スクールソーシャルワーカー活用事業の課題と展望(1)
─教育委員会との関わりを中心に─
目白大学 大崎 広行 (会員番号1764)
キーワード: 《スクールソーシャルワーク》 《スクールソーシャルワーカー活用事業》 《教育委員会》
スクールソーシャルワーカー活用事業(以下、SSW活用事業)は、平成20年度より都道府県および区市町村への
「委託事業」としてスタートし、平成21年度からは「補助事業」として進められている。本事業の実施自
治体の多くは、今回の「委託事業」から「補助事業」への移行に際して、予算措置の段階で存続か撤退か
の判断を迫られ、本事業から撤退した自治体も見られる。また、本事業に関わる国の予算は、スクールカウンセラー
活用事業(以下、SC活用事業)の予算と同じ枠の中に入れられることとなったため、今回の「補助事業」
への移行によって、SSWとSCの配置は各教育委員会の裁量で自由に配分できるようになった。
本研究では、本事業の継続に影響を及ぼす要因として、教育委員会と事業運営担当者(指導主事)から
の要因を取り上げ、3つの自治体(G県、G県T市、G県A市)のSSW活用事業の展開事例を通して、
本活用事業の今後のあり方について検討していく。
本研究では、本事業の継続に影響を及ぼす要因として、教育委員会と事業運営担当者(指導主事)から
の要因を取り上げ、3つの自治体(G県、G県T市、G県A市)のSSW活用事業の展開事例を通して、本活
用事業の今後のあり方について検討していく。
昨年のSSW活用事業の導入にともない、全国各地でSSWの研修会が開催されてきている。本事業の
担い手となるSSWの専門性の平準化と向上は急務である。しかし、今年度、全国各地で起きているSSWの
雇用契約の打ち切りは、教育行財政レベルでの問題として対応して行かなくてはならない喫緊の問題である。
スクールカウンセラー制度との関わりも含め、SSW活用事業を制度として存続・定着させていくためには、教育委員会
や事業運営の担い手としての指導主事の実態を明らかにした上で、種々の課題を抽出し検討していく必要がある。
本研究では、報告者がこれまで直接および間接的に関わってきた教育委員会が、本事業の「委託事業」
から「補助事業」への移行にともない、どのような判断をしてどのような選択をしたのか、そのプロセスを通
して教育委員会組織や事業運営の課題を明らかにしていく。
分析のための資料収集は、主に報告者がこれまで中心的に関わってきた3自治体の教育委員会(G県教育
委員会、G県T市教育委員会、G県A市教育委員会)を中心に、事業関連資料の提供および事業担当者(指導
主事)と当該自治体のSSWからの聞き取り調査によって行われた。
本研究においては、当該自治体からの資料提供および聞き取り調査を行う際に、本調査の趣旨を説明し、 結果については自治体名をイニシャルで表示することで、本研究のために提供資料等を活用することの承諾 を得ている。
4.研 究 結 果 調査の結果、明らかになったことは以下の点である。
(1)本事業における教育委員会の役割
本事業における教育委員会の役割について、G県を例に都道府県レベルと市区町村レベルで分けて検討し
た結果、下記の点が明らかとなった。
①国と市町村のパイプ役(県)
②実践レベル、サービスの平準化(県)
③SSW雇用条件
④広域課題の提供(県)
⑤SSWのバックアップ(県・市町村)
⑥市町村教委のバックアップ(県)
⑦学校のバックアップ(市町村)
(2)事業継続に影響を及ぼす要因
G県および他県における本事業の継続決定のプロセスを分析した結果、本事業の継続に影響を及ぼしたと
考えられる要因としては、下記の点が挙げられた
①情報伝達のバイアス
②担当者の意欲題
③業務量
④担当者の異動
⑤担当者の職務上の意識
⑥財政問題
⑦「補助事業」の誤解・理解不足
(3)SSW活用事業の存続・定着に向けて
上記の要因を超えて、本事業を存続・定着させていくためには、都道府県教育委員会の役割や機能を見直す
以外に、外部からの変革として以下のものを活用していく必要がある。
①リーダーシップミ
②システム)
③政治力
④マスコミ
⑤パッション(情熱)
⑥民意