地域における子育て支援コーディネーターの業務内容と役割の検討について
○ 大阪人間科学大学 中川 千恵美 (会員番号1094)
キーワード: 《地域子育て支援》 《子育て支援コーディネーター》 《子育てサービス情報提供》
現在、各市町村において母子保健部署・保育部署・児童福祉部署・教育部署・さらに地域のNPO子育て団体等子ども家庭に関する部署それぞれが、子育て支援事業やプログラム等を主催し、乳幼児期からの子どもに対する取り組み、親に向けた講座、地域に向けたイベント等として点在し実施されてきた。このように様々な子育て支援サービスが展開されているが、当事者である親達にはこの問題はどこに相談したらよいのか、自分達の地域で利用できる具体的なサービス内容がどのようなものなのか等情報の入手と必要な情報の選別に時間を要し、的確な情報を得られにくい状況であった。また2003年に作成された「子育て支援総合コーディネーター(仮称)」に望むこと(1)にも在り方が要望されていた。
こうして改正児童福祉法(平成15年)により、2005(平成17)年度から市町村の責務として「子育て支援総合コーディネーター」を配置した。このコーディネーター配置の目的は、一時保育や地域子育て支援拠点事業等の地域における多様な子育て支援サービス情報を一元的に把握すると共に、子育て家庭に対する総合的な情報提供、利用援助等の支援を行うことであった。
しかし子育てコーディネーターが配置された後、その業務内容や役割についての現状報告等が、十分なされていない。やはりすべての家庭を視野に入れた支援事業を展開していく上で、相談援助や利用調整等を含む子育て支援コーディネート機能の位置づけ、地域子育て支援拠点事業の量的拡充や機能拡充、各種事業の担い手の育成等について、さらに検討が必要だと考える。本研究では、上記の問題意識のもと日本で子育てコーディネーターの業務内容及び現状分析し、今後の課題を整理する。
発表者が先駆な地域子育て支援モデルとしてレビューしてきたオーストリアビクトリア州のベストスタートプロジェクト実践に向けてのコミュニティーファシリテーターについての役割についてレビューしてきた(2)。
今回の研究報告では「子ども家庭総合研究所」の地域情報に関して「子育て支援コーディネーター」で検索し確認した、X市とZ県の取り組みを検討する。子育てコーディネーターを配置し実践しているX市の取り組みの聞き取りを中心に述べ、Z県での子育てコーディネーターの養成講座内容からは、養成内容からコーディネーターに求められている資質についても若干であるが、検討したい。
聞き取り調査に当たっては、当然提供者に対する丁寧な実施目的、結果の活用などについて充分に説明し、守秘義務を約束する。調査の実施及びデータの解析に関しては、対象者の人権及び権利に関して十分な配慮をし、個人情報が漏れないようにし、対象者の不利になるような使い方がされないよう、最大の努力を行う
4.研 究 結 果(1) X市の現状から
当該市では平成17年8月より配置される。①資格要件としては保健師、保育士や長年子育て支援に携わったもの等、子育て支援に関する知識・能力や相談援助の技術を有するものとともに、地域の子育て情報に精通していると認められた者としている。②勤務先はX市保健福祉局子ども未来部子育て支援課内である。③具体的な勤務内容は、第一に行政が実施している各種子育て支援サービス及び民間団体等が実施する子育て支援事業をはじめとする各種子育てサービス情報を集約、蓄積し、その収集した情報をデーターベース化するなどの一元化を図る。第二に子育て中の親等のサービス利用者にインターネット等を活用した情報提供を行う。第三に子育て支援サービス情報に関する利用者からの電話に応じ、適切な機関の案内や助言を行うとともに、必要に応じて子育て支援サービスを提供する実施機関(以下「子育て支援サービス提供機関」という。)へのサービス利用の援助等を行う。第四に子育て支援サービス提供機関との連絡、情報提供及び調整を行う。第五にその他の子育て支援事業を円滑に実施するための諸業務を行う。
(2) Z県の子育て支援コーディネーター養成講座内容から
①要請講座受講資格用件は、地域における子育て支援を実践している保健師や保育士である。②受講者の勤務先は、市町村保健所や地域子育て支援拠点事業を実践場である地域子育て支援センターやつどいの広場である。③内容は、基礎コース4回の講座で、「地域の子育て支援」と「親支援」に焦点をあてた内容が盛り込まれている。受講後郊外地域では、地域の人的な交流を意識した取り組みを実践していること、また都心部では親同士がつながる講座や行事の実施を意識し、地域の資源の紹介等を心がけている。
X市のコーディネーター配置の現状からは、第一にこの配置が民間活動の柔軟さを反映してきた、第二に紙媒体やITでの情報提供とそれをつなぐ人の配置を伴った子育て情報やサービスの仕組みづくりの展開を注目したい、第三に連携の重要性とネットワーク活動の検討が必要だと考える。次にZ県における親支援や地域との連携を意識したコーディネーター養成講座後の経過に注目していきたい。今回の研究からは、子育てコーディネーターの実践現場に即した業務の明確化と活用内容をさらに精査検討していく必要がある。
*本研究は科学研究助成中川千恵美「養育上の課題を持つ子ども家庭を含めた予防的な地域子育て支援事業の実証的開発研究」の成果報告の一部である。(1) 子育て支援総合コーディネーターを考えるプロジェクト「子育て支援総合コーディネーター(仮称)」に望むこと2003.1.22 (2) 中川千恵美「地域子育て支援事業におけるコミュニティ-ファシリテーターの役割について」日本社会福祉学会第56回全国大会ポスター発表 2008年10月