「方面委員會協議事項」等からみる方面委員活動について
-昭和10年から昭和16年を範囲として-
○ 名寄市立大学 田中 利宗 (会員番号0043)
北海道立旭川高等看護学院 田中 康子 (会員番号0045)
キーワード: 《方面委員會》 《訪問活動》 《救済活動資金調達》
本研究は、1935(昭和10)年10月から1941(昭和16)年6月までの間に、山形県内の方面委員会で取り上げられた「方面
委員會協議事項」とそれに関連する史(資)料の整理を通じ、当時の方面委員活動の一端を推察するものである。
ところで、山形県を含めた東北6県全体を視野に入れた社会福祉・社会事業の歴史的研究は、東北社会福祉史研究連
絡会の会員によって追究され、また、田代国次郎氏の『社会福祉史入門』『東北地域社会福祉史』には、東北地域全体と
して、さらには、それぞれの県を単位として詳細な論究が展開されている。
一方、民生委員制度創設70周年、山形県民生児童委員協議会結成25周年を記念し刊行された『山形県民生委員の歩み』
には、戦前・戦後の貴重な史料とともに、山形県のそれぞれの地域の特色ともいえる課題に取り組む委員の姿が浮き彫り
にされている。
しかし、山形県における史料の発掘と整理は、現状においても十分とはいえない。
私どもの基本的研究視点は北海道内の社会福祉史研究、なかでもこれまでに取り上げられることが少ない、社会福祉
活動や機関紙(誌)等の存在を体系的に整理し、紹介することにある。今回の発表は、名寄市における開拓者としての山形
県人を辿る過程において出会った史料をもとにしている。史料は、「方面委員會協議案」「同情週間に関するもの」「方
面委員名簿 昭和13年」「方面委員大會要綱」「方面事業講習會要綱」「方面世蔕現況調査票」「軍人家庭状況調査票」
等である。(これら史料は、発表時に紹介したい。)
また、発表に際しては、山形県民生児童委員協議会、新庄市立図書館、酒田市立図書館、鶴岡市立図書館で所蔵する
関係史料の援用を受けた。
「4.引用は出来る限り原点主義を貫くべきであり、原典が入手できない等の止むを得ない場合にのみ、いわゆる 『孫引き』がゆるされる。」「32.研究業績を著書・論文・口頭等で発表する場合に、研究目的を外れて社会的に不適切 と考えられる用語を使用してはならない。」に細心の注意を払った。
4.研 究 結 果研究結果のひとつは、すでに先学の研究成果として発表されているものである。それは、約5年間の考察期間内にお
いても、方面委員に求められた活動の主な対象者は、救護法による救護者から軍事救護法、母子保護法、医療保護法等の
対象者、さらには出征軍人遺家族および傷痍軍人、召集解除者へと拡大していくことである。
一方、貧困家庭等の調査や訪問、救済活動資金等を調達するための募金活動。映画鑑賞会は、主催から後援へ、とい
う立場の変更をみながらも継続されている。また、「方面委員會協議案」の事前通知案件にはない、担当区域の住民の井
戸水の問題や住居の床などの不具合等を検討するメモが残されている。区域にある生活上の課題に対する委員の目くばり
活動ともいえるかかわりの存在は、忘れてはならないと考える。
以下、研究結果を導いた「方面委員會協議案」と委員の活動のいくつかを掲げる。
(案の原文、委員のメモのほとんどは、旧字体、漢数字で表記されている。)
(1)1935(昭和10)年10月「第1回映画鑑賞会決算報告書」「収入1,376円支出970円84銭」
(2)1936(昭和11)年9月21日「①映画鑑賞会の件 ②本県方面委員大会経過報告の件
③社会事業視察の件 ④其の他」
(3)1937(昭和12)年12月10日「①同情週間実施に関する件(12月13日より向こう1週間)
②年末配給に関する件(日時、戸数、方法) ③軍人援護会の慰問(慰問家庭の選定、
慰問の方法〈木炭1俵〉) ④其の他(方面感謝日に区域の貧困者の訪問)
(4)1938(昭和13)年1月25日「①軍事扶助に関スル件 ②母子保護法の件 ③其の他
(母子保護法講習研究協議会日程、方面委員必携持参)」
(5) 1938(昭和13)年5月19日「①全国方面委員大会に関する件 ②其の他 ③救護法に
依る家庭調査の件(各受持区内の救護者、母子保護法者を再調査すること、五月末迄)」
(6)1939(昭和14)年9月5日「①応召商工業者遺族家族に対する生業援護に関する件
(使用人・家族30円以内) ②軍事扶助家族移動に関する件 ③其の他」
(7) 1939(昭和14)年11月20日「①ボロデー実施に関する件 ②同情週間実施に関する件
③全国方面調査週間に関する件」 ※ 「全国方面調査週間実施要綱」
(8)1940(昭和15)年1月22日「①時局下に於ける要扶助者保護対策に関する件(当該係員
と各方面委員と同道し各救護家庭を廻りて研究すること) ②受持巡査及び学校長と
の連絡に関する件 ③救護法、母子保護法限度引き上げに関する件 ④雑件」
(9)1940(昭和15)年7月20日「①軍事扶助者(願出)に対する資産調査に関する件(動産の
調査方法に就て) ②軍事扶助災害臨時給与に関する件(一世帯30円) ③社会事業協
会一時扶助に関する件」
(10)1941(昭和16)年9月24日「①医療保護法に関する件②社会事業協会資金獲得映写会
に関する件③方面世帯票整理の件④社会事業協会々員増加状況に関する件⑤其の他」