End of Life Care実践支援ツールを活用したソーシャルワーク実践に関する
研究
○ 中部学院大学大学院 松久 宗丙 (会員番号6214)
関西福祉科学大学 太田 義弘 (会員番号10)
キーワード: 《エコシステム構想》 《ソーシャルワーク実践》 《生活情報のビジュアル化と支援技術》
人生の最期を支援する実践や研究は、医療機関におけるがんの末期入院患者を主として発展してきた経緯がある。しかしながら、わが国の人口の高齢化は著しく、高齢者のEnd
of Life Careが求められている。このような背景のなか、End of Life Careでは、疾病や疾患に特化せず、時間軸を長くとった要介護高齢者の生活コスモスに対する視野と発想が必要であると思われる。
さらに、End of Life Careでは、多職種連携のチームアプローチの一つにソーシャルワーク実践としての方法論の確立が求められている。ソーシャルワーク実践としてのEnd
of Life Careには、生活の状況と変容過程を要介護高齢者とソーシャルワーカーが共有し、要介護高齢者の生活情報をビジュアル化して示すことのできる支援ツールを、支援過程に活用することによって、乖離する制度・政策と実践活動、理論と実践などを包括・統合化する架け橋=媒介の役割を担っていこうというエコシステム構想の活用から、要介護高齢者の人生の最期に寄り添うことができるのではないかと思われる。
そこで、本研究では、以下の2点を仮説としている。
(1)End of Life Careでは、要介護高齢者の生活コスモスに対する視野と発想が不可欠である。
(2)End of Life Careには、エコシステム構想の活用が有効である。
これら2点の仮説を実証すべく、本研究では継続研究の一環として、以下の2点について、ソーシャルワーク実践としてのEnd of Life Careに焦点化した考察をおこない、要介護高齢者の生活支援に活かすことを目的とする。
(1)End of Life Care実践支援ツールを開発する。
(2)End of Life Care実践支援ツールを活用した実証展開をする。
本研究では、生活コスモスを包括・統合的にとらえる支援科学としてのソーシャルワークの視点に立脚し、以下の方法を用いて研究をおこなった。
(1)End of Life Care実践支援ツールの開発について
①End of Lifeに焦点化した生活エコシステム情報の構成と内容を設定する。
②End of Lifeに焦点化した生活エコシステム情報の構成と内容(End of Life情報の構成と内容)をもと に、「ソーシャルワーク実践支援ソフトウェアver1.0.0」を活用して質問項目を整備する。
(2)End of Life Care実践支援ツールを活用した実証展開について
①End of Life Careを地域でシェアすることをめざし、地域生活支援過程として在宅での生活を基盤とし ながらデイケアを利用する要介護高齢者(要介護
中重度の高齢者)を対象にしてEnd of Life Care実 践支援ツールを活用し、実証展開をおこなう。
②ソーシャルワーク実践としてのEnd of Life Careについて、要介護高齢者とソーシャルワーカーの参加 と協働による実証展開から本研究の仮説を検証する。
日本社会福祉学会研究倫理指針にもとづき、本事例における個人名や施設名は、アルファベット表記や仮名とし、個人が特定できないように配慮している。
4.研 究 結 果(1)End of Life Care実践支援ツールの開発について
生活というひろがりを実体に即して把握する枠ぐみとして、End of Lifeに焦点化してとらえるため、「領域」「分野」「属性」「内容」へと階層化した。階層化の詳細は以下のとおりである。
End of Lifeを「領域」として人間と環境に2分割、「分野」として利用者・基盤・周辺・支援に4分割、「属性」として特性・問題・身辺・家族・近辺・資源・機関・ネットワークに8分割、この属性の下位に、その「内容」を浮き彫りにする32因子をもって構造化した。
さらに、「ソーシャルワーク実践支援ソフトウェアver1.0.0」を活用し、理論研究より 導き出された32因子からなる要介護高齢者のEnd of
Lifeの枠ぐみを配列した。
これら32因子の内容を掌握するため、実践の構成要素である価値・知識・方策・方法の4側面からとらえた128因子の質問項目を整備した。
(2)End of Life Care実践支援ツールを活用した実証展開について
End of Life Care実践支援ツールを用いて生活情報をビジュアル化し、要介護高齢者とともに具体的な生活課題を抽出、ならびに目標や支援内容を設定することができ、生活の変容過程を要介護高齢者とソーシャルワーカーとの参加と協働によって実証できたと考えられる。(詳細な内容は当日報告)
以上のことから、本研究の仮説は、要介護高齢者とソーシャルワーカーとの参加と協働による実証展開をもとに、End of Life Careでは、要介護高齢者の生活コスモスに対する視野と発想からEnd
of Life Care実践支援ツールを用いて、生活情報をビジュアル化し、支援技術の展開を可能としていると思われる。
したがって、End of Life Careでは、要介護高齢者の生活コスモスに対する視野と発想 の必要性を示唆できていると思われる。 さらに、生活の変容過程をエコシステム構想にもとづいたEnd
of Life Care実践支援ツールを用いて、ソーシャルワーク実践として生活情報をビジュアル化することで、要介護高齢者の生活コスモスに対する視野と発想をもとに、より深いニーズに寄り添うことができたと思われる。
したがって、End of Life Careには、エコシステム構想の活用が有効であると思われる。