離島高齢者のメンタルヘルスに関する研究
○ 北都保健福祉専門学校 早川 明 （会員番号7141）
名古屋学院大学 山下 匡将 （会員番号6673）
仙台白百合女子大学 嘉村 藍 （会員番号5846）
東北公益文科大学 小関 久恵 （会員番号5845）
松本短期大学 村山 くみ （会員番号5666）
札幌心療福祉専門学校 古川 奨 （会員番号5847）
文教大学 大月 和彦 （会員番号2164）
北海道医療大学 志水 幸 （会員番号1727）
キーワード： 《GHQ-28》 《精神的健康度》 《ライフスタイル》
ライフスタイルが多様化する中「平均寿命」の延伸に変わり,自立して健康に暮らすことのできる期間を示した「健康寿命」
の保持が重要視されている.健康で豊かに生活するためには,身体的な健康ばかりではなく,精神的な健康の維持・促進を通して
「健康寿命」の延長を図ることが重要である.
そこで,本研究では,生活様式が比較的画一化されている離島住民を対象に,精神的健康の関連要因について,ライフスタイ
ルや社会とのつながりに着目しつつ検討することを目的とした.
研究対象は，新潟県岩船郡に属する粟島浦村（孤立小型離島）に居住する40歳以上の住民222名と,山形県酒田市に属する 飛島（孤立小型離島）に居住する満40歳以上の住民187名である．調査は，原則として配票留置法による調査を行ったが,回 答者の事情により記入することが困難であった場合や,調査対象者の希望があった場合にのみ,訪問面接調査を行った.調査項 目は，調査項目は,1）基本属性等に関する6項目,2）地域との関わりに関する10項目,3）地域の福祉に関する11項目,4）民生 委員に関する2項目,5）福祉のまちづくりに関する2項目,6）介護サービス等に関する4項目,7）社会関連性指標に関する18項 目,8）健康生活習慣に関する10項目,9）健康状態に関する8項目,10）ソーシャル・サポートに関する16項目,11）精神的健康 に関する28項目,12）楽観性に関する12項目,13）生活満足度尺度Kに関する9項目,14）老研式活動能力指標に関する9項目（1 3項目）の計145項目を設定した.分析にあたり，精神的健康度を「問題なし群」，「問題あり群」と分類しこれを目的変数と した．説明変数として1）基本属性,2）身体的要因,3）社会的要因,4）精神的要因等を設定し，精神的健康度との関連の有意 性について分割表を用いて検討した．解析について，単変量解析ではFisherの直接確率検定，多変量解析では，精神的健康 を目的変数，単変量解析で有意であった項目を説明変数，性別・年齢を調整変数とし，説明変数の領域ごとにロジスティッ クモデルを構築した．
３．倫理的配慮研究対象者から事前に研究協力の了承を得るが,アンケートの際に改めて書面と口頭によって研究目的と研究参加方法 を説明し,研究協力の意思を確認した.また,研究協力をいつでも辞退することができること,辞退した場合でも対象者が不 利益を被ることはないこと,調査で得た情報は研究目的以外には使用せず,論文作成やその他の方法で公表する場合におい ても,個人が特定されることがないようにプライバシーの保護を徹底することを説明した.アンケートを行う場合も,プラ イバシーが守られるように周囲の状況に配慮した.
４．研 究 結 果回収率は，粟島浦村では住民222名のうち,160名（回収率72.1％）,飛島では40歳以上の住民187名のうち,138名 （回収率73.8％）より回答を得た.高齢者の年齢で,平均年齢（Mean±SD）は74.1±6.3であった. 精神的健康度の分布に ついては,高齢期の平均得点（Mean±SD）は6.3±4.8であり,また,精神的健康度について高齢期では94名（60.6％）の回 答者が「問題なし」と感じていた.単変量解析で有意な(P＜.05)関連が認められた項目は，質的変数では28項目，量的変 数では5項目であった．多変量解析で独立性の高い変数として検出された項目は，高齢期においては｢自覚的ストレス量｣ ｢LSI-K総得点｣｢悲観的自己感情得点｣｢2ヶ月以内の通院｣｢あなたが病気で2-3日寝込んだときに,看病や世話をしてくれる 人がいますか｣の5項目が選択された.
