レジデンシャル・ソーシャルワークとケアマネジメントの業務実態について
-特別養護老人ホームの生活相談員と居宅介護支援事業所の
介護支援専門員を比較して-
○ 日本ケアワーク研究会 石田 博嗣 (会員番号7330)
県立広島大学大学院 住居 広士 (会員番号2099)
県立広島大学大学院 山岡 喜美子 (会員番号2962)
県立広島大学大学院 三宅 文枝 (会員番号7694)
福山女子短期大学 國定 美香 (会員番号4402)
広島文教女子大学 小川 真史 (会員番号6557)
キーワード: 《タイムスタディ》 《レジデンシャル・ソーシャルワーク》 《ケアマネジメント》
転換期にある福祉サービスマネジメントに注目して、レジデンシャル・ソーシャルワークの標準化と専門性を検証することを目的に、タイムスタディによる量的評価から特別養護老人ホームにおける生活相談員(以下,相談員と略す)を、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(以下,ケアマネと略す)との業務実態を比較検証した。
2.研究の視点および方法 本研究は、日本社会福祉学会第57回大会において報告したA県C地区の全数調査の特別養護老人ホーム15施設の相談員16人に対するタイムスタディ調査の結果を基に、新たに居宅介護支援事業所4事業所の介護支援専門員6名の勤務時間を比較対照として加えた。さらに報告時には2010年4月から5月の同地区の全数調査(居宅介護支援事業所16事業所の介護支援専門員n=38,施設回収率93.8%)、合わせて、本大会で報告する予定である。
ソーシャルワーク業務分類は,レジデンシャル・ソーシャルワークコードの開発と研究したRSWコード2008年版(厚生の指標,Vol.57, No.1, pp.6-14, 2010年)を使用した。
統計解析には,SPSS 17.0 J for Windowsのソフトを用い,大分類における各業務の「1日あたりの平均累積時間」「1日あたりの平均発生回数」「1回あたりの平均発生時間」の記述統計を行った。また,Shapiro-Wilk検定での非正規性から,相談員とケアマネにおける時間と回数をMann-Whitney順位検定で分析した。
事前に施設長と調査協力者に対し、調査の趣旨を解説して、および個人や施設が特定されないよう個人情報の保護に努めることを説明した。なお、回収した調査メモは、数字のみの処理で分析を行い、匿名性を守り、研究倫理に配慮した。
4.研 究 結 果 1)1日当たりの平均累積時間の内訳と比率
相談員では,1位「ケアワーク」169.61±103.88分で平均総累積時間の百分率30.5%で最も長く,続いて2位「間接業務」109.00±77.77分(19.6%),3位「チームマネジメント」72.69±68.97分(13.1%)の順で,上位3項目では平均総累積時間の63.2%を占めた。
ケアマネでは、1位「間接業務」166.64±78.19分は平均総累積時間の百分率は30.9%で最も長く、続いて2位「チームマネジメント」75.17±77.69分(14.0%),3位「地域との連携」70.25±57.21分(13.0%)の順で、上位3項目では平均累積時間の57.9%を占めた。
2)1日当たりの平均発生回数の内訳と比率
相談員は,1位「ケアワーク」14.50±18.63回,平均総発生回数の43.1%で最も多く,続いて2位「間接業務」6.44±6.27回(19.1%),3位「チームマネジメント」3.16±2.53回(9.4%)の順で,上位3項目では平均総発生回数の71.6%を占めた。
ケアマネは,1位「間接業務」12.50±8.95回,平均総発生回数の39.1%で最も多く,続いて2位「地域との連携」5.00±3.25回(15.6%),3位「チームマネジメント」3.58±4.21回(11.2%)の順で,上位3項目では平均総発生回数の65.9%を占めた。
3)1回当たりの平均発生時間の内訳と比率
相談員は,1位「アセスメント」59.25±37.45分,平均総発生時間の13.6%が最も長く,続いて2位「職員研修」49.38±29.17分(11.4%),3位「契約」31.67±14.04分(7.3%)の順で,上位3項目では平均総発生時間の32.3%を占めた.
ケアマネは,1位「職員研修」46.67±15.28分,平均総発生時間の14.7%が最も長く,続いて2位「その他」45.00±16.65分(14.1%),3位「契約」30.00±0.00分(9.4%)の順で,上位3項目では平均総発生時間の38.2%を占めた.
4)大分類おける相談員とケアマネのMann-Whitney順位検定
「1日あたりの平均累積時間」では,相談員に平均累積時間が多い項目は、「ケアワーク」(p=0.000)においてのみ有意差が認められた。
「1日あたりの平均発生回数」では,相談員に平均発生回数が多い項目は、「ケアワーク」(p=0.000)と「その他」(p=0.000)において有意差が認められた。
「1回あたりの平均発生時間」では,相談員に平均発生時間が多い項目は、「ケアワーク」(p=0.000),「ケアプラン」(p=0.003),「地域との連携(p=0.004)」,「アセスメント」(p=0.039)において有意差が認められた。
1日当たりの平均累積時間と平均発生回数の順位から,相談員のソーシャルワークはケアワークを兼務にして、ケアマネは連携間接業務を兼務している現状があるものと考える。
相談員とケアマネの1回当たりの平均発生時間の上位順位から、「職員研修」,「契約」は両職種に関連するソーシャルワークの標準化と専門性の関与を示唆するものと考える。
1)(社)日本社会福祉士会 福祉サービスマネジメント研究プロジェクト『施設福祉マネジメント研究報告書』2005
2)住居広士『介護保険における介護サービスの標準化と専門性』大学教育出版(2007)
3)石田博嗣・住居広士・國定美香「タイムスタディで捉えるレジデンシャル・ソーシャルワーク・コードの開発 と研究」厚生の指標, Vol.57, No.1, pp.6-14, 2010年.