自由研究発表社会福祉教育・実習1  池田 雅子

社会福祉協議会における効果的な実習指導の方法について
-実習指導事例の分析を通して-

北星学園大学  池田 雅子 (会員番号0168)
キーワード: 《社会福祉協議会》 《実習指導方法》 《コミュニティソーシャルワーク》

1.研 究 目 的

 社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、社会福祉士の役割として関係機関等との連携や地域福祉推進が強調され、実践能力のある専門職を育てるための教育カリキュラムの改訂、特に演習や実習教育のシラバスや指導体制が大きく見直された。その中で地域福祉推進を担う社会福祉協議会(以下、社協)における実習のあり方については、福祉施設実習と比べ十分に研究されていない。また近年、社協におけるソーシャルワークの特徴として、従来のコミュニティワークからコミュニティソーシャルワークという概念が導入され、専門性の内容が議論され始めている。そこで2007年度、北星学園大学における実習終了学生を対象としたアンケート結果を分析すると、①社協の実習は詳細にプログラムが用意されているが、関係施設や事業のオムニバス形式が多い、②綿密に組まれたプログラムのもとで学生は多様な経験をするが、必ずしもソーシャルワーク理解に結びつかない、③実習スーパービジョン場面の設定は、施設や相談機関と比較しても十分でない、という傾向が見られた。その結果、実習終了学生から、「消化不良」「デスクワークが多く実践的な実習ができない」「社協の存在意義がわからなくなった」という否定的な感想が散見されるなど、実習領域として課題を抱えている。そこで本研究では、よい実習指導の事例を通して、社協における効果的なソーシャルワーク実習のあり方について検討する。また社協の新たな専門性として提起されているコミュニティソーシャルワークの位置付けや実習教育における展開可能性についても探ることを目的とする。

2.研究の視点および方法

 2008年度、北星学園大学における社会福祉援助技術現実習において、学生からの評価(実習内容の充実度、満足度)の高かったA市とB市、2ヶ所の社協を対象とし、実習指導職員と実習学生に対し、ヒアリング調査を実施した。調査時期は、2009年1月中旬~2月上旬にかけてであり、各1~2時間程度の半構造化面接を行った。その他、学生の実習日誌や実習中の配布資料、実習指導プログラム、学生の実習計画書等を資料として活用した。
 各社協の地域特性、社会資源の概要、社協の事業内容と運営の特徴(特に介護保険事業等のサービスの有無・種類)の把握を行い、指導職員への質問項目としては、①実習生受け入れ方針、②実習指導プログラムの組み立て、③スーパービジョンの方法、⑤コミュニティソーシャルワークの位置づけについて、実習生に対しては、①実習計画書における実習目標、②実習の成果と感想の2点を質問した。分析の視点は、両社協で共通する実習指導プログラミングのあり方とスーパービジョン展開方法について抽出する、さらに各社協におけるコミュニティソーシャルワークの考え方や展望、実習指導内容への反映方法についても分析する。

3.倫理的配慮

 2ヶ所の社会福祉協議会における実習指導者および実習生へのヒアリング結果をまとめる際、地域名や施設名、利用者名等を匿名化し、プライバシーへの配慮を行う。

4.研 究 結 果

(1)実習指導内容について
 ①実習生受け入れ方針として、「社会福祉士が社会福祉士を育てることを重視し、1ヶ月の実習で様々な人との出会いや経験を通し、社会福祉士像を形成してほしい」、「できれば将来社協を目指すようになること」など、実習を通して社協の仕事への魅力を実感し、社会福祉士像の形成を目指している点が共通している。
 ②実習指導プログラムの組み立て
 A社協は、従来の様々な事業に参加させるオムニバス型実習を反省し、社会福祉士会のプログラムミングシートを活用している。後半のソーシャルワーク実習では、社協運営の地域包括支援センターを中心にケアネットワークを学ぶ。B社協は学生の実習目標からB社協で経験できることを調整する。その際、実習期間中に開催される会議や交流活動に全て参加させる。事前に各地区の歴史や現状・課題を説明し、職員に同行して実際の現場を全て見せる。実習後半は地域研究などレポート課題の作成のための助言や資料提供を行う。
 ③実習指導方法(スーパービジョンの方法)
 両社協とも、職員による講義・説明の時間が設けられている。さらに会議等の出席、地域活動現場への同行など、実習指導職員とともに実際の現場に参加する機会が用意されている。実習指導方法として「読む」「話す」、「示す」「問う」が組み合わせられ、特に「示す(やって見せる)」の場面が多いのが特徴である。
(2)コミュニティソーシャルワーク実習についての展望
 両社協とも個別課題への対応は社協が今まで構築してきたインフォーマル資源と結びつき、社協独自の活動を展開する機会になると指摘している。その意味でソーシャルワーク実習の段階において、これらの実践現場に同行し、専門的な視点や技術を実習させることで、社協実習がより専門的な実践能力の習得の機会なることが考えられる。今回のインタビュー調査を通して、そのような実習の可能性や効果的な指導方法を抽出することができた。

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