障害のある人たちへの身体拘束防止に関する現状把握と対策に関する研究
-京都府内における障害児・者支援事業所へのアンケート調査を中心に-
○ 愛知淑徳大学 谷口 明広 (会員番号1065)
華頂短期大学 武田 康晴 (会員番号2464)
キーワード: 《身体拘束防止》 《障害者虐待》 《障害児者支援事業所》
本研究は、平成21年度に京都府障害者支援課が設置した「京都府自立支援協議会 身体拘束防止推進部会」に基づき、京都府から研究委託を受け、「事業所における身体拘束 (行動制限)の実態と防止推進の取り組みに関する調査研究」(研究代表者谷口明広)に 基づいたアンケート調査を中心にしている。本調査は、多様化している障害者福祉事業所 において、身体拘束というものが、どの程度行われており、その防止に対しての取り組み を実施しておられるかを明らかにしようとしたものである。この調査を用いて、身体拘束 を実施している事業所を問題視し、摘発するものでは決してない。「身体拘束」が良いこと ではないと誰もが知ってはいるが、やむを得ず、拘束を実施している実態を知り、その防止 に対する取り組みの実態を把握するために行われたものである。このアンケート調査項目の 作成に関しては、厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」監修の『身体拘束ゼロの手引き』 に記載されている内容を基本にしている。
2.研究の視点および方法 (1) アンケートによる量的調査【別資料1】
① 調査対象 府内に存在する障害児・者支援事業所(身体・知的)約270ヵ所
② 調査方法 郵送によるアンケート配布と回収
③ 調査内容 ・施設内の身体拘束に関する実態を明らかにする
・施設職員の身体拘束に対する考え方を明らかにする
・障害種別や年齢と身体拘束との相関関係を明らかにする
④ 集計方法 “SPSS”を用いて、単純集計とクロス集計を実施し、分析する
(2) インタビューによる質的調査
① 調査対象 基礎調査で抽出した数件の障害者支援施設(身体・知的)
② 調査方法 訪問によるインタビュー調査(09年7月より随時)
施設職員によるグループ・インタビューの開催(2回くらい)
③ 調査内容 ・身体拘束に関する困難事例の収集
・身体拘束の防止に関する具体的取り組み事例の紹介
・身体拘束に関する現場指導の歴史的変遷を学ぶ
・身体拘束や人権問題に関する訴訟問題と対処方法を学ぶ
④ 集計方法 ・困難事例の蓄積と分析による身体拘束の基準づくり
・“アイデアツリー”を用いてインタビュー内容の分析を試みる
・身体拘束の訴訟問題を収拾し、類型分類と訴訟判例を明白にする
アンケートに記入された内容は、すべてコンピューターにより統計処理し、調査目的 以外に使用することは一切ないことを確認した。また、「身体拘束」を実施している事業所 名は公表しないし、「身体拘束」を受けていた者の名前も公表しないことを確認してから 調査に入っている。
4.研 究 結 果Ⅰ.事業所における利用者の身体拘束(行動制限)の状況【別資料2】
(1)「車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも・ベルト等で縛っている」ことについて
(2)「ベッドを柵(サイドレール)で囲んでいる」ことについて
(3)「手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつけている」ことについて
(4)「Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつけている」ことについて
(5)「立ち上がりを妨げるようないすを使用している」ことについて
(6)「介護服(つなぎ服)を着せている」ことについて
(7)「向精神薬を過剰に服用させている」ことについて
(8)「自分の意思で開けることのできない居室等に隔離している」ことについて
Ⅱ.行動制限を減らすための取組について 【別資料3】
(1) 行動制限を減らすために、内部研修会、勉強会等を実施していますか。
(2) 行動制限を減らすために、外部専門家等の関与はありますか。
(3) 行動制限を減らすために、関連機関との連絡・協議をしていますか。
(4) 行動制限を減らすために、どのような支援の工夫をしていますか。
(5) 行動制限を減らすために、研修を実施していくことは必要だと思いますか。
(6) 行動制限を減らすために、どんなことが必要だと思いますか。