特定課題セッションセッションⅠ: ソーシャルワーク実践としての権利擁護  篠本 耕二

主題:地域における「保証機能」の新たな展開
-副題: 障害者家族会による保証機能の補填を模索する-

NPO法人笛吹市障がい者を支える会  篠本 耕二 (会員番号7414)
キーワード: 《法人後見》 《親なき後》 《身元保証》

1.研 究 目 的

わが国の成年後見制度では、成年後見人等は①責任範囲が明確でない責任は負うべきではないこと、②将来の損害賠償 等の責任を回避するために、その原因となる可能性のある施設やサービスの利用を成年被後見人等に制限する可能性がある こと、③仮に成年後見人等が身元保証人・引受人としての責任上賠償義務に応じた場合、最終的には成年被後見人等に対する 求償権を有することになり、明らかに利益相反の関係になること、④施設退所や退院の場合、身元保証人・引受人となった 成年後見人等が成年被後見人を自宅に引き取らざるを得ない状況が生じる可能性も否定できないこと(=第三者である成年 後見人等としての責務を超えるものである)との理由から、身元保証人・身元引受人にはなれないこととされており、日常 生活自立支援事業(旧地域福祉権利擁護事業)の生活支援専門員も同様の解釈がなされている。
  福祉・医療契約等において慣習上求められる身元保証及び身元引受の内容「病気となった、死亡したら身元を引き取る、 治療方針へ同意など」を補完・代替する手段、さらには障害者本人(身元)の意思の「忖度」者として、障害者家族会による 法人後見という新たな実践活動が最適と考えられ、そのために家族機能及び家族会の機能と活動内容、本人と家族の意思 との差異、さらに障害者たちにとって「親なき後の課題」を調査・考察しながら、家族会による法人後見活動の実現と家族会 を取り巻く支援ネットワークの構築(客観性の担保と当事者ニーズの実現への配慮、リスクの分散)という手法で実証していく ことを研究の目的とする。

2.研究の視点および方法
① 障害者家族会及び支援者による成年後見活動、福祉契約研究に関する先行研究を概観(レビュー)し、関連する実践 活動をしている団体の活動をヒアリングする。
② 笛吹市の家族会の会員をはじめ山梨県内の障害者家族会に対し、平成18年度に(社副)全日本手をつなぐ育成会(以下、 「育成会」という)が「知的障害者の権利擁護システム研究事業」で実施したアンケート調査と同様の内容(障害福祉サービス 事業の内容を障害者自立支援法の内容に変更)のアンケートを実施し、育成会の結果との対比を行う。
  ※倫理的配慮:日本社会福祉学会研究倫理指針を踏襲
③ 障害者家族会をNPO法人化に関する支援、法人後見活動を実施の支援を行い、受任したいくつかの事例を参与観察していく。
④ 調査結果と参与観察した結果を基に、社協・行政(特に障害者地域自立支援協議会)と協働し、医療・法律・福祉の支援 ネットワークを構築していきながら、「親なき後の課題」の解決方法、特に身上に関する項目に関する解決手段を検討・ 開発する。(制度・サービスとネットワーク=法と援助技術による課題解決システムの構築)

3.倫理的配慮

日本社会福祉学会研究倫理指針を踏襲。具体的には、笛吹市家族会とともに実施したアンケート調査について、その目的 、対象者、内容、守秘義務について明記し実施した。

4.研 究 結 果

2008年5/20総会に於いて、第1回の質問紙による集合調査を実施、2008年12/9笛吹市障害児者家族会総会に於いて、 第2回の質問紙(「育成会」が実施した内容と同内容)による調査を実施し、NPO法人化の決議、1/14には山梨県に認可申請書を 提出し、2009年3/25認可、同3/27登記が完了した。社員には、第三者的関与(権利の対立防止、客観性)の為に、山梨県弁護士会 、司法書士会、社会福祉士会、市民が参加している
  家族会の会員(77名)に対し、3年前に全日本手をつなぐ育成会が実施した全国調査と同様のアンケートを実施しその結果を 比較したところ、育成会が実施して得た結果とほぼ同様(全国平均より若い集団=平均10歳程度若い)の課題を抱えていることが 分かった。(回収31名/77名・40.3%)
  現在、後見受任の準備に向けて支援中であり、複数受任の案件を参与観察し、その中から得られたデータと対応方法をまと めることを今後の継続研究としていきたい。

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