自由研究発表方法・技術3  武田 加代子

レジデンシャル・ソーシャルワーク専門職性評価指標の開発
 -特別養護老人ホームに勤務するソーシャルワーカーを対象とした調査
   の結果から-

○ 天理大学  武田 加代子 (会員番号1502)
名古屋学院大学  山下 匡将 (会員番号6673)
龍谷大学短期大学部  伊藤 優子 (会員番号6527)
青森県立保健大学  杉山 克己 (会員番号2160)
北海道医療大学  志水 幸 (会員番号1727)
大妻女子大学  川廷 宗之 (会員番号301)
キーワード: 《専門職性》 《レジデンシャル・ソーシャルワーク》 《ソーシャルワーク専門職性自己評価尺度(SWPI)》

1.研 究 目 的

 ソーシャルワーク(以下、SW)に対する社会的な認知度と評価の向上には、社会福祉士が属する職場として最も多い高齢者福祉施設におけるレジデンシャル・ソーシャルワーク(以下、RSW)において、利用者の真のニーズの充足に向けた高い専門職性にもとづく良質なサービスを提供することが求められる。そこで本研究では、高齢者福祉施設に勤務するソーシャルワーカー(以下、SWer)を対象とする調査により、RSW専門職性評価指標(以下、SWPI-R)を開発することを目的とした。 

2.研究の視点および方法

(1)研究の視点  
 本研究では、SW専門職性の普遍性に着目し、「ソーシャルワーク専門職性自己評価尺度(以下、SWPI) 」 とRSW専門職性の整合性を検証する。
(2)研究方法
①SWPI-R項目の作成  
項目の作成にあたり、1)42項目からなるSWPIの有用性を高める点に配慮し、「短縮版SWPI(11項目)」 を開発した。2)RSW実践に関する文献検討にもとづき、短縮版SWPIの各項目に対応する20項目を設定した。3)現職のSWerを対象とした予備調査を実施した。
②調査(「レジデンシャル・ソーシャルワークの専門職性に関する調査」)の実施  
全国の特別養護老人ホームにおいて相談業務に従事するSWer に、調査協力を依頼した。調査期間は、2010年5月14日~5月25日である。調査には、構造化された質問紙票を用いた郵送法を採用した。調査内容は、フェイスシート12項目、短縮版SWPI11項目、SWPI-R20項目、計43項目である。
③統計解析
〔相関分析〕 第一に、各領域ごとに、短縮版SWPIおよびSWPI-R両得点間の相関係数を算出した。なお、1つの短縮版SWPI項目に対して複数の項目が設定されている場合は、そのうち最も相関係数の高い項目を修正版尺度項目として採用した。第二に、短縮版SWPI総得点とSWPI-R総得点の相関係数を算出した。相関分析の際の有意水準は、すべて5%である。
〔信頼性分析〕 修正版SWPI-R項目の信頼性を検討するため、Cronbachのαを算出した。
〔因子分析〕 修正版SWPI-R項目の構造把握のため、因子分析(回転なし)をおこなった。  

3.倫理的配慮

 本研究は、1)無記名式であること、2)得られたデータは数値化し、かつ統計的に処理すること、3)研究目的以外でのデータの利用はないこと等を調査票に明記し、承諾が得られた協力者にのみ、設問への回答を依頼した。  

4.研 究 結 果

(1)調査結果および調査協力者の概要  
調査対象施設6545件のうち、調査への協力が得られたのは1342件であった(回収率20.5%)。なお、無記入および未記入の回答は、分析の際に適宜除外した 。  調査協力者の平均年齢(±SD)は38.0(±9.3)歳であった。性別は、男性796名(59.7%)、女性538名(40.3%)であった。職名は、生活相談員が1153名(86.4%)であった。社会福祉分野での平均経験月数(±SD)は、142.9(±83.0)ヶ月であり、「相談職」の平均経験月数は、87.5(±67.8)ヶ月であった。所持資格(複数回答)は、社会福祉士が743名(55.3%)、精神保健福祉士が58名(4.4%)、介護福祉士が703名(53.0%)、介護支援専門員が861名(64.9%)であった。
(2)相関分析
①領域別項目得点の相関係数とSWPI-R項目(SWPI-R項目のみ表示。詳細は当日資料参照。)  相関分析の結果、短縮版項目得点とSWPI-R項目得点との間に、有意な正の相関がみられた項目は、以下の通りである。 【C領域(SWPI項目数1項目。以下、同様)】では、「SWの価値を意識して、仕事に臨んでいる」、【Et領域(1項目)】では、「SWerには何故倫理が問われるのか、その理由を説明できる」、【A領域(3項目)】では、「利用者の自己決定を実現するために、関係者の中で必要に応じてイニシアティブをとっている」「SW援助の進め方は、その時々の利用者の状況にもとづいて、自分自身で判断している」「他職種と協働するときに、自分の意見が採用されている」、【K領域(2項目)】では、「適切な援助のために、対象領域に関する知識にとらわれず、意図的に幅広く学んでいる」「複数のSWの援助理論を、意図的に使い分けている」、【S領域(2項目)】では、「援助計画を策定する際には、利用者の意向を常に意識している」「よりよい援助のために、多大な努力を要しても新しい方法を試みている」、【PA領域(1項目)】では、「専門職団体に所属する意義を意識して、当該活動に参加している」、【Ed領域(1項目)】では、「学会や各種大会で実践をまとめて報告している」であった。
②短縮版SWPI総得点と修正版SWPI-R総得点の相関分析  
相関分析の結果、短縮版SWPI総得点と修正版SWPI-R総得点との間に有意な正の相関がみられた(r=.723)。
(3)信頼性分析  
  (2)①によって選定された修正版SWPI-R11項目について、Cronbachのαを算出したところ、α=.792であった。
(4)因子分析  
  (2)①によって選定された修正版SWPI-R11項目について、因子分析を実施した結果、「RSW専門職性」および「自身の判断に対する迷い」の2カテゴリーが生成された。
  以上の結果から、当該11項目によるRSW実践の専門職性評価の可能性が示唆された。

※本研究は、平成21年度みずほ福祉助成財団社会福祉助成金による研究成果の一部である。  

5.注 釈

1.南 彩子・武田 加代子(2004)『ソーシャルワーク専門職性自己評価』相川書房.
2.短縮版SWPIは、SWPI同様、①使命感(C)、②倫理性(Et)、③自律性(A)、④知識・理論(K)、⑤専門的技能(S)、⑥専門職団体との関係(PA)、⑦教育・自己研鑽(Ed)の7領域から構成される。
3.原則として、1施設1名に回答を依頼した。
4.SWPI-R総得点およびSWPI総得点については、各項目への回答に1項目でも不備が確認された場合、当該得点の算出をおこなわず「欠損値」として処理した。なお、SWPI-R総得点の有効回答数は1208件であり、この場合、本調査への有効回答率は90.0%(実質回収率18.5%)となる。  

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