身体障害者の外食における阻害要因に関する研究(2)
-外食時における人的資源確保の視点から-
○ 聖カタリナ大学 恒吉 和徳 (会員番号5022)
聖カタリナ大学 岩満 賢次 (会員番号4745)
聖カタリナ大学 下田 正 (会員番号1279)
キーワード: 《外食の制限》 《介助者》 《ボランティア》
生活の基本である「衣・食・住」のニーズ充足は特に障害者にとってはノーマライ
ゼーションの実現に向け必要不可欠である。しかし、「食」のニーズに対する対応については
他と比較すると後発的であるように感じられる。特に「食生活」の充実を図る上では外食の
機会の確保も重要な視点であると考えられるが、身体障害者は、施設生活、在宅生活の
いずれにしろ、外出する機会には多大な制限が設けられ、外食の機会の確保が困難な状況が
窺われる。
そこで本研究では、障害者を対象に聞き取り調査を実施し、障害者の外食の実態及び
外食を阻害する要因を明らかにすることを目的とする。この障害者の外出の阻害要因を
取り除くことが食事のユニバーサルデザイン化につながり、ノーマライゼーションの実現化
につながると考えている。なお、本研究では、障害者の中でも身体障害者を対象としている。
本研究では、まず予備的調査として施設職員による聞き取り調査を行った。また、
障害者施設で生活する利用者5名の外食に同行し、外食の妨げとなる要因について、外出先
の選定から外食時、帰宅までを時系列的にまとめた。その後、A県内の中エリア※に所在する
障害者支援施設(身体障害者療護施設を含む)及び通所事業所のサービス利用者それぞれ
120名(計240名)を対象に聞き取り調査を行った。有効回答は、217名であり、90.4%で
あった(施設入所者116名、通所事業所利用者101名)。 本報告においては約50の質問
項目の中から「在宅障害者と施設入所者との差異」、「施設の所在する地理的環境の影響」
「移動・介助者(同行者)の必要性・確保」の3つに関連する項目を抽出し、それらから
外食の機会を確保するうえで介助者(同行者)の確保の重要性を導き、いかなる人的資源
の活用が可能か考察することをねらいとしている。
※A県は、行政区域として、東・中・南と別れており、生活スタイルが大きく異なるため、
中エリアに限定した。
本研究においては、利用者のプライバシーに触れる質問も多いことから、プライバシー の保護については細心の注意を払った。具体的には、調査には必ず事業所長及び本人の了承 を得ること、調査用紙と個人とが結びつかないよう個人名等を記載しないこと、また聞き取り 調査で知り得た情報を漏らさないようアルバイトにも徹底させること、調査結果は大学の 研究室に置いて鍵のついたロッカーに保管すること、電子メール等でのやり取りは禁止する こと、により調査対象者のプライバシー保護に努めた。
4.研 究 結 果 本研究の結果、主に以下のような傾向が確認された(詳細なデータについては報告時
に委ねる)。
①在宅の障害者に比べ、施設入所者のほうが外食の頻度が低い傾向にある。
②外食の際に公共交通機関の利用にも制限があったり、外食先のバリアフリー化が不十分
なため一人での外食には困難が多い状況にある。
③在宅の障害者に比べ、施設入所者のほうが外食の際に介助者(同行者)を必要とする
傾向が強い。
④在宅障害者においては外食の際に家族、友人を同行者とする割合は低く、デイサービス
の活用が多い。
④施設入所者でも施設の立地条件が外食の頻度に影響を及ぼしている傾向が窺える。
⑤施設入所者は外食の際に介助者(同行者)として施設職員に依存する傾向が強い。
⑥施設入所者においては、職員の勤務時間や人数の関係で外食をあきらめざるをえなかった
経験を持つ者が約25%であった。
⑦施設入所者のほうが外食に対する満足度が低い傾向にある。
上記のような結果から、障害者の外食の機会の保障においては、介助者(同行者)の確保
が重要な課題であることが導きだされる。特に施設入所者においては施設職員の同行には
制約があるため、施設職員以外の介助者をいかに確保していくかが検討課題となる。また、
在宅障害者についても、家族以外の介助者の確保も必要が感じられる。一方、調査上では
ボランティアの活用が消極的であるという結果が出ている。
今後障害者の食のバリアフリー化を目指した外食の機会の確保においては、地域住民
による支えあいが可能となる土壌の形成と、外出ボランティアの養成並びに施設とボランティア
センターとの連携システムの構築によるボランティアの積極的活用を推進していく取り組み
が必要となる。
なお、本研究は平成21年度みずほ福祉助成財団社会福祉助成金(代表研究者:下田正)
の研究の一部である。