自由研究発表方法・技術2  小榮住 まゆ子

高度専門職に求められるソーシャルワークの固有性 Ⅰ
-独立型社会福祉士と隣接専門職の開業状況についての比較考察-

○ 同朋大学  小榮住 まゆ子 (会員番号6307)
関西福祉科学大学  太田 義弘 (会員番号0010)
同朋大学  安井 理夫 (会員番号4944)
高知女子大学  西内 章 (会員番号3704)
広島国際大学  長澤 真由子 (会員番号4935)
別府大学短大部  伊藤 佳代子 (会員番号5334)
キーワード: 《独立型社会福祉士》 《ジェネラル・ソーシャルワーク》 《高度専門職》

1.研 究 目 的

社会福祉ニーズが複雑・多様化するなかで、高度な専門性をソーシャワーク実践は求められている。それは専門社会 福祉士制度についての検討が参議院で附帯決議(2007)されたことから、高度専門職の人材育成と配置が必至になって きている。
  このような背景から、「独立型社会福祉士」に大きな期待がよせられている。独立型社会福祉士は、「地域 を基盤として独立した立場でソーシャルワークを実践する者」と定義され、「独立型社会福祉士事務所」は、 地域に密着したソーシャルワーク実践を展開する新たな活動形態の拠点と考えられている。契約した利用者に対し、倫理 綱領を遵守した高度な専門性を発揮し、徹底した生活支援を展開するとともに、対価として報酬を得て利用者の権利擁護 、利益の保全や課題の解決から自己実現を可能にする高度専門職と考えられる。
  しかし、独立型社会福祉士に関する先行研究(日本社会福祉士会2002 ; 伊藤2005 ; 高良2007,2008 ; 小川2007,2008) では、独立開業する社会福祉士事務所の問題点として、自由裁量権への過度な責任性、契約と報酬のアンバランス、各種社 会福祉法・制度に規定された対象者や業務範囲内における実践への偏向等が挙げられており、あるべきソーシャルワーク 実践ができない現状が示されている。ソーシャルワークの専門性を発揮した実践が実働できない仕組み、利用者の対価 と期待に応えられていない現実、まさに独立開業という高度な専門職に求められるソーシャルワークの固有性が見失われ ている深刻な状況がある。
  そこで本報告では、独立型社会福祉士のソーシャルワーク実践の展開への課題考察を目的に、弁護士、臨床心理士、 社会福祉士の開業状況に焦点化して、専門性や固有性、資格条件、業務内容などについて比較検討してみたい。そして、 専門社会福祉士としての高度なソーシャルワーク実践と独立開業の要件や課題への布石を考察してみたい

2.研究の視点および方法

研究の視点は、実践の共通基礎としての「ジェネリック・ソーシャルワーク」や、領域や職能に特化した「スペシフ ィック・ソーシャルワーク」を見据えた視野や発想に専門性と固有性を見出す「ジェネラル・ソーシャルワーク」に依拠 した方法の展開である。
  研究の方法は、弁護士、臨床心理士、社会福祉士の独立開業事務所各10~15件を対象に、①資格、②初回、2回目 以降の相談料金、③主な業務内容、④業務内容の詳細などに焦点をあて、比較考察を行ったものである。

3.倫理的配慮

 日本社会福祉学会研究倫理指針にしたがい、各事務所が特定できないよう記号化し比較考察した配慮をしている。

4.研 究 結 果

独立型社会福祉士の意義は、生活支援サービスの「独立性・中立性」を重視し、高度な専門性を生かした利用者主体の ソーシャルワーク実践にある。スペシフィックな法体系と制度ありきの実践に偏向する現状から、社会福祉行政手続きの 担い手と化す独立開業の現実を、隣接専門職業領域と比較考察しながら、専門社会福祉士の固有性や専門性について考察 している。そして高度専門職業としての資格制度や教育課程、社会的声価を高揚する営みをソーシャルワーク実践の内部 から発信していかねばならない。そのためにソーシャルワークの専門性や固有性を、スペシフィックなソーシャルワーク に求めるだけではなく、ジェネラル・ソーシャルワークの視野や発想から再構築する必要があると考えている。

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