医療観察法におけるソーシャルワークの研究
-ソーシャルワーカー等に対する調査の結果からみられるもの-
○ 同志社大学大学院 東 公美 (会員番号4545)
キーワード: 《医療観察法》 《精神障害者》 《精神保健福祉士》
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者医療及び観察に関する法律(以下、医療観察法とする)に携わる精神保健福祉士等のソーシャルワーカーに対して調査を行うことにより、医療観察法におけるソーシャルワーク支援システムの現状と課題を明らかにし、その社会復帰に関与する精神保健福祉士等の役割を検討することによって、医療観察法における今後のより良いソーシャルワーク実践のためのありかたの一端を提示する。
2.研究の視点および方法 本研究者は、精神科病院等のソーシャルワーカー等を経て、2006年から大阪地方裁判所の精神保健参与員(精神保健福祉士)として勤務し、現在に至っている。地方裁判所で療観察法の業務に携わる中で、対象者(医療観察法の対象となる精神障害者)に対して、より早く、より適切なソーシャルワーク等の医療保健サービスを提供していれば、殺人等の重大犯罪に至っていない可能性があることが判明してきた。
そこで本研究においては、医療観察法の業務に携わる精神保健福祉士等のソーシャルワーカーに対して調査を行う。
調査対象は、全国の精神科病院・診療所(合計約2,700ヶ所)に所属する精神保健福祉士等のソーシャルワーカー等である。調査方法は、①アンケート用紙に記述して回収する量的調査と、②調査に同意して下さった方に本研究者(精神保健福祉士)が面接による聞き取りでの質的調査、の2種類である。調査内容をもとにコンピューターソフト等を使用して分析を行った。
量的調査・質的調査共に、調査対象母集団の中から本研究に同意を得た方を対象に調査を行った。加えて、精神保健福祉士等の調査対象者と医療観察法の対象者(精神障害者)の個人が特定できないよう、個人情報の管理に留意した。そして、アンケート回答用紙やインタビューのテープレコーダーの保管を厳重に行った。
4.研 究 結 果 ①精神障害者に対するソーシャルワーク等の精神保健福祉サービスの内容は、サービス対象者を医療観察法対象者と、それ以外の者に分けて比較した場合、ほとんど差がみられない。
しかし、②医療観察法施行後、約5年が経過しているため、先駆的なソーシャルワーク実践を行っている機関等や地域が確認された。
③②における先駆的実践と、アンケートによる量的調査、面接による質的調査を総合的に分析し、本発表では、個人情報保護等に配慮した範囲内でこの結果を発表したい。
我が国の精神保健・医療・福祉の現状においては、精神障害者への十分なリハビリテーションの保障や権利擁護の取組みが行われているとは言い難く、今後、本法が精神保健医療福祉施策全体に及ぼす影響は小さいものではない。そのため精神保健福祉士である社会復帰調整官や精神保健参与員が、疾病性ではなく事例性に基づいて理解と支援を行い、精神障害者の最大限の権利擁護者として積極的に発言していかなければならない。そして、精神障害者の社会復帰を国民全体のメンタルヘルスの問題として捉え、地域に働きかけていく必要があると思われた。