児童健全育成活動における母親クラブの役割
○ 新潟県立大学 植木 信一 (会員番号2922)
キーワード: 《母親クラブ》 《地域性》 《多様性》
母親クラブとは,児童厚生施設等の活動拠点と有機的連携を保ちながら活動する,児童健全育成のためのボランティア組織である.1948(昭和23)年に「母親クラブ結成及び運営要綱」(厚生省児童局長)として定められ,1973(昭和48)年に国庫補助が始まって以降,今日まで地域での母親活動として,また,大きな活動組織として継続しているが、その運営方法や活動内容については,全体像が明らかになっていない。
そこで本研究報告では,母親クラブ活動の今日的役割を明らかにすることを研究目的とする.
母親クラブ活動として規定されている活動(①親子および世代間交流・文化活動,②児童育成に関する研修活動,③児童の事故防止等に関する活動,④児童福祉の向上に寄与する活動,⑤その他の活動)に関して,活動内容に関する課題,運営上の課題,会員の課題について,地域別に把握した.
母親クラブの全国組織である全国地域活動連絡協議会が把握する全国の母親クラブから,「地域性を重視した母親クラブによる児童健全育成支援方法の研究」(植木2009)で得たサンプルのうち, 2009年10月の時点で現在する母親クラブ761か所に対し,郵送によるアンケート調査を実施した.調査時期は2009年12月,発送数761か所に対し回収数は374か所(有効回収数:369、無効回収数:5)で,回収率は49.1%(有効回収率:48.5%)であった.
日本社会福祉学会研究倫理指針に基づき,アンケート調査を実施した.具体的には,アンケート調査用紙に「調査の趣旨とご協力のお願い」を明示し,記入者に承諾を得たうえで調査を実施し回収した.あわせて,調査対象の匿名性や名誉・プライバシーについて配慮した.
4.研 究 結 果 地域性については,「中心市街地(24.39%)」「郊外の住宅地(47.15%)」「郊外の農業地(15.99%)」
「中山間地(7.05%)」の4地域性に分類することができる.
活動拠点施設を種類別にまとめると,地域性により活動拠点に違いのあることがわかる.全体でみると,児童館
を拠点に活動している母親クラブ(67.21%)が過半数を占めていることから,母親クラブの運営要綱どおり児童
厚生施設と有機的連携をとる母親クラブの特徴を表しているようにみえる.
しかし,4地域性でみると,児童館を活動拠点としている母親クラブは,中心市街地(75.56%)および郊外の住
宅地(70.69%)で7割を超えている一方で,中山間地(38.46%)においては4割未満にとどまり,明らかに活動拠
点の多様性が確認できる.また,保育所を活動拠点とする母親クラブは,郊外の農業地(22.03%)と中山間地(23
.08%)で一定割合認められ,中心市街地(10%)や郊外の住宅地(7.42%)の低さと比較し明らかな違いを確認す
ることができる.中山間地においては,その他(26.92%)の活動拠点の割合も比較的高い.つまり,児童館のほか
に保育所やその他施設を活動拠点としている傾向が確認でき,実態としては,児童厚生施設との連携による活動の
みならず,活動拠点の多様性に対応した母親クラブ活動の役割があると考えられる.
母親クラブ活動の課題については,活動内容の課題(38.51%),運営上の課題(26.96%),会員の課題(34.
53%)ともほぼ均等に確認できる.4地域性に分類すると,すべての地域性で課題が確認できる.活動拠点別に課
題の所在をみると,児童館(1,128か所),保育所(148か所),公民館(131か所)ともに,ほぼ均等に活動内容
の課題,運営上の課題,会員の課題が認められる.4地域性に分類して確認しても,すべての地域性で課題が確認
できる.
会員の活動期間については,10年以上(39.56%)の活動歴と,5年未満(34.96%)の活動歴がほぼ同じ割合で
確認できる.つまり,長期的な関わりによる会員の活動実態と,短期間のサイクルによる会員の活動実態の両側面
を確認することができる.
以上のようなことから,(1)母親クラブは児童館を拠点とする活動のほかに,多様な活動拠点で役割をはたす
ことができる.(2)課題解決の方法や工夫を母親クラブ活動の今日的役割に反映させることができる.(3)地
域における母親クラブ活動実態の多様性に焦点をあてながら活動支援することが必要である.
なお,本研究報告は,財団法人こども未来財団平成21年度児童関連サービス調査研究等事業「地域の児童健全育
成における母親クラブのはたす役割」主任研究者:植木信一(2010年3月)としてまとめた内容の一部である.