自由研究発表方法・技術1  西内 章

保健・医療・福祉専門職の連携・協働におけるソーシャルワーク視座の検討
 -過疎地域における利用者システムの認識に着目して-

○ 高知女子大学  西内 章 (会員番号3704)
キーワード: 《利用者システム》 《ソーシャルワーク視座》 《連携・協働》

1.研 究 目 的

 人口の過疎化・高齢化がみられる過疎地域においては、コミュニケーション手段や交通手段が課題となっている集落が多くみられる。特に、限界集落と呼ばれる地域では、その問題が顕著に現れる(玉里 2010)。したがって、過疎地域では、人的・物的・社会的なネットワーク・システムを構築することが不可欠であり、近年、過疎地域において、ITを利用した保健・医療・福祉のネットワーク・システムが導入されるケースもみられる。そこでは、利用者の情報を共有し、日常の生活情報のみならず緊急時対応に役立てようとしている。
 エコシステム研究会のチーム・アセスメント支援ツール開発グループでは、ハイリスク利用者システムに対して、多領域のソーシャルワーカーから構成されるチーム・アプローチで用いる支援ツールの開発を行ってきた。その支援ツールでは、中山間地域の社会資源が限られている場合、多領域のソーシャルワーカーが関わると、多くの課題がみられることが明らかになった(丸山 2010)。さらに、保健・医療・福祉専門職が、連携・協働する場合、ソーシャルワーカーは、ソーシャルワークの視座と他職種の視座の共通点と相違点を探ることが実践に含まれる。本研究では、チーム・アセスメント支援ツール開発グループや自らの研究成果をふまえ、過疎地域において保健・医療・福祉専門職が連携・協働する際、必要となるソーシャルワークの視座を検討し、課題を明らかにすることを目的とする。  

2.研究の視点および方法

 本報告では、これまでのエコシステム研究会のチーム・アセスメント・支援ツール開発グループや自らの研究成果を踏まえ、過疎地域において、保健・医療・福祉専門職が連携・協働する際、必要となるソーシャルワークの視座を検討し、課題を考察した。
  研究方法として、文献研究を用いた。具体的には、以下の3点である。
 ①過疎地域における保健・医療・福祉専門職のそれぞれの視座の整理
 ②保健・医療・福祉専門職が連携・協働する際、不可欠なチーム・アプローチの視座の考察
 ③過疎地域の保健・医療・福祉専門職が連携・協働するためのソーシャルワークの視座の検討
 ④連携・協働における利用者システムの認識への課題  

3.倫理的配慮

 本報告は、文献研究であり、文献を引用・参考するにあたり、日本社会福祉学会の研究倫理指針に則して研究を進めている。また、エコシステム研究会のチーム・アセスメント支援ツール開発グループの研究については、高知女子大学社会福祉研究倫理専門審査委員会の承認(受付番号93号)を受けて、研究活動を行っている。  

4.研 究 結 果

 これまでの研究成果では、A県内の保健・医療・福祉領域の専門職を対象に行った調査において、直接的な「利用者支援機能」の他に、「連携機能」や「マネジメント機能」を意識して用いており、チーム・アプローチを意識していた。一方で、今後望む「研修」は、「各職種の役割」や「他職種の理解」等が挙げられており、その専門職の協働に欠かせない他の職種の専門性をまだ理解できていないと認識している実態があるように思われる(西内ほか 2010)。また、エコシステム研究会のチーム・アセスメント支援ツール開発グループが行ったヒアリング調査では、過疎地域のハイリスク利用者システムに着目すると、利用者と各家族メンバー間で、家族や生活に対する認識が異なるため、利用者システムを理解するためには、家族の関係性や相互作用に着目した視点が支援ツールにあるとよいこと等をヒアリング調査対象者から指摘を受け、研究を継続している(丸山 2010)。そして、過疎地域で高齢者生活支援に携わる社会福祉士,介護支援専門員という2つの資格をもつ支援者の場合、どのような関わり方が望ましいかを常に考えながら利用者や家族と関わっている状況があったが、そこで自問する内容は、利用者や家族、他の支援者、自らの関わり方に加えて、支援目標や支援計画についても自問している様子がみられた(西内 2007)。
  ところで、ソーシャルワークの視座が提供するものは、利用者の生活状況にソーシャルワーカーや他職種の専門職システムも含む包括的な視座である。その際に示唆を与える理論には、エコシステム視座があるが、この理論においても視座の具体化が課題として指摘されてきた(太田 1992)。ソーシャルワークの利用者支援では、その視座の重要性を理解し、保健・医療・福祉専門職が連携・協働する際においても、自らの実践に照らし合わせることになるが、その場合、他職種との相違を具体的に示すことが求められる。そこで、ソーシャルワークの視座について、先行研究を整理すると、保健・医療・福祉専門職が連携・協働する際には、ソーシャルワークの視座と他の保健・医療・福祉専門職の視座を具体的に比較検討することが指摘できる。また、過疎地域において他職種と連携・協働する際、ソーシャルワークの視座を具体化するためには、以下のような課題が指摘できる。
  ①保健・医療・福祉専門職の視座の共通性と特殊性
  ②過疎地域におけるソーシャルワークによる包括的視座の具体化
  ③過疎地域における利用者システムに対する認識と情報共有の方法  

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