大会特別講演『生活保障の再構築 -排除しない社会へのビジョン-』
第1日目 10月10日(土)10:50~12:00
講演者 宮本 太郎 氏
(北海道大学大学院法学研究科)
1958年 | 東京都に生まれる |
1988年 | 中央大学大学院法学研究科 博士後期課程単位取得退学 立命館大学法学部助教授、 ストックホルム大学客員研究員、 立命館大学政策科学部教授などを経て、 |
現在、 | 北海道大学大学院法学研究科教授 (比較政治、福祉政策論専攻)、博士(政治学) |
著作: | 『福祉国家という戦略-スウェーデンモデルの政治経済学』(法律文化社、1999年)、 『福祉国家再編の政治』(講座・福祉国家のゆくえ第一巻)(編著、ミネルヴァ書房、2002年)、 『比較福祉政治-制度転換のアクターと戦略』(比較政治叢書2)(編著、早稲田大学出版部、2006年)、『福祉政治-日本の生活保障とデモクラシー』(有斐閣、2008年)など。 |
訳書: | G.エスピアン・アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界-比較福祉国家の理論と動態』(共監訳、ミネルヴァ書房、2001年) |
経済危機とこれまでの日本型生活保障の機能不全があいまって、不安や貧困が広がっている。にもかかわらず、制度と政策の刷新に向けたビジョンは現れていない。なぜ硬直した事態が続くのか。ここでは、まず政治学的な視点から、高度成長期以降の日本の生活保障の仕組みとその展開をふりかえる。
日本型生活保障は、社会保障よりも雇用保障に力点をおいた「仕切られた生活保障」であった。雇用保障をめぐっては、公共事業など政治的な利益誘導が大きな役割を果たし、生活保障のあり方や原理をめぐる公共の論議は広がらず、その理念は曖昧なままであった。
今、人々は安定した生活保障を求めつつも、行政や政治など、公共空間に信頼を寄せることができないという大きなジレンマのなかにある。生活保障の再構築はいかにして可能か。ライフ・ポリティクスともいうべき、新しいニーズや争点の広がりや、社会的企業などの新しいアクターの出現にも留意しつつ、展望を探っていく。
「 当日報告要旨 」 -NEW-