日常生活の場としての地域社会において、その問題解決が迫られているのである。
本大会では、そうした時代の変革期にあって、グローバル化と経済危機が同時進行するなかで貧困・格差・排除等の解決方策が迫られている社会保障・社会福祉の持続性回復への理論枠組みとその仕組みづくりを、経済・環境・福祉の視点から追究していく。
2.大会総合テーマ
「持続可能な社会福祉の展望と課題-経済・環境・福祉の視点から」
3.日時・場所
第1日
2010年10月9日(土)
名古屋市公会堂/日本福祉大学名古屋キャンパス
第2日
2010年10月10日(日)
日本福祉大学美浜キャンパス
4.主催
一般社団法人日本社会福祉学会
日本社会福祉学会第58回秋季大会実行委員会
5.共催
日本福祉大学
6.後援(予定)
愛知県、名古屋市、三重県、岐阜県、愛知県社会福祉協議会 名古屋市社会福祉協議会、三重県社会福祉協議会、岐阜県社会福祉協議会、朝日新聞厚生文化事業団 NHK厚生文化事業団中部支局 中日新聞社会事業団 東海テレビ福祉文化事業団 名古屋タイムズ社会事業団 読売光と愛の事業団中部支部 朝日新聞名古屋本社 産経新聞中部本社 中日新聞社 名古屋タイムズ社 日本経済新聞名古屋支社、 毎日新聞中部本社 読売新聞中部本社 NHK名古屋放送局 中京テレビ放送 中部日本放送 テレビ愛知株式会社 東海テレビ放送 名古屋テレビ放送、県内の福祉系職能団体など