自由研究発表国際社会福祉3  Lee Seo Young

長期療養保護高齢者に対する権利擁護システムの比較研究

○ ソウルサイバー大学  Lee Seo Young
公州大学  Mo Seon Hee
忠清南道女性政策研究院  Choi Eun Hee
キーワード: 《長期療養保護高齢者》 《高齢者権利擁護》 《権利擁護システム》

1.研 究 目 的

韓国においては1998年国家人権委員会が発足された以来、政府レベルの国家人権政策基本計画樹立および関連法の改定 、関連指針などが整えられ、人権保護に関連する評価項目が施設評価制度に導入されるなど対策が講じられているが、この ような対応だけでは社会福祉サービス利用者の権利擁護は不十分である。すでに、先進国では社会福祉サービス利用者の権 利擁護のために福祉領域へオンブズマン制度を導入するなど、法的、制度的装置を整えているが、具体的な権利擁護実践方 法に対する議論は十分でなく、また地域社会水準での具体的な法案に対する研究も少ない。したがって、本研究では長期療 養を必要とする高齢者に対する権利擁護システムの整えるための基礎研究として、韓国、日本を含めた、他の先進国家にお ける中央政府と地方政府の地域社会水準で権利擁護策に対する比較研究を行うこととする。 

2.研究の視点および方法

本研究においては、韓国の地域社会水準で実践可能な長期療養保護高齢者の権利擁護方法を模索するために研究を進め る。まず、研究目的を達成するために、先行研究の検討を通じ理論的な側面で高齢者の人権および権利擁護の概念がどのよ うに定義されるのかを検討し、韓国と日本では、高齢者の権利擁護に関連する研究がどのように展開されてきたのかを検討 する。
 そして、長期療養保護を必要とする高齢者のための権利擁護システムが中央政府、地方政府のレベルではどのように構築 されているのかを文献研究通じレビューし、両国の権利擁護システムの特徴などを比較する。このような比較検討を通じ、 韓国で実践可能な権利擁護の具体的な方法も模索する。

3.倫理的配慮

本研究において実施した質問調査は研究対象者のプライバシーを侵害しないよう配慮した。

4.研 究 結 果

韓国でその間行われてきた高齢者権利擁護研究は主に、人権および福祉権の概念にかんする議論および中央政府で実施 する人権実態調査、これに関連する人権保護マニュアルの開発、老人福祉施設の運営に関するものと分けられる。韓国で は、2006年国家人権政策基本計画勧告案(2007~2011)を樹立するなど、国家の人権政策基本計画を樹立し、社会的弱者 と少数者の人権を保護するために努力し、高齢者の人権保障と虐待の防止、施設生活者の人権を保障できるよう方向を定 めた上、推進課題を提示している。
 特に、近年においては、社会福祉施設における人権侵害事例が頻繁に発生する中で、国家人権院会が中心となり、人権 講師を養成するためのテキスト開発、老人福祉施設を訪問し運営実態と人権侵害の程度を把握している。
 一方、地方自治団体のレベルではオンブズマン制度を導入するなど住民の苦情処理のための制度的な努力がおこなわれて いる。地方自治団体のレベルでオンブズマン制度を条例として制定した地域は4つで、6つの自治体ではオンブズ制度を訓 令として公布している。また、一部の地域では長期療養に関する苦情へ対応する努力を市民団体が中心になり運営する地 域もある。
 一方、日本で、高齢者人権と関連した研究は韓国より多様な領域に渡って展開されている。日本では介護保険制度の導入 により措置製度が社会保険方式に転換され、2000年には社会福祉事業法が前面的に社会福祉法に転換された。このような 流れの中で、福祉サービス利用者援助事業、福祉サービスの情報提供努力義務制度、サービスの質の確保、利用者の権利 擁護および苦情解決のための制度が整備されるようになった。このほか、北欧で発達したオンブズ制度が地方自治体の レベルで導入され施行されているが、まだ法制化には至っていない。しかし、オンブズ制度は一部の地域においては、 自治団体に設置されたり、事業所に設置されたり、施設に設置されたり多様な形で実施されている。
 一方、アメリカでは高齢者の権利擁護のため長期療養保護オンブズマン制度を運営している。アメリカの長期療養保護 オンブズマンプログラムは老人療養施設の発展とともに具体化され、1972年モデル事業を経て、1978年老人福祉法の改定 により法的根拠が整えられ制度化された。
 現在、連邦政府と州政府の法的な支援の下、すべての州で実施されているが、州政府の単位で運営されているが、州に よりプログラムが多様である。
 一方、北欧の国では長期療養を必要とする高齢者の権利擁護のため政府レベルでは療養サービスへの公平なアクセスを 保障し、施設利用高齢者にはよりよいサービスを提供できるよう、施設の保護業務基準を提示している。成果の測定、 モニタリング、規制などの業務を担当する行政機構を設置するなど規制者の役割を果たしている。これとともに、施設 サービス提供者たちが入所者の状態と施設に関する情報を定期的に提供させ、サービス機関間の競争強化を通じ、消費 者の選択を強化するなどの法案を導入している。
 実際、韓国と、日本、アメリカ、北欧の国での地域社会レベルの長期療養を必要とする高齢者の権利擁護の舞台的な取 り組みに関する比較結果は当日配布する。

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