学会長挨拶
一般社団法人 日本社会福祉学会 会長 白澤政和
(桜美林大学大学院老年学研究科 教授)
一般社団法人 日本社会福祉学会第60回秋季大会は関西学院大学(大会長:芝野松次郎教授)が開催校となり、10月20日から2日間、関西学院大学上ヶ原キャンパスで開催する運びとなりました。今回のテーマは「日本社会の再生と社会福祉学の役割-人・地域・制度のつながりにおける社会福祉の領域と境界-」です。
日本は昨年3月11日の東日本大震災に伴う津波や原発で、多大な被害を受け、未だ復興には程遠い状況にあります。また、日本全体については、格差社会が拡がり、生活困窮者問題が重要課題になっています。さらには、人口の高齢化と少子化による社会保障システムの抜本的な見直しが迫られています。
このような社会状況にあり、日本社会をいかに再生していくのかを社会福祉学の観点から議論することが今回のテーマです。こうした問題を社会福祉学が論じていく場合には、人と制度の関係を捉え直すとともに、人と制度の間にある地域社会のあり方についても見直さなければならない。おそらく、そうした意図をもって、本大会のテーマが決定したものであり、あるべき方向に向けて大いに議論をしてほしいと願っています。
そのため、室崎益輝氏(関西学院大学総合政策学部教授・災害復興制度研究所所長)に「日本社会の再生と社会福祉学の役割-東日本大震災後の復興を通して日本社会の再生を考える-」というテーマで記念講演をお願いし、大会校企画として、「日本社会の再生と社会福祉学の役割についてのシンポジウムを開催することになりました。また、開催校と学会の共同による震災対応シンポジウム「提言:生活の再建に向けた社会福祉学の役割」を昨年度に引き続き開催することにしました。こうした基調講演やシンポジウムから、社会福祉学の観点から、日本の再生について多くのことを学んで頂きたいと思います。
再生が求められる現在の日本の社会状況は、第2次世界大戦直後の時代状況に類似していると言われます。日本社会福祉学会は1954年に創設されましたが、創設当時の社会福祉学研究は戦後の焼け跡からいかに再興するかがテーマでありありました。創設時の196名の会員が背負っていった使命感や責任感は計り知れないものがあったであろうと察します。現在5000数百名の会員を擁する日本社会福祉学会一人ひとりが日本の再興に思いをはせることができれば、間違いなく大きなパワーになるはずです。日本社会福祉学会およびその会員は、学会創設時の研究の原点に戻り、日本の再生に寄与していくことが求められていると考えています。
今大会では、これら以外に、日本社会福祉学会研究倫理委員会が新たな企画を主催して、「研究論文における研究倫理上の課題と指導方法を学ぶ」という特別研究を準備しています。さらに、開催校企画では、調査方法やコミュニケーション方法についての若手研究者向けの3つのワークショップを開催して頂きます。また、恒例ですが、日中韓の国際シンポジウム「多様性と人権,そして社会福祉教育の課題」を準備させて頂いております。
本大会が会員の皆さんの多くの学びに場になっていただくことを祈念しています。また、学会の開催にあたり、多くの新規の企画を準備下さり、魅力のある大会内容にご尽力くださいました芝野松次郎大会長を初めとする関西学院大学の関係者の皆さんに、心から感謝申し上げます。
最後になりますが、この第60回大会の総会でもって、日本社会福祉学会の第2期(通算23期)理事会は役割を終え、新しい理事会に引き継がれることになります。そして、この2年間会長をお引き受けしてきましたが、皆さんのご期待に十分お応えができませんでしたが、会長の職を離れることになります。この間、会員の皆さんには学会の運営等で多大なご支援、ご協力を賜りましたことに対してお礼を申し上げ、新しい会長の下で日本社会福祉学会が益々発展することを期待しています。