特定課題セッションセッションⅢ: 地域・『当事者』が参加・参画する社会福祉専門教育  川島 ゆり子

コミュニティ型社会福祉現場実習における価値・知識の創造と蓄積の可能性

○ 花園大学  川島 ゆり子 (会員番号5921)
関西学院大学  高杉  公人 (会員番号5504)
関西学院大学  川本 健太郎 (会員番号6891)
キーワード: 《社会福祉現場実習》 《大学地域連携》 《住民参画》

1.研 究 目 的

関西学院大学は、社会福祉現場実習としてA県B市において「コミュニティ型現場実習」を2006年度から2008年度まで 3年間継続して行ってきた。本実習の特徴として以下の4点をあげることができる。
   1)社会福祉関係の学部を擁する大学と地域の連携を目指すものであること。
   2)単年度で終結するものではなく、複数年の継続効果を検証するものであること。
   3)多様な主体(住民、社協ワーカー、学生)によるコミュニティワーク実践であること。
   4)地域密着型の実習であること。
  従来の社会福祉協議会においての社会福祉現場実習は、主として社会福祉士国家試験受験に必要な単位としての現場 実習という目的に基づいて、実践現場の協力をもとに構成され、社会福祉協議会が行う、あるいは関係する事業や実践現場 を順次回り、経験するという「経験型実習」が主なモデルであった。
  関西学院大学が、3年間にわたり実施してきたコミュニティ型現場実習は、社会福祉協議会がもつ事業型社協としての 側面よりは、地域組織化というコミュニティワークに焦点化し、住民主体による地域づくりに学生がアクションリサーチの 手法を用いながら実習を行ってきたという点で独自性をみることができる。その3年間の蓄積は、単に実習としての教育的 成果にとどまらず、地域における住民の意識、あるいは具体的なプログラムの展開にインパクトを与えるコミュニティワーク としての実践として評価し得るるものとなった。
  本研究ではそうした地域における実践の蓄積、知識の蓄積を検証し、また学生にとっての専門職養成としての成果を 検証することにより、社会福祉協議会・地域・大学の協働の可能性について、コミュニティ型現場実習を通して提起して いくことを目的としている。

2.研究の視点および方法

 本研究では、3年間にわたる現場実習の蓄積のインパクトを検証するために、社会福祉協議会コミュニティワーカー (実習担当スーパーバイザー)・地域住民(実習生受け入れ地区住民)・実習生の3者に対してインタビュー調査を行い、 調査対象者のトライアンギュレーションにより成果を多角的に描くことを目指すものとする。また、コミュニティへの インパクトが顕著化するには時間が必要であることから、研究成果を集約化していく作業の中で3年間という時間軸に よるストーリー構成を重視することとした。

3.倫理的配慮

 インタビュー対象者には、本研究の研究趣旨を説明し調査への協力を依頼した。調査に際して知りえた内容について は個人が特定されないよう匿名として記載すること、また組織名、団体名に関しても具体的なイニシャル表示ではなく、 特定できないような記号化の配慮をすることを約束した。また、インタビューノートを作成した後で、一度インタビュー 対象者自身に確認を依頼し、削除すべき内容がある場合は指示通りに削除する旨を伝えた。面接はインタビュイーの所属 事業所または指定された場所に訪問し、面接室等、他者に内容が伝わらない環境において実施された。

4.研 究 結 果

 コミュニティ型実習1年目は、4つの地区に学生が配属された。当初、実習生自身はもとより、受け入れ先である地域 および社会福祉協議会コミュニティワーカーもどのように学生に対処すべきか試行錯誤を繰り返す「とまどい」の時期が 続いた。しかし、学生が「外部者」という立場でフィールドに入り込み、新鮮な視点で地域へのアセスメントを行う姿が、 地域住民にとって「外部からの風」という形で刺激となっていった。1年目後半は、アクションリサーチの手法をとり、 住民・学生・社協ワーカーが協働して、地域調査を実施する。調査の組み立てを3者が協働して行うことにより、地域住民 自らが地域を知ろうとする行動のきっかけとなり、学生へのスーパーバイズを住民自身が担っていくという力動が生まれる。 また、コミュニティワーカーが日常の業務の中では実施しえないような地域に入り込んでいく調査を、学生という援助者を 得て実施可能にするという戦略的なコミュニティワークが生起した。大学側も調査のスーパーバイズ機能を果たし、地域と 大学の連携が具現化していった。
  2年目は1年目の調査を分析し、地域にとってその結果の意味を考察しながらプログラムを具体的に設計していく作業に 進んでいく。同一地域に継続して、同じ大学の実習生が入っていくということにより、地域住民側の受け入れ態勢に、1年 目に生起した「とまどい」が軽減され、学生を「育てよう」という意識が醸成されていく。また、実際にプログラムが動き 出す地域も出始め、具体的な実践の成果を確認することが出来た。
  3年目はプログラムの推進や具体的なイベントの実施、冊子作成等、具体的な成果がコミュニティの中で検証され、また それらを実習生が地域に向かって報告会という形で発信することにより3者協働の継続意識が培われていくということが検証 された。
  研究結果をまとめた概念図および、詳細なデータは、学会当日に資料として配布することとする。

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