自由研究発表高齢者保健福祉5  大口 達也

介護支援専門員と共に行う包括的・継続的ケアマネジメント(3)
 -地域包括支援センターの主任介護支援専門員と居宅介護支援事業所
   の管理者に期待される機能と役割-

○ 立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科  大口 達也 (会員番号7296)
武蔵野赤十字在宅介護支援センター  岸 千代 (会員番号77619)
キーワード: 《包括的・継続的ケアマネジメント》 《ケアマネジメント支援》 《主任介護支援専門員》

1.研 究 目 的

 2006年4月に地域包括支援センター(以下、地域包括)が創設され、居宅介護支援事業所(以下、居宅)の介護支援専門員が包括的・継続的ケアマネジメントを実践できるように、地域包括の主任介護支援専門員(以下、主任)が中心となり、支援や体制整備を実施することになった。しかし、東京都社会福祉協議会センター部会地域包括支援センターあり方検討委員会(以下、あり方検討委員会)が、2007年8月に実施した調査では、地域包括の主任と居宅介護支援事業所(以下、居宅)の管理者の機能と役割が曖昧あるために、介護支援専門員との関わりに支障が生じているという結果がでている。本研究の目的は、地域包括の主任と居宅の管理者に期待される機能と役割を明らかにし、両者の機能と役割の比較を通して、介護支援専門員が包括的・継続的ケアマネジメントを実践できるようになるためのケアマネジメント支援のあり方について検討することにある。 

2.研究の視点および方法

 本研究では、機能と役割を分析する視点について、あり方検討委員会で検討し、スーパービジョンの観点から分析することとした。使用尺度はKadusin,Aによって作成されたスーパービジョン機能の認知度尺度(1984:日本語版:FUKUYAMA,K.1999)より18項目を選び、5件法のリッカートスケールで測定した。分析方法は、地域包括の機能と役割については、探索的因子分析と確認的因子分析の多母集団パス解析(分析A)、居宅の機能と役割については、探索的因子分析を行った(分析B)。分析は、あり方検討委員会が郵送法で実施した2つの調査において、18項目に完全回答した者を対象に分析した。(表1)

調査概要  

3.倫理的配慮

 本研究では、倫理的配慮として、調査票の送付時において、統計処理をした上で公開し、個別票を公開することはないことを明記した。

4.研 究 結 果

 地域包括の主任に期待する機能と役割(分析A)について、スーパービジョン機能認知度尺度の18項目で探索的因子分析(統計ソフト:SPSS、推定方法:主因子法)を行った。その結果、固有値1以上の因子が4つ抽出された。因子解はプロマックス回転後のパターン行列に着目し、因子の解釈は因子負荷量が0.45以上で、かつ複数の項目に対して0.45以上の因子負荷量を有さなかった項目に着目して行った。その結果、因子1は「支持機能」、因子2は「同質的管理機能」、因子3は「教育機能」、因子4は「異質的管理機能」と解釈できた。(表1)また、4因子16項目からなる2次因子モデルを借定し、モデルの構成概念妥当性を確認的因子分析(統計ソフト:AMOS、推定方法:最尤法)の多母集団パス解析を行った結果、統計学的な許容水準を満たす結果が得られ、(適合度指標:CFI=0.920,TLI=0.910,IFI=0.920,GFI=0.888,RMSEA=0.045)、2次因子モデルは対象となった4者(地域包括の主任、居宅の管理者、管理者以外の介護支援専門員、居宅の主任)で変わらないことが分かった。同様に、居宅の管理者に期待する機能と役割(分析B)について、探索的因子分析を行った結果、固有値1以上の因子が2つ抽出され、因子1は「指導機能」、因子2は「支持機能」と解釈できた。(表2)  
分析の結果、地域包括の主任と居宅の管理者が行うケアマネジメント支援は、「管理機能」に違いがあることがわかった。(表3)機能として果たすべき役割は異なるが、地域包括の主任の「異質的管理機能」と、居宅の管理者の「指導機能」は、いずれも組織として担う必要がある「管理機能」になることから、介護支援専門員が包括的・継続的ケアマネジメントを実践できるようになるためには、どちらか一方が個人として支援するだけでは不十分で、両者の「管理機能」の違いを踏まえ、組織として地域包括と居宅が協働しながら、ケアマネジメント支援を行うことが重要だと考えられる。

地域包括支援センターの主任介護支援専門員に期待する機能と役割


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