自由研究発表国際社会福祉3  宋 美瑛

障害老人の日常生活満足度に対する性別比較

○ 忠清南道女性政策開発院 社会福祉チーム  宋 美瑛
キーワード: 《障害老人》 《日常生活満足度》 《性別差》

1.研 究 目 的

先行研究の結果、障害老人の日常生活満足度に影響する要因の一つに性別がある。障害老人の生活満足度に対する 既存の研究の中で、障害老人の男性より障害老人の女性の生活満足度が低い(ソン・キウォル、1999; ホ・ジュンス、 2004)という研究結果と高い(Keith, 1979; チャ・ヨンウン、ソ・ビョンスク、 1996)という研究結果がある。しか し、日常生活満足度の多様な側面を比較していない限界がある。そのため、本研究では日常生活満足度を9つに区分 して調べてみた。つまり、障害老人の性別は家族関係、友人関係、居住地、健康状態への満足、一月の収入(または お小遣い)、余暇活動、現在の仕事、現在の結婚生活、日常生活に対する全般的な満足度の平均に差があるのか分析 した。従って、「障害老人の9つの次元の日常生活満足度は性別差があるのか」を第一の研究質問に設定した。
 一方、ホ・ジュンス(2004)では、老人の性別が日常生活満足度に影響することが分かった。つまり、男性と比較し て女性の生活満足度が高くなることが把握された。一方、シン・スンペ(2009)、 キム・ミオク(2003)、イ・ジュンソプ (2010)では障害者の性別が日常生活満足度に統計的に影響していないと分析された。このように年齢層は老人だが一 般の老人と障害老人の性別は生活満足度への影響に差があった。また障害老人の性別が日常生活満足度に影響してい ないという既存の研究結果に着目し、障害老人を男女別にそれぞれ区分して、人口社会学的及び日常生活に対する特 徴が日常生活満足度に与える影響に差があるのか実証的に検討した。従って、「障害老人の日常生活満足度に影響す る要因に性別差があるのか」を第2の研究質問に設定した。2つの研究質問に対する本研究結果は障害老人の多次元 的な日常生活満足度に性別差があることと、障害老人の日常生活満足度に与える影響要因が性別によって異なる可能 性があることを検討した結果を示すことができる。

2.研究の視点および方法

「第1次障害者雇用パネル調査(2008)」は障害者の生涯周期別の経済活動実態に関する基礎統計を取るため 2008年1月1日現在、満15歳~75歳の登録障害者(濟州島除外)を対象に障害者個人の経済活動の様態及び それに影響する個人的、環境的要因を把握した。調査募集団は2005年人口住宅総調査の活動制約者の名簿と邑・ 面・洞の登録障害者名簿を使用した。標本の大きさは5000人で、層化変数は15の市・道、15の障害類型、年齢 別層化(15歳~60歳、61歳~75歳の2つの階層)である。標本抽出方法は確率標本抽出法が活用されており、 調査方法は CAPI(Computer-assisted Personal Interviewing, パソコンを活用した個人面接調査)を活用した個人面接 調で実施された(韓国障害者雇用促進公団雇用開発院、 2009)。本研究の分析対象は満65歳以上の障害老人386人 である。
 分析単位は個人であり、収集された資料は統計プログラムであるSPSS(Statistical Package for Social Science)/ 12.0を利用して3つの分析を行った。第一に、障害老人の人口社会学的及び日常生活に対する一般的特性を調べるた め、頻度分析及び交差分析を行った。第2に、障害老人の性別によって9つの日常生活満足度の差異検定のため、独立 標本T検定を実施した。第3に、独立変数である障害老人の人口学的及び日常生活の特性が従属変数である日常生活満 足度に与える影響を把握するため、男性老人と女性老人のそれぞれのケースを選択して重回帰分析をした。

3.分析結果

障害老人の性別による日常生活満足度の平均差を調べるためt検定を実施した。分析の結果、性別によって「居住地」 、「健康」、「余暇活動」、「仕事」、「結婚生活」、「日常生活に対する全般的な満足」は統計的に有意味な平均差 があることが分かった。一方、「家族関係」、「友人関係」、「一月の収入(またはお小遣い)」は性別によって統計的 に有意な平均差がないことが分かった。従って、研究質問である「障害老人の9つの日常生活満足度は性別差があるのか」 は性別差があることが分かった。
 障害老人の日常生活満足度に影響する要因を通じて、性別に差があるのかを調べた。重回帰分析をする前に、正確な分析 のため3つの前提条件を確認した。第一に、独立変数及び従属変数間の相関程度である公差限界とVIF値で多重共線性を分 析した結果、公差限界が.3より大きく、VIFは3を下回っていたため、独立変数と従属変数が相互独立的と解釈できる。 第2に、線形関係かどうかを調べるため、正規分布をなしているのかヒストグラム、正規確立図表、散布図を確認した結 果、独立変数と従属変数は直線関係及び正規分布をなして回帰標準化予測値(散布図)が無作為に分散していた。第3に 、ケース別診断で標準残差を利用した理想点の検討で正規性問題を検討した際、標準化残差の絶対値が理想点の2.5か ら3以上の範囲近くで確認された。
 独立変数として人口社会学的特性である「年齢」、「教育水準」、「勤労所得」、「社会経済的地位」を、日常生活の 特性である「健康状態」、「慢性疾患」、「他人からの助け必要」、「助けてくれる人の有無」、「障害程度」をダミー 変数化して投入した。分析結果、障害老人の女性は年齢、教育水準:小学校卒、社会経済的地位:下層、健康状態:悪い 方、慢性疾患ある、他人からの助け必要、障害程度:重症が日常生活満足度に統計的に有意義な影響を与えることが明ら かになった。一方、障害老人の男性は教育水準:中卒、教育水準:高卒、社会経済的地位:下層、健康状態:悪い方、 慢性疾患ある、他人からの助け必要が日常生活満足度に統計的に有意義な影響を与えることが明らかになった。研究質問 である「日常生活満足度に影響する要因は性別差があるのか」を検証した結果、差があることが分かった。

4.研 究 結 果

本研究は第1次障害者雇用パネル調査(2008)を活用して満65歳以上の障害老人386人を分析するため2つの研究 質問を設定した。第1の研究質問は「障害老人の9つの日常生活満足度は性別差があるのか」である。
 つまり、障害老人の性別は家族関係、友人関係、居住地、健康状態の満足、一月の収入(またはお小遣い)、余暇活動 、現在の仕事、現在の結婚生活、日常生活に対する全般的な満足度の平均差があるのか分析した。分析結果、障害老人の 9つの次元の日常生活満足度の中で、6つの次元に性別差があることが分かった。つまり、性別によって「居住地」、 「健康」、「余暇活動」、「仕事」、「結婚生活」、「日常生活に対する全般的な満足」は統計的に有意味な平均差が あることが分かった。
 第2の研究質問は「障害老人の日常生活満足度に影響する要因に性別差があるのか」である。つまり、障害老人の男女 をそれぞれ区分して、人口社会学的及び日常生活に対する特徴が日常生活満足度に与える影響に差があるのかどうか実証 的に検証した。比較分析の結果、障害老人の女性と障害老人の男性は、日常生活満足度の影響要因に差があることが明ら かになった。つまり、障害老人の女性は年齢、教育水準:小学校卒、社会経済的地位:下層、健康状態:悪い方、慢性疾 患ある、他人からの助け必要、障害程度:重症が日常生活満足度に統計的に有意義な影響を及ぼすことが分かった。一方 、障害老人の男性は教育水準:中卒、教育水準:高卒、社会経済的地位:下層、健康状態:悪い方、慢性疾患ある、他人 の助け必要が日常生活満足度に統計的に有意義な影響を与えることが明らかになった。
 障害老人の男性と障害老人の女性の「社会経済的地位:下層」、「健康状態:悪い方」、「慢性疾患ある」、「他人の 助け必要」は共通して日常生活満足度に影響する要因であることが明らかになった。しかし、障害老人の女性は障害老人 の男性とは違って「年齢」、「教育水準:小学校卒」、「障害程度:重症」が日常生活満足度に影響する要因に分析され た。また、障害老人の男性は障害老人の女性とは違って「教育水準:中卒」、「教育水準:高卒」が日常生活満足度に影 響する要因に分析された。
 さらに具体的に障害老人の日常生活満足度に影響する性別差を共通影響要因と差別影響要因に区分して説明した。まず、 共通影響要因となった「社会経済的地位:下層」、「健康状態:悪い方」、「慢性疾患ある」、「他人からの助け必要」 を調べた。障害老人の男性と障害老人の女性は社会経済的地位が上層より下層に属すると考えるほど、日常生活満足度 (β=-.136, β=-.142)が低い。 また、現在の健康状態をよい方だと評価するより、悪い方だと考えるほど日常生活満足 度(β=-.144, β=-.339)が低いと解釈できる。障害以外に慢性疾患がない老人より、ある老人の方が日常生活満足度 (β=.146, β=.112)が高いことが分かった。日常生活に他人からの助けが必要ないと考えることより、助けが必要だと 考える老人であるほど日常生活満足度 (β=-.183, β=-.183)が低いことが明らかになった。
 第2に、日常生活満足度に対する障害老人の女性と障害老人の男性の差別影響要因を解釈した。障害老人の女性は年齢 が高くなるほど日常生活満足度(β=-.207)が低いことが分かった。そして教育水準が無学より小学校卒である場合、日常 生活満足度(β=.131)が高いことが明らかになった。障害程度は軽症より重症である場合、日常生活満足度(β=-.176)が 低いと分析された。一方、障害老人の男性は教育水準が無学より中学校(β=.181)と高校(β=.259)を卒業した場合、日常 生活満足度が高かった。

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