自由研究発表国際社会福祉3  林 暁淵

韓国における住民参加福祉ネットワークに対する質的研究

○ SeJong Cyber University  林 暁淵 (会員番号4219)
三育大学校  金 英淑
三育大学校  李 根茂
キーワード: 《地域福祉》 《住民参加》 《ネットワーク》

1.研 究 目 的

最近社会福祉分野においては、住民参加福祉に対する関心が持続的に増加している。住民参加福祉は、"対案の対案" ともいえる。1980年代以西欧を中心とした福祉国家縮小現象が現れ、中央政府は財政圧迫の回避手段として福祉責任の相当部分を地方政府に転嫁した。また、地方政府は地域社会福祉館のような自発的な部門とネットワークを結成し、住民の福祉ニーズに対応してきた。このような地方政府及び公共機関と地域社会福祉館等のネットワーク接近が福祉国家 縮小による代1次的対案ともいえるだろう。しかし、民・官ネットワーク接近でも地域住民の生活の質を向上させるの には限界があった。相変わらず、制度的サービスの四角地代は残っており、地域社会の底辺にある潜在的資源は十分に可動されていない。民官ネットワークまたは制度的福祉供給機関(施設)間のネットワーク接近の方案策に浮上しているのが'地域社会住民参加福祉'ともいえる。
 住民参加福祉は地域社会で住民エンパワーメントを強化し、福祉サービス対象者の拡大と地域社会での正常性強化、 サービス効果性と行政の能率性の向上等の効果を通して地域社会の問題解決はもちろん地域共同体の連帯強化に寄与することができる(Berner and Phillips, 2005)。特に、韓国の場合、基礎自治団体での地域社会福祉計画樹立が法制化され、今までの下向式、専門家中心の福祉で脱皮し、住民の直接的参加と責務性を強調する地域住民参加福祉にパラダイムの移動により、その重要性が特に強調されているといえる(강대선∙류기형, 2007)。しかし、このようなパラダイムの移動にも関わらず、韓国の場合住民参加福祉に対する実証的研究は、地域社会凝集力と地域社会参加との関係を検討した研究以外には見当たらない。地域住民参加福祉の成功を左右するキーは地域社会住民の能動的参加ともいえる。したがって 、本研究においては、地域社会福祉機関と住民資源組織間のネットワーク活動経験を分析することとする。 

2.研究の視点および方法
  1) 研究参加者の選定

本研究には、3ヶ所の機関の社会福祉士7名と地域社会福祉運動家2名、地域社会住民17名が参加した。研究者は 、世評的事例選択 (reputational case selection, 世評的 事例選擇) で研究参加者を選定した。研究者たちは、地域社 会福祉ネットワーク活動家1人と保健福祉部で地域社会福祉を担当している事務官を通して、住民参加ネットワークが活 性化されていると評価された機関の紹介を受け、同意を得て研究現場に接近した。研究者たちは具体的な個別研究参加者 たちを選定するために、次のような選定基準を具案した。選定基準は、次のようである。まず、機関従事者の場合、社会 福祉士の資格を持っており、地域社会福祉実践経験が3年以上であること、次に、住民参加ネットワーク活動経験が1年以上であることであり、両者をすべて充足された9名を選定した。三つ目の地域社会住民の場合、住民参加ネットワーク活動経験が2年以上であること、四つ目、豊富で深資料を収集するために、多様な領域で活動している住民に決め、これらをすべて充足される17名を選定した。
 研究参加者の選定期間は、2009年10月1日から25日までであり、研究期間は2009年19月27日から11月20日までであった。
  2) 資料収集
 研究資料は、深層面談と文書記録収集を通して行われた。特に、社会福祉期間従事者たちと地域社会住民の相違な見方と 見解を把握するために交差インタビューを進行した。面談は、各機関別に地域社会機関従事者と地域社会住民を対象とし、 各2回フォカースグループインタビューを実施し、1回当り、所要時間は約90分であった。
 根拠理論方法を含む質的研究の資料収集原則は、充分性と飽和性である。このような脈絡で研究者たちは、深層面接が終 わった後でも疑問事項があったり、不足した事項は個別接触を通して資料を補足した。
 文書記録は、各ネットワーク事業で発刊する資料集、研究資料等であった。このような資料は研究者たちの理論的敏感性 を触発させるのに寄与し、資料分析時に研究者たちが提案した実態理論反証資料として活用された。資料収集は、2009年10 月27日から12月10日までであった。
  3) 資料分析
 資料分析は、Strauss and Corbin(1990)が提案した分析方法で遂行した。分析手続きは次のようである。まず、open cordingでは、元資料を分解し、行単位分析(line by line)で概念を構成し、概念群で互いに関係があったり、類似した 概念たちを結集させ、下位カテゴリを構成した。次に、exial cordingでは、Strauss and Corbinが提案したパラダイム 模型にしたがって、カテゴリを中心に再配列した。次に、selective cordingでは、各カテゴリを貫通する核心カテゴ リを抽出し、これを中心に研究主題である住民参加ネットワーク発達過程と力動性を説明しようとした。
 根拠理論の方法では、一般的に類型分析を遂行するが、本研究の場合、比較的少ない事例を集中分析しようとしたため 、類型分析は原則的に不可能であると判断され、類型分析は遂行していない。

3.倫理的配慮

質的研究は深層知識を探求しようとするため、この過程において個人の倫理的イシューが発生することもある。本研究 の場合、個人の私的な部分と情緒的に敏感な部分ではなかったが、通常的に発生できる倫理的問題を考慮することが必要で あった。研究者たちは次のような倫理的装置を設定し、研究を行った。まず、研究参加者の選定において自発性を尊重した。 研究参加者の所属機関長や住民の場合は社会福祉士や機関を通した研究参加への懐柔、研究趣旨及び目的を徹底に説明し、 自発的な参加を促し励ました。次に、研究参加者たちの私生活と秘密保障に万全をつとめた。さらに、研究参加者たちの人 的事項や地域に対する事項は英文イニシャルで処理した。

4.研 究 結 果

分析結果、OPEN CODINGでは、総133個の概念と32個の下位カテゴリ、13個のカテゴリを構成した。軸CODING では、 OPEN CODINGの結果をパラダイムにより整理した。因果的条件は、ニーズの質的向上、福祉諸費者主権意識の台頭、脱出 口の模索、脈絡的条件は、資源の危機社会福祉懐疑論、仲裁的条件は、社会福祉意識の成熟、共同体責任主義の拡散と 示された。戦略は、自生的組織の社会福祉資源化、福祉ホットライン構築、現場密着型サービス体系と示された。結果 は、プルプリ(草根)福祉、戦略的オーダメードサービス伝達体系と示された。選択CODINGで、核心カテゴリは社会福祉 環境を打開するため、下からの実践改革と構成した。 

パラダイム模型による再構成

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この研究は2009年 日本学術振興会科学費助成金(基礎研究:白沢政和(研究責任者)教授)の支援により研究されたものである。
1 世評的事例選択とは、特定分野の熟練家または経験の多い人を紹介者とし、研究参加者選定を依頼する方法である。

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