日本社会福祉学会 第66回秋季大会

大会について

学会長挨拶

日本社会福祉学会第66回秋季大会によせて

一般社団法人日本社会福祉学会 第6期会長
金子光一

一般社団法人日本社会福祉学会 第6期会長 金子光一

 第66回秋季大会は、『21世紀の社会福祉と「運動性」』というテーマで開催されます。大会プログラムには「『社会福祉運動』では運動を進める組織や団体とその活動に議論が限定され、ソーシャルワーカーや社会福祉法人も含めた議論が難しくなる」ことから、「『運動性』と抽象化し、根底にある価値や思想、『運動』の枠に収まらない自助や福祉サービスの開発・調整などの活動、排除から包摂にむけた活動なども含めて、幅広く議論できるようにしたい」とあります。目まぐるしく変化する近年の社会福祉の状況を、「運動性」とからめて説明することは十分可能であり、その点からの議論が深まることを大いに期待しています。
 このように「運動」を抽象化した捉え方は、社会福祉学の領域で古くから行われてきたように思います。本学会の第12・13・15・16期の会長であった一番ヶ瀬康子先生は、今から45年以上前の1971年4月に、社会福祉のさまざまな局面の分析を構造的関連性から把握するためには、生活者(いわゆる「下から」)の運動論的志向が重要であることを指摘され、その年の8月には、問題の担い手側に立って、自分の問題として、社会をかえていくエネルギーにしていくための運動論の研究を深めなければならないと論じています。ここで一番ヶ瀬先生が用いている「運動」は、必ずしも住民や運動組織が行政に福祉サービスの充実などを要求することを指しているのではなく、当事者に寄り添い社会を変革する視点の研究の重要性を指摘しているように思います。すなわち、運動の根底にある価値や思想に基づいた見解です。
 また、かつて私は、公益(国益)と私益(生活者の利益)が、常に一致するとは限らないことを「福祉の逆機能」という言葉で論じたことがあります。そこでは、公益と私益が一致することを前提に福祉政策や福祉実践を推進すると、それにそぐわない生活者(利用者)の利益を逆に侵害してしまうことがあると指摘しました。この考えは、本学会の創設に貢献され、第1期から役員として活躍された嶋田啓一郎先生の社会福祉の「構造=機能論的理解」を援用したものです。嶋田先生は、現状肯定的機能主義を批判し、社会福祉を積極的な機能(結果)の観点からだけではなく、逆機能的な観点から理論的に位置づけて分析する必要性を説いていました。「運動性」は、まさに現状肯定的機能主義ではなく、逆機能的な観点からのアプローチであり、そのための研究視点であるべきだと考えます。本大会では、ぜひそのような観点も含んだ議論を展開して頂ければ幸いに存じます。
 最後になりますが、本大会の開催にあたり多大なるご尽力を賜りました柴田謙治大会長ならびに窄山太実行委員長をはじめとする金城学院大学の先生方および学生の皆様に、心から感謝申し上げます。


大会長挨拶

日本社会福祉学会秋季大会開催にあたって

第66回秋季大会 大会長
金城学院大学
柴田 謙治

第66回秋季大会 大会長 金城学院大学 柴田 謙治

 このたび伝統ある日本社会福祉学会秋季大会を金城学院大学で開催するにあたり、歓迎のご挨拶を申し上げます。
 金城学院大学についてのご案内は窄山太実行委員長にお任せさせていただくこととして、私からは大会テーマについてご説明させていただきたいと思います。
 日本社会福祉学会秋季大会の大会テーマを考える際に、社会福祉の歴史や分野、ソーシャルワーク、地域福祉などを取り上げると、それについてはそれぞれの学会で掘り下げて議論すればよい、とご指摘いただくことが想定されます。そのため、さまざまな分野や方法、領域を横断するようなテーマの設定が望ましいのですが、これはいささか難問です。そこで本学会の設立時に遡って過去の大会テーマを参照したところ、【大会校企画シンポジウム】の「趣旨」に書かれているように、日本社会福祉学会(秋季)大会で「社会福祉運動」という大会テーマが取り上げられてこなかったことに気づきました。さまざまな社会福祉運動が盛んに展開されている愛知の特性、そしてその土壌となった大学教育の歴史を考慮して、せっかく愛知にある本学で日本社会福祉学会秋季大会を開催させていただくのだから、この取り上げられてこなかったテーマにチャレンジさせていただきたいと思い、上記の大会テーマを提案させていただきました。
 しかし社会福祉運動を専門としない私には、このテーマはいささか重く感じられました。そこで「運動性」と抽象化し、社会福祉運動に携わる方以外にも開かれたニュアンスにすることで、このテーマに踏み切れました。社会福祉基礎構造改革から社会福祉法人改革という流れのなかで、社会福祉法人にも「運動性」が求められています。また社会福祉法人やNPOで働くソーシャルワーカー、独立して開業するソーシャルワーカーも、地域でおこなわれている社会福祉運動とコラボし、専門性を生かして貢献することが可能かもしれません。
 実はこのテーマの源となったのは、1980年代に私の恩師がおこなった「学童保育の実態調査」から得られた知見でした。「挨拶」に参考文献を記すのも違和感がありますので、当日配布させていただく【大会校企画シンポジウム】の資料集で出典を明記し、理論的なパースペクティヴを紹介させていただきます。
 「運動」には肯定すべきものだけでなく、無癩県運動のように反省すべきものも含まれます(この運動は愛知とも関わりがあります)。それゆえシンポジストやコメンテーターを運動とは独自性のある研究者に依頼し、学会らしく客観的に議論します。


実行委員長挨拶

大会のご挨拶

第66回秋季大会 実行委員長
金城学院大学
窄山 太

第66回秋季大会 実行委員長 金城学院大学 窄山 太

 日本社会福祉学会第66回秋季大会を金城学院大学にて開催するに際しまして、一言ご挨拶申し上げます。
 大会テーマにつきましては、柴田謙治大会長よりご案内させていただきましたところですので、ここでは金城学院大学につきましてご案内させていただきます。
 金城学院大学は1949(昭和24)年に単科の大学として設立されて以降、教育の幅や奥行きを広げ、今日では東海地区有数の女子総合大学となりました。
 「金城」という校名は、学院の創設者であるアメリカ人宣教師アニー P・E・ランドルフ(Anny P. E. Randolph)によって、「黄金のごとく輝きて、城のごとく堅かれ」という意味で付けられました。ランドルフは、品位と尊厳を兼ね備えた優秀な女性を聖書の教えに基づいて育成し社会に貢献したいとの願いから、1889(明治22)年に学院のルーツとなる「女学専門冀望(きぼう)館」を設立しました。
 金城学院は、福音主義キリスト教に基づく女子教育を建学の精神とし、「主(しゅ)を畏(おそ)れることは知恵(ちえ)の初め」をスクールモットーとしております。「畏れ」とは、この世に命を与えられた我々は「人すなわち人間」としての分をわきまえ、決して不遜の心を持つこと無く、神を敬(うやま)い畏(かしこま)ること、そしてそこから全ての知恵、知識が生まれ、熟慮と慎重さをもって社会に貢献することを説くものです。
 このスクールモットーのもと、本学には5学部13学科・コース、2研究科6専攻が設置され、2017(平成29)年5月時点で5,296名の学生、56名の大学院生が在籍しています。そして、キリスト教精神の根幹をなしている「強く、優しく。」を教育スローガンとして、社会に出て多くの課題に直面した時に、自ら考え対処できる「強さ」と他人をいたわり思いやる「優しさ」の醸成を目指した全人的教育を行っています。
 今回の大会は「運動性」をテーマとさせていただきましたが、本学ではこの「強く、優しく。」を実践する女性という立場から福祉のあり様を問いかけてきたところです。
 皆様におかれましては、今回の大会が、社会福祉は今日の社会問題にどのように向き合う必要があるのかを今一度お考えいただく機会となり、これからの福祉のあり方についてより一層議論が深まりますことを願っております。
 金城学院大学は2016年4月にキャンパスリニューアルが一先ず完了したところであり、新キャンパスに皆さまをお迎えできますことは私どもとしましてもたいへん喜ばしいことと思っております。どうぞ、9月8日(土)、9日(日)には、金城学院大学にお越しください。スタッフ一同、心よりお待ち申し上げます。