ソーシャルワーク実践の理論・技術の発展
-北米のソーシャルワーク文献研究-
東海大学 北島 英治 (会員番号2123)
キーワード: 《ソーシャルワーク》 《理論》 《技術》
ソーシャルワーク実践の方法、理論、モデルの発展と、その基礎理論と技術について、考察を深めるこ とが、本研究の目的である。
2.研究の視点および方法研究方法は、北米に置いて蓄積されてきたソーシャルワーク実践に関する原著、論文を検索し、考察した 文献研究法である。ソーシャルワークの専門性が発展した1900年代からの現在までのソーシャルワーク 実践に関する基本的な文献を特定し、その文献におけるソーシャルワーク実践理論と技術に関して焦点化し、 その考察を行った。
3.倫理的配慮倫理的配慮として、本研究は文献に基づく研究であり、原著や原論文に忠実であることに努め、その引用 と参考の仕方に留意した。
4.研 究 結 果 基本的文献研究により、ソーシャルワーク発展の過程を大きく3つの時期に分けて考察を行った。
1)1900年~1970年(ソーシャルワークの3つの方法の確立):「社会診断」が出版された1900年の
初頭からソーシャル・ケース・ワーク、ソーシャル・グループワーク、コミュニティ・オーガニゼッションの
3つの方法が確立した。その後、ソーシャルワーク・アクション、ソーシャルワーク・リサーチ等が加えられた。
各種の方法は、それぞれの専門性、専門家として特化し、ソーシャルワークが一つの専門性、専門家であること
が失われ、別々の専門性、専門家へと乖離する傾向が起きた時期である。
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(1910 - 1970)[Social Casework, Groupwork, Community Organization]
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M. E. Richmond (1917). Social Diagnosis.
M. E. Richmond (1922). What Is Social Case Work?
V. P. Robinson (1934). A Changing Psychology in Social Case Work..
H. H. Aptekar (1941). Basic Concepts in Social Casework.
H. H. Perlman (1957). Social Casework: A Problem-Solving Process.
F. P. Biestek (1957). The Casework Relationship.
H. J. Parad (Ed.)(1958). Ego Psychology and Dynamic Casework.
G. Konopka (1963). Social Group Work: A Helping Process.
F. Hollis (1964). Casework: A Psychosocial Therapy.
R. W. Roberts & R. H. Nee (Edited) (1970). Theories of Social Casework.
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(1970 - 1980)[Social Work Practice]
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C. H. Meyer (1970). Social Work Practice: A Response to the Urban Crisis.
H. M. Bartlett (1970). The Common Base of Social Work Practice.
H. Goldstein (1973). Social Work Practice: A Unitary approach..
A. Pincus & A. Minahan (1973). Social Work Practice: Model and Method.
F. J. Turner (Edited) (1974). Social Work Treatment.
B. R. Compton & B. Galaway (1975). Social Work Process.
M. Siporin (1975). Introduction to Social Work.
C. Germain & A. Gitterman (1980). The Life Model of Social Work Practice.
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3)1980年~2000年(ジェネリック・ソーシャルワーク実践の発展):ジェネリックあるい はジェネラリストとしてのソーシャルワーク実践が発展し、その実践モデルや理論が進展した時期である。
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(1980 - 2000)[Social Work Practice: Generalist Approach]
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M. J. O'Neil (1984). The General Method of Social Work Practice.
L. C. Johnson (1983). Social Work Practice: A Generalist Approach.
M. O'Neil McMahon (1996) (3rd). The General Method of Social Work Practice: A Generalist Approach.
L. C. Johnson & S. J. Yanca (2001) (7th). Social Work Practice: A Generalist Approach.
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考察として、ソーシャルワーク実践の理論と技術は、その時代の実践体験、理論発展の影響を受けて進展してき たことが分かった。ケースワークの理論と技術に関して、"診断主義ケースワーク""機能主義ケースワーク" "行動変容ケースワーク"、あるいは"問題解決ケースワーク"の発展があったが、その後、「ソーシャルワーク実践」 として、その名称が統一され、その理論、モデル、技術の拡大がはかられてきた。その理論と技術の発展には、歴史的 な"流れ"があり、その歴史的な過程を理解することは、ソーシャルワーク実践理論の理解と、その技術の習得ために 必要であると考えられる。最初から、"好み"や"得意さ"で、特定の一つの理論と技術を選ぶのではなく、全体の発展経緯 を理解し、各種理論と技術の相互の関連性を含め包括的に理解する必要性が示唆された。ソーシャルワーク実践の専門知識 としての理論やモデルの今後の発展、専門技術としての各種の新たな技法を創出するためにも、過去に蓄積されてきた理論 と技術に関する文献研究は必要であろう。