自由研究発表NPO・ボランティア  尾崎 由利子

外国人集住地域における、交流の場作りについての考察
 -「愛知県の多文化共生に関する県民意識調査」から-

○ 地域情報研究所(株)コムデザイン  尾崎 由利子 (会員番号5135)
キーワード: 《外国人住民》 《集いの場》 《グローバル化》

1.研 究 目 的

*外国人の定住化と、定住外国人福祉の必要
 少子高齢化による労働力不足を背景に、日本における外国人人口は急増している。東京都 に次いで外国人登録者数が多いのが愛知県で、1990年代以降の外国人労働者数の急増が 著しく、その後居住年数の長期化が進んでいる(図1)。2009年には不況の影響で、帰国者が 増加したが、外国人登録者数はなお214,110人で、愛知県の人口(7,414,977人 2010年1月1日 推計人口)の2.9%を占めている(図2)。
 外国人の定住化における福祉的課題は、住宅問題、子女の保育や教育の問題、雇用対策、 医療の受診、行政や福祉サービスの利用、メンタルヘルスの問題、近隣住民との融和など、 様々な分野に渡っている。これらの課題に対して、行政による就労対策や教育の支援、 NPOやボランティア団体による医療相談や交流事業、多文化ソーシャルワーク事業などが 行われてはいるが、いまだ十分とは言えない状況である。
 そのため、本論では外国人集住地区の代表的な地域である愛知県において、今後必要な 定住外国人福祉として、地域で実施すべきことは何かを検討することを研究の目的とした。

2.研究の視点および方法

 本論では、地域における住民参加型の地域福祉の視点から、定住外国人福祉について 検討する。
 近年、外国人住民の現状とニーズを知るべく、県や市町村において、外国人住民実態 調査や、外国人に対する日本住民の意識調査が実施されることが増えてきた※1。これらの 調査では、外国人や日本人の、地域のコミュニティや日常生活の要望を知ることができる。 そこで、本論ではこれらの調査結果をもとに、地域の定住外国人福祉について検討する。

3.倫理的配慮

 本論においては、対象とした調査報告書がすべて公開されているため、県名等は記号 を用いずに明記した。

4.研 究 結 果

 愛知県全域を対象にした「愛知県の多文化共生に関する県民意識調査」(2010)では、 日本人と外国人に、充実すべき行政の取組みについてたずねている。外国人の要望は、 多い順に「医療保健福祉充実」、「労働環境改善」、「日本語学習支援」、「教育」、 「意見表明や県政参加」、「日本人の意識啓発や国際理解」、「相談や多言語の情報提供」、 「日本人と外国人の交流の場」である。このうち「日本語学習支援」、「日本人の意識啓発 や国際理解」、「日本人と外国人の交流の場」が地域福祉の課題であると考えられる。 「日本語学習支援」については筆者がすでに述べた※2ので、本論では「日本人と外国人の 交流の場」に着目した。
 「日本人と外国人の交流の場」の具体的イメージについては、「交流イベントがあったが もっとやってほしい」(外国人)、「もっと交流機会を増やしていほしい」(外国人)、 「サークルなどあれば参加したい」(日本人)など、様々な機会での気軽な交流があげられて いる。
 県内で実際に行われている交流の場は、国際交流協会などが主催のイベント、民間団体 主催のイベント、日本語教室などが主体のイベント、生涯学習講座などが存在している。
 交流の場と福祉についての関係を考察すると、交流が即相談などの福祉ニーズを満たす 場であることは少ないが、相談先を紹介したり、情報提供する機会としての役割をもって いる。また、インターネットや携帯電話でイベント情報をやりとりする場合は多く、交流 の場作りには多言語の情報活用も検討する必要がある(以上外国人インタビューによる)。


1)愛知県(2010)『愛知県の多文化共生に関する県民意識調査』、豊田市(2009)『外国人住民 意識調査』 ほか2010年には名古屋市等でも調査の実施が予定されている。
2)尾崎由利子(2009)「地域日本語教室と日本語ボランティアの役割と限界--愛知県「日本語 学習支援事業基礎調査」結果から-」,『社会福祉学研究』Vol4,pp37-48,日本福祉大学大学 院社会福祉学研究科編

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