自由研究発表児童福祉5  小暮健一

スウェーデンの学童保育の動向を見る
 -『子どもの自由時間は重要である』-

○ 所沢市学童クラブの会明星大学大学院博士前期課程  小暮健一 (会員番号5740)
キーワード: 《政府の立場》 《質》 《資格》

1.研 究 目 的

日本の学童保育は、2009年5月現在、1万8475か所(前年比980か所増、入所児童数80万1390人、前年比1万4000人増全国学童保育連絡協議会調査)となった。入所児童数はこの5年間で約25万人も増えた。国は、学童保育を「10年間で利用児童を3倍に増やす」こと、「質の高い放課後児童健全育成事業を推進する」(2008年2月「新待機児童ゼロ作戦」)の目標を立てた。だが2010年4月、政府は「子ども・子育て新システムの基本的方向(案)」の検討をはじめて、「放課後子ども教室との一体化」や市町村の自由度、地域の実情に応じた設計できる仕組みを提案してきた。日本の学童保育の現段階は、地方自治体へ任せる段階ではなく、まずは国がいち早く設置・運営基準をつくることや指導員の問題を改善することである。  
  スウェーデンの学童保育の動向を見ると日本の課題も見えてくる。その一つの指摘が適正規模である。イギリスやスウェーデンと比べて日本の学童保育は「大規模集団」(39人以下の学童保育は、48.9%と多い)であり、政府の放課後児童クラブガイドライン(「おおむね40人程度までとすることが望ましい」)自体が、「ヨーロッパと比べれば低いもの」。質を重視するのは、「人間形成に重要な時間である」(池本美香「少人数規模が多いヨーロッパの学童保育」『日本の学童ほいく』2009年9月号)からとしている。ここでは、スウェーデンの学童保育の動向を学校庁の報告などから見ることで考察する。  

2.研究の視点および方法

スウェーデンの学童保育(fritidshem)は、年々規模が増加して質が問われている。2010年学校庁は『Ditt barns fritid är viktig INFORMATION OM FRITIDSHEMMETS VERKSAMHET』
(子どもの自由時間は重要である-学童保育活動の案内)12項を出した。その背景となった動向を見て、考察を加える。 

3.倫理的配慮

指針に則り、研究結果は大切な箇所をまとめる形で書き出した。 

4.研 究 結 果
1) スウェーデンの学校庁は、2010年になって『子どもの自由時間は重要である』を出した。こんな書き出しから始まる。「学童保育は子どものためである-あなたは最も身近な子どもの置かれている変化がわかる。従って、学童保育指導員があなたに話すことは重要であり、校長は例えば活動や子ども集団の規模、構成、どのように子どもを受け入れるか、どのように考えるかである。また、学童保育のことを次のようにまとめている。「有意義な自由時間と子どもの発達を支える-学童保育は、学校法によれば子どもへの有意義な自由時間と発達を支えることを提供すべきである。そうするためには、安全で、楽しく、刺激的な環境でなければならない。遊びや創造的で体を使った活動は大きなゆとりがなければならない。活動全体は、子どもの年齢、成熟、ニーズ、興味、経験に基づいて形づくるべきである。活動は、そこに来ている子どもによって違って見える。学童保育は、1日の間あらゆる事柄の中で子どもが学ぶので、子どもの学びの中の重要な役割の一つを持っている。職員たちは、保育と学びを一つにまとめる任務がある。例えばそれは、子どもが違ったことや意見を尊重したり、時には人は妥協しなければならないことがわかったりと言う社会的機能や主体性を学ぶことを助けるのである。」規模が年々大きくなる中での政府のスウェーデンの学童保育の案内である。

2) 1990年代前半、スウェーデンの学童保育の形態は以下のように示されていた。

Pedagogisk uppslagsbok

上記のように教育辞典には体系化されていた。現在は、学校と統合した学童保育が中心になっている。
3) 2008年秋、学童保育の子どもグループは増加しておよそ1グループ当たり34.9人。前年比1.4人増、10年前と比べると5.5人増。学校と統合する前の1990年にはなんと17.8人だった。10歳から12歳は増加して、家庭保育室に来ている子どもは珍しくなった。職員密度は減少して、職員の雇用も減少。57%が教育学に関する大学の資格認定、学童保育教育に関する認定を持っているが2007年と比べて減少した(2009年5月学校庁報告「スウェーデン学校庁2008年学童保育の子どもと職員」)。

4) 1グループあたり増加したとはいえ、日本より少なく資格認定が存在する。

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