自由研究発表障害(児)者福祉3  高原 優美子

障害者の就労に関する意識の分析
 -障害者就労支援事業における利用者アンケート調査-

○ 国立精神・神経医療研究センター、東洋大学大学院  高原 優美子 (会員番号6862)
国立精神・神経医療研究センター  吉田 光爾 (会員番号7777)
日本社会事業大学  大島 巌 (会員番号228)
日本社会事業大学  小佐々 典靖 (会員番号5937)
日本社会事業大学  道明 章乃 (会員番号7349)
日本社会事業大学  贄川 信幸 (会員番号7947)
東京学芸大学  福井 里江 (会員番号6460)
お茶の水女子大学  平岡 公一 (会員番号560)
東洋大学  小澤 温 (会員番号260)
キーワード: 《障害者》 《就労》 《障害者就労移行支援》

1.研 究 目 的

 本研究では、一般就労への支援を実施している障害者就労移行支援事業を利用する障害者を対象に、アンケート調査を実施し、就労に関する意識を基に生活に関連する意識を分析することにより、障害者の就労と生活に関する意識の関連性および障害種別毎の就労に対する意識の差異を明らかにする。

2.研究の視点および方法

 参加同意を得た障害者に対し、障害者自身の就労に関するサービスや地域生活に対する考えを自記式アンケートで得た回答から、障害者の就労意識に焦点をあて、どのような意識が関係するか分析し、就労と生活に関係する意識を明らかにする。  
 調査期間は、2009年2月から2009年3月である。調査対象者は、障害者就労移行支援事業を行う15か所の協力事業所を対象とした利用定員合計252名のうち同意書を記載した143名である。この調査対象者は、アンケート調査時点で一般就労をしていない者である。  
 調査項目は、10のカテゴリーに分けることができ、各カテゴリーは以下のとおりである。
  1.日常生活上の困難
  2.ソーシャルサポート/ネットワーク
  3.QOL評価(友人関係、住居、社会参加、経済問題、家族関係、健康などの各領域)
  4.統制感、自己決定感
  5.全般的生活満足度
  6.自尊感情
  7.仕事についての自己効力感
  8.問題に対する対処可能性
  9.生きがい・希望
 10.サービス満足度(現在利用している就労移行支援事業におけるサービス満足度)
 そして、全体の10カテゴリーのうち、「1.日常生活上の困難」と「7.仕事についての自己効力感」は3件法、それ以外のカテゴリーは5件法の順序尺度を使用している。3件法の点数については、1点は1点、2点は3点、3点は5点に変更して計算を行った。  
 分析方法は、就労意識に関する仕事についての自己効力感の合計得点を基準に、各カテゴリー(QOL評価は、QOLの領域毎に分類した)内の点数の平均値を、spss.11.5.1Jの順序相関Kendallのタウbを使用して、順位相関係数の検定を実施した。  

3.倫理的配慮

 本研究に調査協力を得た事業所や個人に対して、名称、所在地等が特定されないように配慮した。具体的には、協力事業所に対して、事業所名をコード化し、回答した利用者には事業所でコード化したものを集計することで、事業所と利用者を特定できない配慮を行った。協力を得た事業所から利用者に対して、説明書に研究目的と研究内容を明示し、匿名性の保証、不利益を被らないことの保障、拒否権の保障、秘密保持の保障を提示して、口頭説明および同意書により同意を得る手順を経ている。

4.研 究 結 果

 1)結果
 ◎就労意識と生活意識が相互に関係しあうカテゴリー
 就労意識全体の合計値と生活意識の平均値のカテゴリーに相関がみられた。これは、就労の自己効力感と9のカテゴリー別すべてに1 % 水準で有意となり (両側)相関がある。
 さらに、就労の自己効力感とQOL評価の7項目別にも5%水準と1 % 水準で有意となり (両側)相関がある。
  ◎知的障害を主たる障害とする対象者と精神障害を主たる障害とする対象者の就労意識
 知的障害を主たる障害とする対象者は就労意識に対してすべての9カテゴリー別に、1 % 水準で有意となり (両側)相関がみられた。精神障害を主たる障害とする対象者は就労意識に対して2.ソーシャルサポート/ネットワーク以外の8つのカテゴリーに5%水準と1 % 水準で有意となり (両側)相関があることがわかった。
 2)考察
 就労における意識は、他の生活に関する意識にも影響があることが明らかとなり、障害者の就労支援において就労と生活の両方を視野に入れた支援が必要である。さらに、精神障害を主たる障害とする対象者よりも知的障害を主たる障害とする障害者が、就労意識と生活意識に関するすべてのカテゴリーの相関がみられることが明らかとなった。さらに障害による認識の違いや相関する意識の分析等、本研究における調査データは、口頭報告時に配布し、具体的な説明を加える。
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金基盤研究(A)「プログラム評価理論・方法論を用いた効果的な福祉実践モデル構築へのアプローチ法開発」(研究代表者:大島巌)の分担研究班 (代表:佐藤久夫)および日本社会事業大学学内共同研究の研究成果を使用している。

↑ このページのトップへ

トップページへ戻る

お問い合わせ先

第58回秋季大会事務局(日本福祉大学)
〒470-3295 愛知県知多郡美浜町奥田
日本福祉大学 美浜キャンパス

受付窓口

〒170-0004
東京都豊島区北大塚 3-21-10 アーバン大塚3階

株式会社ガリレオ 学会業務情報化センター内
日本社会福祉学会 第58回秋季大会 係

Fax:03-5907-6364
E-mail: taikai.jsssw@ml.gakkai.ne.jp