自由研究発表高齢者保健福祉2  岡本 秀明

都市部高齢者のボランティア活動の関連要因
 

○ 和洋女子大学  岡本 秀明 (会員番号3826)
キーワード: 《高齢者》 《ボランティア》 《社会貢献》

1.研 究 目 的

高齢者のボランティア活動は、超高齢社会となったわが国において注目される1つのキーワードである。高齢者のボランティア活動は、本人にとって、身体的・精神的健康に肯定的な影響をもたらし、有用感が得られ、社会関係が豊かになる可能性があるなどの効果があるとされている。社会においては、高齢者によるボランティア活動によりさまざまな恩恵が得られることが期待できる。高齢者のボランティア活動による効果に関する研究は多くみられるが、活動の関連要因の研究は少ない。岡本(2006)は、大阪市の高齢者を対象にボランティア活動の関連要因を検討した結果、中年期にボランティア経験がある者、地域に貢献する活動をしたい者、ボランティア活動情報の認知の程度が高い者、技術・知識・資格がある者、親しい友人や仲間の数が多い者、主観的健康感が高い者、女性がボランティア活動をしている傾向がみられたと報告している。それによると、他の地域の高齢者における追試の必要性が示されているが、その後あまりみられない。本研究では、都市部における高齢者を対象とし、ボランティア活動の関連要因を検討することを目的とした。 

2.研究の視点および方法

調査は、千葉県A市(都市部)の住民基本台帳から無作為抽出した65~84歳の高齢者1400人を対象に、自記式調査票を用いて、2009年に郵送法により行った。有効回収票は755票(53.9%)であった。このうち、代理回答のもの、年齢、性別、ボランティア活動項目に無回答のものを除外し、711票を分析対象とした。分析対象者の基本的な属性は、平均年齢が71.7歳、性別は男性が47.8%、女性が52.2%であった。
  調査項目に関して、ボランティア活動は、活動の頻度を「まったくしていない」から「週3回以上」までの6つの選択肢で尋ねた。検討する要因の変数として、年齢、性別のほか、以下の5領域計17変数を設定した。具体的には、「家族・経済ほか領域」が、配偶者の有無、居住年数、学歴、暮らし向き、「健康領域」が、IADL、主観的健康感、「暮らし方の志向性領域」が、生活に充実感をもつ、新たな友人を得る、社会の見方を広げる、健康や体力に自信をつける、新たな知識や技術を身につける、地域に貢献する活動をする、若い世代と交流する、「技術や経験領域」が、技術・知識・資格、中年期のボランティア経験、「社会・環境的状況領域」が、親しい友人や仲間の数、ボランティア活動情報の認知であった。
  分析方法は、従属変数をボランティア活動の有無、独立変数を各領域の要因の変数に年齢と性別を加えたものとした、二項ロジスティック回帰分析を用いた。分析は、第1に、年齢と性別を加えて領域ごとに行い、第2に、第1の領域ごとの分析で統計学的に有意であった変数に年齢と性別を加えたものを最終モデルとして行う方法をとった。  

3.倫理的配慮

調査の際に、回答されたデータは統計的な処理を行い個人の特定をしないことを明記し、調査協力が得られる場合には調査票を無記名で返送するよう、協力文書にて依頼した。 

4.研 究 結 果

ボランティア活動をしている者の割合は、22.8%、していない者は77.2%であった。
  領域ごとに行った分析結果は、「家族・経済ほか領域」では暮らし向き、「健康領域」ではIADL、主観的健康感、「暮らし方の志向性領域」では地域の貢献する活動をする、若い世代と交流する、「技術や経験領域」では技術・知識・資格、中年期のボランティア経験、年齢、「社会・環境的状況領域」では親しい友人や仲間の数、ボランティア活動情報の認知、年齢に有意な関連がみられた。最終モデルの分析結果は、表1に示したように、IADL、地域に貢献する活動をする、中年期のボランティア経験、親しい友人や仲間の数、ボランティア活動情報の認知が有意な関連を示していた。つまり、ボランティア活動をしている者の特性は、IADL得点が高い、地域の貢献する活動をする志向性がある、中年期のボランティア経験がある、親しい友人や仲間の数が多い、ボランティア活動情報を認知している者であった。 [本研究は科学研究費補助金(19730367)の助成を受けて行った]  

(文 献)

岡本秀明(2006)「高齢者のボランティア活動に関連する要因」『厚生の指標』53(15), 8-13. 

      

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