自由研究発表社会福祉教育・実習2  松永 公隆

実習施設における実習指導者によるスーパービジョン/実習指導に関する基礎的研究(その2)
 -自由記述の分析を基に-

○ 長崎純心大学  松永 公隆 (会員番号2976)
山梨立正光生園  山田 勝美 (会員番号2051)
長崎純心大学  山田 真由美 (会員番号7885)
長崎純心大学  横山 智美 (会員番号7883)
長崎純心大学  井上 由起 (会員番号7884)
キーワード: 《実習指導者》 《スーパービジョン》 《自由記述》

1.研 究 目 的

  近年の社会福祉士養成課程の動向を見るに、2008年には「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、社会福祉士及び介護福祉士の定義の見直しや、介護福祉士を中心とした国家試験のあり方に対する見直しがなされるとともに、養成カリキュラムの大幅な見直しがなされることとなった。とりわけ、社会福祉士養成カリキュラムにおける「相談援助実習」に焦点を当ててみると、養成校に対して週1回の実習訪問が規定されるとともに、実習計画書の策定にあたっては、養成校-実習生―実習先との3者の協議が必要となるなど、より充実した指導が求められるようになった。加えて、教員要件の見直しとして、実習・演習を担当する教員は、①5年以上の相談援助業務の経験を有する社会福祉士、②5年以上の実習・演習の教育経験を有する者、又は③実習・演習の教員の講習会を受講している者その他準ずる者を置くことが定められるとともに、実習指導者の要件の見直しとして、実習施設における実習指導者は、3年以上の相談援助業務の経験を有する社会福祉士であって、実習指導者講習会の受講している者を置くこととすることが定められることとなった。 そのことは、すなわち実習教員・実習指導者が実習指導を行ううえで一定の経験だけでなく、知識・技術が必要になったという意味だけでなく、実習指導の内容の充実が求められるようになったことを意味する。教員の講習あるいは実習指導者の講習への参加が問われてきたのは、まさにそういった意味を内包しているのである。では、実習現場において実習指導/スーパービジョンは現在どのような形で実施されているのであろうか。 本研究では、【その1】と同様のデータである実習指導者を対象としたデータに加えて、同時期に福祉実習を行なった学生を対象とした調査データのうち、自由記述のデータを分析対象とし、実習中の実習指導者によるスーパービジョン/実習指導の実態を把握していくことを目的としていく。具体的には、①実習指導者としてスーパービジョン/実習指導を展開していく上で、現在、実習指導者はどのような認識をもってスーパービジョンを展開しているのか、②実習生として、どのようなところに実習指導/スーパービジョンの意義を感じているのか、その実態について質的に明らかにしていきながら、実習指導者が行う実習指導/スーパービジョンにとって必要なスキルや要素について確認していくことを目的とした。

2.研究の視点および方法

  B県にあるA私立大学(以下、A大学とする)において21年度に社会福祉実習を受け入れている実習先75箇所の実習担当者を対象に、郵送による自計式の質問紙調査を実施。調査時期は、平成21年10月1日~10月30日で60票を回収(回収率80%)。質問項目は、自由記述として「スーパービジョン/実習指導で心がけていること」「スーパービジョン/実習指導で困ったこと」などであった。また、A大学において2009年度において実習を経験した実習生104名を対象に、自計式の質問紙調査を実施した。調査時期は、平成21年9月28日~10月2日で、101票を回収(回収率97.4%)。質問項目については、自由記述として「スーパービジョン/実習指導で印象に残っていること」「スーパービジョン/実習指導で困ったこと」などについて尋ねた。なお、分析方法など、詳細な内容は当日報告することとしたい。

3.倫理的配慮

本調査を実施するにあたり、調査対象者のプライバシーを保護するため、無記名性を採用し、あくまで統計的に処理することを予め伝え、調査結果については研究以外に使用しないことを明記した。 

4.研 究 結 果

  研究の結果、a)実習指導者への調査において、「スーパービジョン/実習指導で心がけている点」に関しては、【「実践力」を高める指導】と【実習生の主体的学びを尊重/保証する指導】という概念が導き出され、スーパービジョン/実習指導を展開するに当たっては、専門性を確保するためカリキュラムにそった学習課題があり、それらの学習課題を遂行することは言うまでもないが、同時に、実習生の力を引き出しながら、学習する主体性を保証・尊重すると指導に心がけているということ、「実習期間中のスーパービジョン/実習指導において困ったこと」については、①【実習生の学ぶ姿勢・行為】、②【実習生への伝え方】、③【実習生の学習力・社会性】、④【指導力】、⑤【実習を受け入れる条件】といった要素からの課題が抽出され、スーピービジョン/指導を行なう上において、学生自身が有している課題(過去の実習課題や心理的面など)や、「実習生の学習力・社会性」の問題を含め、学生の力を評価しかつ理解する必要があるが、実習担当者にとって、実習以前に実習生とかかわる機会が乏しく、その見極めは、 実習の経過をたどりながら行なわれることとなる可能性が高いこと、b)学生への調査において、「印象に残っている点」については、大きく①【専門性・実践力を高める指導】と、②【学ぶことを尊重/保証する指導】の2つの次元に分けられ、全体的に学生が主体的に学ぶ権利の保証/保証がコアとなるわけであるが、とりわけ「学ぶ主体」としては、学生が主体的に考え、行為化できることであり、言語化する作業や行き詰ったりしたときに、適切な指導を行ってもらっていることが、印象として残っていることなどが明らかとなった。

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