自由研究発表障害(児)者福祉9  重野(佐々木) 愛佳

障害者の自立生活を支える介助サービスとは
 -「役割への支援」に着目して-

○ 自立生活センター・日野  重野(佐々木) 愛佳 (会員番号7483)
キーワード: 《障害者》 《自立生活支援》 《障害者権利条約》

1.研 究 目 的

 障害者権利条約が発効されてから2年、日本は署名したものの批准には至っていない。 現在、批准のために必要な国内法の整備や障害者制度の改革が議論されているところである。
 障害者権利条約は第19条において「自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのイン クルージョン」1 を規定している。これは「障害のあるすべての人に対し、他の者と平等の 選択の自由をもって地域社会で生活する平等の権利を認める」ものであり、「締約国は障害 のある人によるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の完全なイン クルージョン及び参加を容易にするための効果的かつ適切な措置をとるもの」と定めている。 さらに居住地の選択の自由、特定の生活様式が強要されないことが確認され、締約国に対し 地域社会における生活及びインクルージョンを支援するため、また地域社会からの孤立及び 隔離を防止するために必要な在宅サービスやパーソナル・アシスタンスなどの介助サービス を提供し、一般の地域社会サービスや設備が障害者にも利用できるようにすることを求めて いる。2
 障害者が地域で自立、自律した生活を営むために必要な支援は多岐にわたる。中でも介助 サービスは障害者の生活を実質的かつ最も近くで支えるものであり、自立生活支援の要と 言える。必要な介助サービスが確保されれば、多くの障害者が地域での自立生活を実現する ことが可能となる反面、確保されなければその実現は困難となる。
 権利条約が意図する「自立した生活」、「地域へのインクルージョン」を現実のものと するためには、介助サービスの「必要量の確保」だけではなく、その「質の確保」が欠かせ ない。単に「地域で暮らす」のではなく、地域社会の一員として、市民として「地域で生きる」 ことで本当の意味での「自立した生活」、「地域へのインクルージョン」は実現される。 そのための支援を介助サービスのなかに位置づけることが求められる。
 障害者はこれまで、障害のない人が当たり前のように期待される家族役割や社会的役割を 持つ存在として意識されることが少なかった。しかし実際は「親役割」、「老親に対する子 としての役割」など様々な役割を持つ存在である。本研究は介助サービスについて「役割へ の支援」という視点から考察することを目的とする。これにより、権利条約が規定する「自立 した生活〔生活の自律〕及び地域へのインクルージョン」の実現を促す介助サービスのあり方 について検討する。

2.研究の視点および方法

 従来の障害者施策、特に介助サービスが障害者の持つ役割について、どのように捉え 施策として位置づけてきたのかを整理するとともに、障害当事者が記した自立生活に関する 文献、先行研究から実際に「役割への支援」が必要な場面を抽出する。そして障害者に対する 「役割への支援」について、求められている支援と現実の支援の隔たりを明らかにする。 社会的役割については教育、雇用分野等、すでに検討が進んでいる部分であるため、今回は 家庭における「役割」への支援に絞り検討する。

3.倫理的配慮

 日本社会福祉学会研究倫理方針を遵守し研究、報告を行う。

4.研 究 結 果

 まず「役割」についての議論を整理し、「役割への支援」について定義する。そして 障害者が置かれている現状を明らかにする。また障害者権利条約の役割に関する記述を整理 した上で、介助サービスのあり方について「役割への支援」という視点から考察する。

1) 「役割への支援」の定義
・ 一般的な役割についての議論の整理
・ 「役割への支援」の定義
2) 障害者が置かれている役割についての現状分析
・ 障害者施策における「障害者」の捉え方
・ 支援費制度、障害者自立支援法による介助サービスにおける「役割への支援」に対する視点
・ 障害者の実態
・ 具体的な「役割への支援」が必要な場面の抽出

3) 障害者権利条約における役割に関する記述の整理

(注) 本研究では、平成22年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業): 障害者の自立支援と「合理的配慮」に関する研究-諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立 支援法の可能性-における研究協力者として研究費の補助を受けている。

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1 権利条約の訳は川島聡、長瀬修仮訳(2008年5月30日付)を使用した。
2 崔栄繁「第8章 自立生活」187頁 長瀬修・東俊裕・川島聡編(2008)『障害者の 権利条約と日本概要と展望』生活書院

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