日本社会福祉学会 第66回秋季大会

研究倫理指針

第1 総 則

(目的)
  1. 日本社会福祉学会は、社会福祉学の研究に携わる会員の研究における知的誠実さを涵養し、研究の倫理的なあり方を示し、かつ研究過程および結果の公表にまつわる紛争における解決のあり方を示すために、本指針を定める。
(遵守義務)
  1. 日本社会福祉学会会員は、研究過程および結果の公表にあたって、良識と知的誠実さと倫理が要請されることを自覚し、本指針に則って行動しなければならない。
  2. 日本社会福祉学会会員は、研究者として、常に最新の研究法に関する知見を探求し、使用しなければならない。
  3. 日本社会福祉学会会員は、研究者として、常に最新の先行業績を探索し、自己の研究水準の向上に努めなければならない。

第2 指針内容

A 引 用
  1. 研究は、先行業績の上に新たな知見を積み重ねることである。従って、先行業績の検討に際しては、自説と他説とを峻別することが重要であり,これを怠ると盗作もしくは剽窃として最も重大な倫理違反の一つとなることを強く自覚しなければならない。
  2. 他説の引用は厳格であるべきであり、既に古典となった場合を除き、原著者名・文献・出版社・出版年・引用箇所を明示しなければならない。
  3. 長文に渡る引用、図表の転載等の場合は、原則として、原出版社もしくは原著者からの承諾を得るべきである。
  4. 引用は出来る限り原典主義を貫くべきであり、原典が入手できない等の止むを得ない場合にのみ、いわゆる「孫引き」が許される。
B 事例研究
  1. 自験例(1例もしくは少数例)の事例および社会福祉実践の既存データを活用して研究する場合は、対象者(当事者)を特定できないように匿名化して使用しなければならない。その際、事例に加工が加えられている場合はその旨を表示しなければならない。
  2. 当事者から実名公表の承諾を文書で得ている場合にはその旨が明示されなければならない。
  3. 自験例の事例を使用する場合、あるいは口頭発表する場合は、前もって当事者から文書で承諾を得ることを原則とする。
  4. 他験例の事例を使用する場合は、「引用」における規定が適用される。
C 調 査
  1. 調査を実施する際に、必要がある場合には、調査対象者・地域・団体等の匿名性が守らなければならない。
  2. 調査用紙(質問紙)の文言は、対象者の名誉やプライバシー等の人権を侵害するものであってはならない。
  3. 調査結果を改竄してはならない。
  4. 調査研究の過程では、その手続き過程が詳細に示されなければならない。
  5. 調査用紙(質問紙)および結果データは開示要求に対応すべく、最低5年は保存されなければならない。
  6. 他者が行った調査で使用された調査用紙(質問紙)の全部または一部を使用する場合には、その旨を明示しなければならない。
D 書 評
  1. 書評は、発刊された研究業績の評価を含むものであるから、評者は全文を読了した上で公正・客観的に批評しなければならない。
  2. 書評は、著者の人格を傷つけるものであってはならない。
  3. 書評に対して、著者からの要求があった場合には、その反論が許されなければならない。
E 査 読
  1. 投稿された研究業績の査読を行う過程において、著者と査読者の双方の匿名性が保持されなければならない。
  2. 査読は、投稿された研究業績の評価を含むものであるから、査読者は全文を読了した上で、公正・客観的に評価を行い、かつ指摘する内容が明確でなければならない。
  3. 査読は、著者の人格を傷つけるものであってはならない。
  4. 査読結果に対して、著者から要求がある場合には、その反論が許されなければならない。
F 二重投稿・多重投稿
  1. 原著の投稿、あるいは公表については、二重(多重)に行ってはならない。
  2. 投稿あるいは公表した原著を本学会において発表する場合は、内容の一部変更・追加などの箇所を明示しなければならない。
  3. 一連の連続投稿をする場合には、前著と同一でない旨を明示しなければならない。
G 学会発表
  1. 学会で発表する場合は、その内容が時代の先端にあるか、独自性があることの自覚のもとで行わなければならない。
  2. とりあえずエントリーしておき、発表の準備が間に合わない時にキャンセルするようなことはしてはならない。
  3. 相当数の発表時間を多数の研究参加者が第一発表者の名前を次々と代えて使用し、その会場を仲間で独占するような発表は、慎むべきである。
  4. シンポジウムや個人発表等において、自分の割り当て時間を延長することは、厳に慎まなければならない。
  5. 固有な事例・調査等に基づく発表については、【事例研究】【調査】の項に従う。
H 研究費
  1. 外部資金(研究費)を導入して研究する場合には、その会計を明瞭にし、研究目的に合致した予算、予算に合致した使用、流用のある場合の理由の明示、支出に関する領収書などの証拠書類の整理保存に努め、その使用が不正なものであってはならない。
  2. 研究費の供与機関および導入機関の定める執行規程を遵守しなければならない。
I 差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語
  1. 研究業績を著書・論文・口頭等で発表する場合に、研究目的を外れて社会的に不適切と考えられる用語を使用してはならない。ただし、引用文中の語についてはこの限りではないが、その旨を明示しなければならない。
  2. 研究者は、差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語であるかに関して理解を深めなければならない。
J 共同研究
  1. 共同研究の組織化に当たっては、その成員は研究目的に合致した専門領域の者でなければならない。
  2. 共同研究の組織の運営および会計は民主的になされなければならず、構成員の一部に過重な負担をかけたり、不明朗であってはならない。
  3. 共同研究の成果の発表にあたっては、構成員は研究過程と成果への貢献に応じた取り扱いをうけるべきである。
K アカデミック・ハラスメント
  1. 大学内・研究所内あるいは上記の共同研究組織において、上位の権限・権威・権力を持つ者がそれを行使して、下位の者に対して、研究・教育・資格付与・昇進・配分等において不当な差別を行ったり、不利益を与えてはならない。
  2. 研究者は、対象を特定し、もしくは特定せずに、不当な中傷を行ってはならない。
付 則
  1. この指針は2004年10月10日より施行する。