自由研究発表社会福祉教育・実習1  原田 将寿

重度知的障害者施設における相談援助実習プログラム開発に関する
 基礎的研究
 -国立のぞみの園モデル構築に向けて(中間年度)-

○ 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園  原田 将寿 (会員番号6688)
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園  柳田 正明 (会員番号4468)
キーワード: 《新カリキュラム》 《実習プログラム》 《評価測定》

1.研 究 目 的

 2008年の社会福祉士及び介護福祉士法改正を受けて、社会福祉士養成課程新 カリキュラムにおける相談援助実習で学ぶべき内容が新たに提示された。よりよい福祉 人材を養成するためには、これまで当法人で提供していた実習プログラムを新カリキュラム に対応するよう改訂し、学校で学んだ知識と実習での実践に齟齬が生じないよう対応する 必要があると考える。
 本研究は、知的障害者の施設で相談援助実習を行う際に、新カリキュラムに示された 学ぶべき内容についてどのように展開すればいいのか、また欠落しているものは何か等を 当法人のフィールドを活用して平成20年度からの3年次計画で実証するものである。
 1年目に当たる平成20年度は、日本社会事業大学と共同開発体制をとり、相談援助実習 プログラム及びプログラムを有効に活用するためのプログラム・マニュアルを作成した。
 2年目となる平成21年度は、作成した実習プログラム及びプログラム・マニュアルにて 実習を行い、その評価・検証を行った。なお、その結果に基づき、3年目となる本年度は 追跡調査及び実習プログラム等の改訂を予定している。

2.研究の視点および方法

 平成21年度8月から10月に相談援助実習を行う学生を対象に、作成した実習 プログラム及びプログラム・マニュアルを用いて実習を行う。実習期間中に、実習生を 対象に質問紙調査を行う。質問紙の内容は、新カリキュラムの「相談援助実習」に指定されて いる項目に沿って作成した。実施時期は、実習の前、中、後とする。アンケートは、添付1 を参照。調査対象件数が少数につき、単一事例研究デザインの手法を援用して、実習の 前、中、後の設問ごとの評価の時系列比較を実施する。

3.倫理的配慮

 調査の結果については、実習生ならびに実習担当教員、機関が特定されることのない ようにする。
 また、質問紙への記載内容により、実習評価が下がることはないことを事前に実習生に 説明し、同意書をもって書面で同意を得、同意が得られた実習生及び教育機関のみを本研究 の対象とする。

4.研 究 結 果

 1) 「利用者やその関係者、施設職員、地域住民ボランティア等との基本的なコミュニ ケーションや人との付き合い方などの円滑な人間形成について知る」、「利用者との援助関係を 形成することができる」、「利用者への権利擁護を行うことができる」は、全体に高い評価で 終了している。コミュニケーションは人間形成の基本となるもので実習内容の中核に位置 付けられており、評価が高いと捉えられる。利用者以外の対象が広く含まれている点が評価 に影響するものと考えられる。権利擁護については、かなり個別性もあるが、総じて高い 評価となっている。日々の支援に必要なものであり、それへの理解がどう進むか個別性が あると考えられる。
 2) 「利用者理解とその需要の把握」は、限られた計画進行の中にあってアセスメントを 実行するには関係形成の途にもあり、その難しさを示すものと考える。
 3) 「支援計画の作成」は、評価は高くなく、個別性がある。作成するスキルに加え、 実践が進行している途においての認識が必要となる。自己本位の思いこみ計画を試作する ことの危険性もある。事例については、課題選択にあたり見極めを必要とする。
 4) 「利用者の家族や親族、後見人と援助関係を形成すること、権利擁護をすることが できる」、「利用者と友人と援助関係を形成すること、権利擁護をすることができる」、 「利用者の家族や親族、後見人への支援(エンパワメントを含む)とその評価を知ることが できる」は、実習期間中に支援内容の記録や機会に恵まれない限り、体験的直接的に学ぶ 内容として保障することは困難である。
 以上のことから、支援計画、支援の対象者が利用者以外の家族や親族、後見人、友人と なる内容については、実習期間中あるいは実習終了後指導に教育的機関と連携したフォロー アップが必要と考えられる。
 また、先行研究にもあるように、実習前、実習中、実習後では、最初の評価が高くても 実習で様々な現実的な課題に直面する中で、評価は下がり、終了時に再び高まるパターンが 今回の調査結果においても確認された。いくつかの評価が下がったままのところは、現実の 課題の難しさに関わっているとも考えられる。
 本研究では、実習生の数に限界があり、データは少数にならざるを得ないことから、 単一事例研究デザインの手法を援用したが、本来このデザインは行動観察を前提としており、 今回のデータは時系列であっても主観的自己評価である。多くの実習教育に関わる研究に 共通するところであるが、このことが本研究の不備なところである。
 本研究最終年度となる本年度は、この6事例について同調査項目を使用した追跡調査を 実施し、同時に教育側の指導について把握し、今回のデータをベースラインとして、その 効果を測定し、実習プログラム等の改訂を行うこととしたい。

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