自由研究発表社会福祉教育・実習2  井上 浩

大学は地域福祉力向上のためにいかに資するのか?
-生涯福祉教育センターの活動より-

 ○ 兵庫大学  井上 浩 (会員番号2450)
兵庫大学  Sung Lai Boo (会員番号3853)
武庫川女子大学  前田 美也子 (会員番号2937)
キーワード: 《ジェネラリスト・ソーシャルワーク》 《地域福祉力》 《地域の組織化》

1.研 究 目 的

 大学の使命の一つに、「地域貢献」がある。地域貢献は本来、大学それぞれが持つ役割に応じて行われるべきものである。兵庫大学は、地方小都市にある大学として地域貢献を目指している。すなわち、学部学科の目標に照らし合わせながら、地域と共同体を形成し、地域とともに発展する大学のモデル作りを目指している。
 このような、大きな目標を達成するために、本学生涯福祉学部では生涯福祉教育センターを(以下、センターと記載)本年度より開設している。学部の目標を、ジェネラリスト・ソーシャルワーカーの育成に置いているため、地域との連携は不可欠なものとなっている。学部の教育目標を実践に生かすようにセンターの目的が作られ、「センターは、生涯福祉とソーシャルワークの理念に基づき、地域における福祉の向上に資する実践と調査・研究、およびそれらに基づく教育を行う」と定められている。この目的を遂行するために、センターには大きく分けて三つの方向性が示されている。すなわち、(1)農村・小都市の文脈における地域発展やそれらの地域での福祉課題にどのようなものがあり、それを地域連携事業としていかに形成していくか、(2)地域福祉力発展のための公開講座の開催、(3)日本型ソーシャルワークカリキュラム開発研究、という三つである。
 本報告では、センターの実践報告として(1)および(2)に焦点を当て、具体的な事業をどのように展開してきているかを説明する。さらに、これからの展望として(3)の事業をどのように展開していく予定であるのかも報告する。

2.研究の視点および方法

 本報告は実践報告の形式をとる。

3.倫理的配慮

 報告に際して、地域が特定できないように配慮を行った。また、NPO団体の紹介が含まれる場合には、団体が特定できないように配慮を行った。

4.研 究 結 果

 1.の研究目的でも述べたように、本年度のセンター事業として地域での福祉課題にどのようなものがあり、それらを生涯学習として地域といかに連携させていくか、という取り組みを行っている。まず、(1)の結果については、地域の福祉課題を模索するために、いくつかのNPO団体などと協議を行い、その協議に基づいてスクールソーシャルワークに関する研究会を行っていくことになった。スクールソーシャルワークに焦点づけたことで、家族・地域・学校が直面する子どもの多様な問題解決と、それらの問題にソーシャルワーク介入を行うことで、子どもたちの学習力と生活の力量を高める支援につながってくると期待される。さらに、一般的なスクールソーシャルワーク以外にも、例えば特別支援学校にmain-streaming手法やinclusionの考え方を紹介していく予定である。これは、大学内部の教育だけでは当然不可能であり、地域を生涯学習的アプローチによって組織化しながら地域住民の意識を変化させ、自らが地域福祉力を作り上げていくことで、子ども・家族・学校と地域がともに子どもが直面する問題解決と学習の力量を高めながら、同時に生活力を構築していくことにつながっていくと考えられるのである。
 このことは、学生に対してはスクールソーシャルワークの意味や価値、実践可能性を認識させながら、現在日本が抱えている子ども・家族の問題を自らが探求するようになること、その分野で実践が可能であるかどうかを探り出す機会につながっている。 (2)の地域福祉力発展のための公開講座の開催については、生涯学習に関する公開講座を30回実施し、その目的を地域のリーダー作りに資することとする。すなわち、ジェネラリスト・ソーシャルワークの視点に基づき、参加者の意識を学びを通じて変化させていくようにする。地域の変化のための組織化を通じた実践を行いたいと考えている。
 本事業については、学内授業と密接に結びつけた展開を予定している。本学科では、2回生時の演習を「地域をテキストとして学ぶ」としている。学生はグループ別に、小都市・農村地域・限界集落の地域性を理解し、その地域特性に基づいた課題を抽出する。その課題にどのように対応していくかを学ぶのである。このことで、学生は調査を行う地域に、地域福祉力がどのように備わっているのか、さらには地域の組織化の手法も学ぶ機会につながってくるのである。
 (3)の日本型ソーシャルワークカリキュラム開発研究については、まずいくつかの公開講座を開催しながら、学部教育のカリキュラム変更につなげていく予定である。すなわち、資格取得を前提とはしない介護手法の取得や、認知症家族を抱える介護者ケア、などがプログラムとして用意されている。

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