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日本社会福祉学会の真価が問われている

日本社会福祉学会会長 白澤 政和

一般社団法人 日本社会福祉学会 第59回秋季大会は淑徳大学(大会長:長谷川匡俊学長)が開催校となり、10月8日から2日間、淑徳大学千葉キャンパスで開催する運びとなりました。今回のテーマは「ソーシャルワークの本質を考える-原理的な問いと実践を創り出すもの-」です。

ソーシャルワークの必要性は早くから言われてきましたが、必ずしも日本社会に十分定着したとは言えません。これには政策面と実践力の両面での課題があると考えますが、これら両面についての議論がシンポジウムでなされるものと大いに期待しています。現実には、人々の生活問題は複雑化・複合化しており、それらの問題を有した人々が増加しています。そのため、生活問題の解決に向けたソーシャルワークに対する社会のニーズは高まっていますが、必ずしもソーシャルワーカーに対する需要がさほど高まっているわけではありません。本シンポジウムが、日本でソーシャルワークを展開していく大きな糧になることを期待してやみません。

さて、去る3月11日には未曾有の東日本大震災が発生し、多くの皆さんが犠牲に合われました。心から冥福をお祈りするとともに、被害を受けられた地域や人々の一日でも早い復興を願ってやみません。

被災地では一部の地域を除き、避難所から仮設住宅への移動が進み、本格的な復興に向けての計画作成・実施を進めていく時期が来ています。そこでは、被災住民の参画のもとで、住民の生活ニーズに基づく計画が作成されることが求められています。また、阪神・淡路大震災の反省からも、今まで住んでおられたコミュニティでの住民同士のつながりを大切にしながら、生活圏域ごとでの計画の作成が求められます。ここには、社会福祉の研究・教育者や実践者は大いに貢献できるものと考えています。会員の皆さんには、今までの研究成果を活かし、是非積極的な関与をお願いしたいと願っています。

この震災に対して、一般社団法人 日本社会福祉学会は何ができるのかが問われています。個々の会員として、学会という組織として、何ができるのかが問われており、社会的責任を果たしていかなければなりません。日本社会福祉学会は戦後の焼け野原の中で、日本の復興を目指して先達が立ち上げられましたが、本学会は今同じような状況にあると認識しています。まさに、日本社会福祉学会の真価が問われているという気持ちであります。

そのため、日本社会福祉学会としては、21の社会福祉系学会で構成される日本社会福祉系学会連合に働きかけ、社会福祉に関わる全ての学会の英知を集め、今回の震災の実態を社会福祉の視点から把握し、そこから社会福祉の施策や支援について提言していくことを提案させて頂きました。現在その作業が進められているところでありますが、大きな成果を期待したいと思っています。

一方、学会としては、急遽、本大会において震災に関するシンポジウムを大会校と共同で検討してまいりました。そして、被災地の皆さんにもシンポジストとしてご参加いただき、「提言:震災で問われる社会福祉学の役割 ―原理と実践の探究― 」というテーマのシンポジウムを9日の午前中に企画することになりました。このシンポジウムを介しても、活発なご議論をいただき、本大会のテーであるソーシャルワークの本質が浮き彫りになり、震災といったリスクに対応する社会福祉学が確立する契機になることを期待しています。

阪神淡路大震災での、急性期にインテンシブに対応していれば多くの命が救われたとの反省から、医療は平時にDMAT(Disaster Medical Assistant Team)を、さらには亜急性期に対応するJMAT(日本医師会災害医療チーム)を養成し、今回の震災で円滑に対応されました。福祉領域においても、平時からソーシャルワーカーには緊急時に派遣できる人材を研修・養成しておき、医療との連携のもとで震災などのリスクに対応していく仕組みが求められています。さらには、その際に,派遣のできる介護職やボランティアとソーシャルワーカーの連携の仕組みを整えておく必要があります。

今年は、3月11日に東日本大震災があり、ある意味では忘れることが出来ない大会になりました。本大会に多くの皆さんがご参加いただき、社会福祉とはなにかを根源から問うことができ、そのヒントを持ち帰ることのできる大会になることを祈っています。

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