自由研究発表社会福祉教育・実習1  木内 哲二

精神保健福祉士養成に係る実習ついての考察
-精神保健福祉士法改正に伴うカリキュラム再編に関して-

徳島文理大学  木内 哲二 (会員番号3278)
キーワード: 《精神保健福祉士》 《養成教育》 《実習》

1.研 究 目 的

 今年度、2007年末から厚生労働省に設置された「精神保健福祉士養成の在り方等に関する検討会」「今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」「社会保障審議会障害者部会」それぞれの中間報告を受け、精神保健福祉士法の改正法案が国会に上程され審議される。改正される予定の精神保健福祉士法のもとでの新教育カリキュラムにおいては、とりわけ「実習」と「演習」について、新たな取り組みが求められることになるが、「実習」については、病院等医療機関での実習が必須とされることが「精神保健福祉士養成の在り方等に関する検討会」の中間報告で記されている。
 障害者自立支援法施行後、社会福祉士との関連において、「横並び」の国家資格から新たな資格編成も議論される動きのある中、その養成に関しては、1997年国家資格として誕生した経緯や当該資格の目的・定義・理念および資格化から12年経過した中での果たしてきた実績、さらには喫緊の課題である7万人の長期入院患者の地域生活への移行支援等、今後、我が国の精神保健福祉を担うべき当該資格者養成に求められる役割等、広範な視座からの検証を併せ持った取り組みが求められる。
 本研究は、上記の目的に則し、精神保健福祉士養成教育において、特に「精神保健福祉士養成の在り方等に関する検討会」の「医療機関の実習必須」をその論点に置き、「実習教育」の在り方を模索するものとする。

2.研究の視点および方法

 主に、精神保健福祉士法改正に伴うその養成についての、「精神保健福祉士養成の在り方検討会」の中間報告と、それに関連する精神保健福祉士養成校協会ならびに日本精神保健福祉士協会の提言・報告を読み取りながらも、新たな精神保健福祉施策や障害者自立支援法の改正とそれに連動付随する精神保健および精神障害者の福祉に関する法律と精神保健福祉士法改正案、加えて精神保健福祉士業務指針、社会福祉士養成における実習に関する指針(平成20年)、その他精神保健福祉関連職種の実習教育に関する提言等による文献を参考に、その養成に係る実習教育の在り方を模索する。

3.倫理的配慮

 日本社会福祉学会倫理規程を遵守。個人情報を取り扱う内容は含まれない。

4.研 究 結 果

【養成教育を考える上での精神保健福祉士の今日的課題】
・ 日本精神保健福祉士協会においては精神保健福祉士の職域・活動の場は、医療、福祉の領域から司法、教育、労働等の領域へと拡大の一途を辿っていると認識し、「精神保健福祉士業務分類および業務指針作成に関する報告書」(2008)において非常に広範・多岐(特に地域支援)な業務活動に関する項目が提言されている。 ・ 新たな精神保健福祉施策(長期入院患者退院支援および地域支援推進)である「精神障害者地域移行支援特別対策事業」の地域移行推進員・地域体制整備コーディネーターの役割が精神保健福祉士に求められている。 【養成教育と法改正】
・ 「精神保健福祉士法」改正案においては、当該資格者の活動が精神病院等の医療機関と精神障害者の社会復帰を目的とする施設において、社会復帰等の相談に加えて、一般相談支援(自立支援法)相談が明記された。
・ 「精神保健および精神障害者の福祉に関する法律」においては、実質上精神保健福祉士に、医師、看護師等院内スタッフとの連携に加え、一般相談支援事業を展開する地域支援従事者との連携が謳われた。
【求められる実習について】
 以上のことから、精神保健福祉士の養成に関して、「精神保健福祉士養成の在り方等に関する検討会」の中間報告にある『病院等医療機関実習の必須』については、以下のように考える。
 障害者自立支援法施行後、地域生活支援にシフトされた障害者福祉施策は精神障害者に関しても足並みを揃えた取り組みが続いており、係る法改正や新しい施策に牽引されて精神保健福祉士の活動の場も増えている。医療の現場に留まることなく、今後成熟した援助活動を行える資格になるためには、地域支援活動の実習は不可欠であろう。しかしながら、喫緊の課題として、遅々として進まない長期入院者の社会復帰問題が大きく横たわっている。一方、日本精神科病院協会からは、本年5月に「精神障害者生活訓練施設」等の社会復帰施設存続の要望書が政府に提出された。それは、精神障害者の社会復帰(地域生活支援)は医療と地域支援の連携が不可欠で、医療と地域生活を連結させたケアマネジメントが必要であるとの認識からの提言である。
 これらを鑑みて、当該資格者養成に係る実習は、①総実習時間のうち半分以上を医療機関での必須実習とする。②加えて地域生活支援実習を、旧社会復帰施設で障害者自立支援法に規定された障害福祉サービス事業所に移行した施設で行う。③両方とも実習指導者要件(社会福祉士養成と同様の)を満たすに者よる指導を課す。

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