自由研究発表社会福祉教育・実習2  山口 真里

ソーシャルワークにおけるストレングス教育の現状と課題
 -「相談援助」系科目担当教員へのヒアリング調査をつうじて-

○ 広島国際大学  山口 真里 (会員番号5501)
キーワード: 《ソーシャルワーク》 《ストレングス教育》 《「相談援助」系科目》

1.研 究 目 的

  ソーシャルワークにおいてストレングスは、利用者との対等な関係を構築し、真に利用者の望む生活を実現する支援展開の鍵概念として注目されている。その一方でストレングスに着目する支援過程や展開方法については、十分明示されてきていない現状がある。ソーシャルワーカーが利用者のストレングスに着目した支援を行うためにも、その過程展開方法を確立することが喫緊の課題といえよう。こうした問題意識から、ストレングスに着目した支援過程として、ストレングス‐パワー変容過程を提示してきた。ストレングス‐パワー変容過程とは、利用者自身がストレングスをパワーに変容させる局面展開をもつ一連のプロセスである。これまでの研究では、ストレングス‐パワー変容過程局面でのソーシャルワーカーの役割とその具体的展開方法を考察し、利用者のストレングス状況とその変容を捉えるストレングス‐パワー変容過程版エコスキャナーを試作した。その検証の一環として、自らが担当する社会福祉援助技術演習(相談援助演習)で、事例を用いて受講生にストレングス‐パワー変容過程版エコスキャナーを体験してもらった。 この演習では、利用者の欠陥や病理に目を向けていた受講生の視点が利用者の強さや能力に気づく視点へと変化していくプロセスを垣間見ることができた。このような教育経験から、ソーシャルワークにおけるストレングス教育方法に関心を持つようになったのである。 一方でわが国では、社会福祉士法及び介護福祉士法の改正に伴い、2009年度から社会福祉士養成課程で新カリキュラムに基づく教育が始まった。科目名の変更や時間数の増加、教育内容の見直しが行われた新カリキュラムでは、従来の社会福祉援助技術関連科目の充実が図られている。その結果、「相談援助の基盤と専門職」、「相談援助の理論と方法」、「相談援助演習」、「相談援助実習指導」、「相談援助実習」の5科目(以下、総称して「相談援助」系科目とよぶ)が社会福祉士養成課程の科目として登場することとなった。なかでも「相談援助の基盤と専門職」、「相談援助の理論と方法」の科目では、従来のカリキュラムと比較してストレングスモデルやストレングス視点などストレングスにかかわる教育内容が強調されている。 このような流れからみても、わが国でストレングスに着目できるソーシャルワーカーの養成が期待されていることがうかがえ、ストレングス教育が重視されていることがわかる。特に「相談援助」系科目内容には、受講生がソーシャルワーカーとしてその理論を実践へと具体化していくプロセスが内包されている。同様にストレングスに着目した支援についても、ストレングスにかかわる理論を学んだうえで実践に具体化できる教育方法が必要とされている。しかしソーシャルワークにかかわる教育研究では、ストレングス教育の方法について言及した先行研究はまだ少ない。本報告は、ストレングス教育に関連する先行研究を行ったうえで「相談援助」系科目担当教員へのヒアリング調査を実施し、わが国のストレングス教育の現状と課題を明らかにするものである。

2.研究の視点および方法

   本報告では、研究課題を以下の4点にしぼり考察を試みた。  1)ストレングス教育にかかわる先行研究の整理  2)「相談援助」系科目担当教員へのヒアリング調査項目の作成  3)ヒアリング調査によるストレングス教育状況の把握  4)先行研究と調査結果からのストレングス教育課題の考察

3.倫理的配慮

  本報告で用いている調査内容については、事前に調査対象者に承諾を得ており、個人が特定できないように匿名化して報告を行う。

4.研 究 結 果

  上記の研究方法によって、以下の2点が明らかになった。  1)「相談援助」系科目におけるストレングス教育の現状  2)ストレングス教育にかかわる課題  まず先行研究とヒアリング調査によって整理した1)「相談援助」系科目におけるストレングス教育の現状については、①「相談援助」系科目の5科目それぞれの教育内容に工夫が行われていること、②教育効果の十分な検証が行われてきていないこと、③5科目間の連動について多くの課題が残されていること、が明らかとなった。  また2)ストレングス教育にかかわる課題には、①有効なストレングス教育方法の確立、②「相談援助」系科目の連動についての課題解決、の2点が残されていることが理解できた。

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