集合住宅における住民の多世代関係のつながり
サロン活動の事例をもとに
○ 日本福祉大学 茂 大祐 (会員番号6694)
キーワード: 《地域福祉》 《サロン活動》 《多世代交流》
A集合住宅は、住民に対するサロン活動を開催している。開催するきっかけとなった
こととして、高齢化による閉じこもりの防止や高齢者同士の関係構築が基本にあり、高齢者
の方を主体として進めている。軽体操、折り紙、花壇づくりなど、様々な活動を中心に
行われ、参加者からも充実した時間を過ごせたという回答をもらっている。また、保健所
など外部の機関からの援助もいただきながら、活動を実施している。これらの活動が、
地域に対しても参考事例としてよい影響をあたえ始めている。
これらの活動を行う中で、今までは高齢者の方中心のものであった。しかし、そのほか
の住民の方に対する支援が行われていなかったことも事実である。実際に世帯比率として
は、5割強は65歳以上の高齢者ではあるが、残りの世帯は、様々な年齢層の方が住まれて
いる。中には、若い世代も住んでいる。その状況から、世代の枠を超えたかかわりという
ことも重要であると言える。
そこで、サロン活動などの取り組みについて、様々な年代の方が活動できる方法を模索
する必要がある。
これまで、高齢者対象サロン活動が行われてきた。そこで、かかわりを充実させて
いくためには、多くの世代との交流について考えていくことが必要である。本研究では、
住民同士における活動について、高齢者のみではなく多世代交流というところにも視点を
向けて実践を試みるものである。
これまでのサロン活動の中で行われている実践ではなく、子どもでも楽しめる催し物を
考え、活動する。そこに、日ごろサロン活動に参加されている高齢者の方々と交流して
いただく形で進める。対象は、幼児から小学生くらいまでの方を対象とし、保護者の方も
参加いただくものである。開催場所については、高齢者のサロン活動と変らず、集合住宅
内の集会所を活用する。
調査方法として、サロン活動を中心に動かしている自治会の方に対して、インタビュー
を中心に行っていきたいと考えている。また、参加されている子どもたちや保護者、高齢者
の方には、参加しての感想を元に調査を進めていく。
本研究について、調査対象となる集合住宅の自治会に承諾、許可を得ている。また、 個人情報等に関しては、十分に配慮を行っている。
4.研 究 結 果 これまで行われている活動として、3つの活動が行われている。1つは、クリスマス会
が行われている。集合住宅に住まれている子どもたちや保護者の方々の参加を中心に、高齢者
の方々との関わりを持ちながら、様々な交流活動が実施されている。2つ目は、戦争のお話し
についてである。これは小学生を対象に、戦争時や戦後の話などを小学生に対し行い、当時
の状況などを伝え、小学生にとっては新たな学びとし、高齢者の方にとっては伝承という
意味でも大切な時間であると言える。3つ目は、デイキャンプである。小学生を中心に行われて
おり、日ごろなかなかすることのないキャンプ活動を、サロン活動の高齢者の方を通じで、
色々な事を教えてもらいながら交流活動を行っている。
これらの交流活動の調査を進めた結果として、次のような結果が明らかになった。サロン
活動を中心に進めておられる高齢者のからの声として、「子どもたちとお話しする機会が
できて楽しかった」などいただく事ができた。また、子どもたちの感想にも「楽しかった」
という内容の声が出ている。このことから、世代間の交流については、少しずつではあるが
着実に進んでいるように考えている。
これらの研究を通じて、次の2点の事について課題として考えている。1点目として、
世代間交流を「継続」する必要がある。実践活動を通じて、世代間交流による活動を今後も
「継続的」に進めていく必要性がある。現状は季節的な催しものということもあり、単発的
なものなので、定着していくにくいと考える。そのために、定期的に催しものを行うなど
して、いつ行われるなどを明確にし、開催していく必要がある。2点目として、今まで
かかわりのなかった方に対しても周知することである。これまで高齢者中心でもあったこと
から、なかなか関わりにくいという話もいまだにあることから、子どもたちの参加をきっかけ
に、その保護者の方からかかわってもらい、そして輪を広げてもらうという形で、サロン
活動や交流活動について興味を持ってもらえる様に進めていきたい。
これらの研究を元に、今後の活動により生かしてきたいと考えている。