自由研究発表制度・政策1  大島 巌

プログラム理論・エビデンス・実践間の円環的対話による、効果的福祉実践プログラム
 -モデル形成のための評価アプローチ法(CD-TEP法)の開発-

○ 日本社会事業大学  大島 巌 (会員番号228)
日本社会事業大学  道明章乃 (会員番号7349)
日本社会事業大学  小佐々典靖 (会員番号5937)
日本社会事業大学  佐藤久夫 (会員番号0383)
日本社会事業大学  児玉桂子 (会員番号1659)
日本社会事業大学  山下英三郎 (会員番号4101)
日本社会事業大学  植村英晴 (会員番号4001)
東京学芸大学  福井里江 (会員番号6460)
NCNP精神保健研究所  吉田光爾 (会員番号7777)
お茶の水女子大学  平岡公一 (会員番号560)
東洋大学  小林良二 (会員番号345)
日本社会事業大学  大橋謙策 (会員番号241)

キーワード: 《プログラム評価》 《科学的根拠にもとづく実践(EBP)》 《効果的援助要素》

1.研 究 目 的

本研究は、1990年代以降アメリカを中心に理論的にも実践的にも発展したプログラム評価の理論と方法論を用いて、新しい社会福祉実践プログラムを科学的根拠に基づく効果的なプログラムモデルとして構築・発展させるための評価アプローチ法を、福祉実践プログラム各領域に関わる関係者間で検討して共有し、その方法論を発展させることを目的に行う。
 近年日本の社会福祉制度改革の中で、ゴールを示した新しい社会福祉実践プログラム(介護保険法、自立支援法のプログラム等)が相次いで導入されるようになった。一方で、日本の政策決定者や利害関係者において科学的なプログラム評価法や科学的根拠にもとづく実践(EBP)への関心は乏しく、実践と実証の積み重ねがないまま行政主導のプログラム導入が進められている。さらに社会福祉とソーシャルケア関係者間には、福祉実践プログラムの明確なゴールと介入成果を示すアウトカム指標への十分な合意形成がないまま「効果的なプログラム」について考慮しなければならない現状がある。本研究は、これら現状の問題解決に有用なプログラム評価のアプローチ法として、「プログラム理論・エビデンス・実践間の円環的対話による、効果的福祉実践プログラムモデル形成のための評価アプローチ法(CD-TEP評価アプローチ法;An Evaluation Approach of Circular Dialogue between Program Theory, Evidence and Practices)」を開発し、提案することを目指している。  

2.研究の視点および方法

1) 検討した福祉実践プログラム:新しく登場した社会福祉実践プログラムのうち、導入期の既存制度プログラムや試行的事業のプログラムで、全国的にある程度実施されているが効果的な実践モデルが形成されていないと考えられる個別プログラム、および研究者や実践家サイドが福祉実践現場のニーズを踏まえて新規に開発した個別プログラムとした。具体的には、高齢者福祉領域では「認知症高齢者環境作りプログラム(主任:児玉桂子教授)」、児童・思春期福祉領域では「被虐待児回復、援助者支援プログラム(主任:藤岡孝志教授)」「ひきこもり・ニートへの就労支援プログラム(主任:山下英三郎教授)」ほか、障害者福祉領域では「障害者就労移行支援プログラム(主任:佐藤久夫教授)」、精神保健福祉領域では「精神障害者退院促進支援プログラム(主任:大島)」ほかである。
  2) 共通の研究プロセス:後にCD-TEPアプローチ法に発展する、暫定効果モデルの構築、提案効果モデルの構築を含む以下の6ステージを用い研究を進めた。第Ⅰステージ「既存モデル・制度モデルの評価可能性アセスメント、プログラム理論評価」、第Ⅱステージ「 予備的プログラム評価調査の実施」、第Ⅲステージ「 暫定効果モデルの構築」、第Ⅳステージ「 全国プログラム評価調査の実施」、第Ⅴステージ「提案効果モデルの構築」、第Ⅵステージ「効果的なプログラムモデル構築のためのアプローチ法の確立と提案」である。
  3) 共通知識の構築と共有化の方法の検討:高齢者福祉領域、児童・思春期福祉領域、障害者福祉領域、精神保健福祉領域の新しい実践プログラム開発に関わる関係者が合同の研究会[EBSC (Evidence-Based Social Care) プログラム評価法研究会]を組織し、4年間10回以上の集中的な議論を重ねながら、各領域の福祉実践プログラムにプログラム評価の理論と方法論を適用し、それらがより効果的なプログラムに発展するためのアプローチ法(マニュアルや何種類かの様式集を含む)を検討し、関係者間で共有する。  

3.倫理的配慮

日本社会事業大学倫理委員会による承認(2007年12月)を得て実施した。 

4.研 究 結 果

1) 研究ステージごとの研究成果:各研究ステージを進めるために必要な共通アプローチ方式として、①合意できるプログラム理論の形成方法、②効果的援助要素の作成と共有化の方法、③チェックボックス方式による効果的援助要素の記述と測定の方法、④効果的援助要素チェックボックスに基づく実施マニュアルの構築の方法が定式化され、そのために必要な実践的知識をマニュアルと様式集などのツールキットを含めて整理した。
2) CD-TEPアプローチ法の枠組み生成と共通基盤:プログラム理論・エビデンス・実践間の円環的対話によるアプローチ法(CD-TEP法)を、ラセン階段上昇型の模式図として整理した。「円環的対話」を成立させる共通基盤として、①測定可能なプログラムゴールの設定と共有、② 合意できるプログラム理論の形成、③効果的援助要素の作成と共有、④チェックボックス方式による効果的援助要素の記述と測定、⑤効果

的援助要素チェックボックスに基づく実施マニュアルの構築、⑥プログラムゴールとなるアウトカム指標と効果的援助要素の関連性に関する日常的把握と実証、が必要であることを明らかにした。

3) CD-TEPアプローチ法の知識体系
 CD-TEP法の具体的な知識体系を、結果第1項の研究成果を踏まえてPMBOK (Project Management Body of Knowledge)の枠組みを参考に類似のマトリックスに整理した。

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