ポスターセッション高齢者  勅使河原 隆行

在宅福祉サービスにおける専門性と専門職

千葉商科大学大学院  勅使河原 隆行 (会員番号5794)
キーワード: 《在宅福祉サービス》 《専門性》 《専門職》

1.研 究 目 的

近年では、高齢者等ができる限り住みなれた身近な地域や家庭で生活を継続できるように、介護保険法の改正や、医療 保険制度改革などが行われている。これらの制度改正では、施設等での介護から、在宅での介護へシフトしていくことが強 調されている。そのため、在宅福祉サービスを行う介護福祉士が、実践現場で必要とされている専門性を明確に示すことが 必要であると考える。介護福祉士の担う業務は、利用者の命と直接的な関わりを持って行われているため、高い専門性が求 められる。そこで本研究では、「在宅福祉サービスを行う介護福祉士の専門性には、何が求められているのかを解明する」 ことに目的を置くことにした。

2.研究の視点および方法

在宅福祉サービスを行っている介護福祉士を調査対象者とし、郵送または持ち込みにより調査を行った。その調査を集 計し、主成分分析を行って介護福祉士に必要とされている専門性に関する項目を確定した。調査票は無作為に選び出した50 施設の施設長宛に、それぞれ5枚の調査票を配布し回答を求めた。なお各施設での調査対象者の選別は、各施設長に介護福祉 士資格を有する者を選別してもらい実施した。調査期間は2009年3月1日から2009年3月31日の1ヶ月間であった。郵送または 持ち込みによる調査票の配布枚数は250枚、返送調査票数184枚、有効票数170枚であった。回収率73.6%、有効率68.0%であっ た。調査の集計には、統計ソフトSPSS(10.0J)を使用した。
  調査項目は、本研究者が行った先行研究において抽出した調査項目を使用した。この先行研究では、①介護福祉研究会 (研究代表・三友雅夫)が1992年6月の研究で使用した調査項目の、介護の知識に関する項目214問の中から、介護福祉士国 家試験の第1回から第17回までに出題された項目を選び出す。②介護福祉研究会が行った調査項目に含まれていない、権利 擁護、関係専門職との協働、認知症、介護予防等の項目を追加する。③これらの項目で調査を行い、その結果を集計し実践 現場での介護福祉士の要求度が高い項目を選び出す。④因子分析を行い、③で選び出した項目の妥当性を検討する。という 方法により、最終的な項目を選び出した。項目数は、53項目であった。なお、本調査の尺度は、「非常に低い」から「非常 に高い」までの5段階リッカートスケールにより調査を行った。

3.倫理的配慮

本調査における倫理的配慮として、調査対象者に対して、回答した内容はすべて数値化を行い、個人が特定されない旨 を調査票に明記した。その上で、回答が得られたことによって、同意したと理解する旨を明記した。

4.研 究 結 果

質問項目の集計に際しては、「非常に低い」を1点、「低い」を2点、「普通」を3点、「高い」を4点、「非常に高い」 を5点と点数化し集計を行うことにした。これらの調査項目の平均値が高いほど、在宅福祉サービスを行う介護福祉士に必 要とされている内容であるということになる。
  調査項目全体の平均値は4.27であった。最上位の調査項目の平均値は4.74であり、最下位の調査項目の平均値は2.95 であった。したがって、すべての質問項目が、在宅福祉サービスを行う介護福祉士に必要とされている内容であると理解 できる。次に、調査項目の53項目について主成分分析を行うにあたり、本研究で使用した調査項目が妥当であるのかを検証 するため、KMOおよびBartlettの検定を行った。その結果、Kaiser-Meyer-Olkinの妥当性は .640であり、また、Bartlettの 有意確率が .000であるため、主成分分析を行うことに意味があるという結果が得られた。なお、信頼性係数はCronbach's のα係数 .781と高い値であり、調査項目は内的一貫性が高いものであると判断できる。
  主成分分析では、固有値が大きく落ち込む5因子を抽出し、グルーピングを行った。グルーピングにより確定した項目 は、①病気の予防と衛生管理に関する知識、②認知症に関する知識、③利用者の尊厳の保持に関する知識、④利用者の状況 に応じた介護の知識、⑤社会福祉制度に関する知識、の5項目である。
  在宅福祉サービスを行う介護福祉士は、介護環境の変化や法制度の変化に対応し、時代に即した新しい専門性が求め られているものと思われる。したがって、在宅福祉サービスを行う介護福祉士は、現時点で本研究において抽出した項目 が介護の専門性に要求されており、この専門性に関する項目の内容を実践現場において生かさなければならないというこ とである。これらの在宅福祉サービスに必要とされている介護福祉士の専門性に関わる内容を骨子とする、福祉専門職養 成教育が大切であると考える。そうすることで、わが国の介護の質的な向上をはかることができると考える。さらには、 超少子高齢社会の進行、団魂世代の高齢化の進行が現実となっており、労働市場は売り手市場に変わる兆しを見せている 。その意味では、福祉専門職をめぐる状況は大きく変わってくることが予想される。果たして、高い水準の専門性を修得 した専門職が将来、期待できるのか問題のあるところである。高い水準の専門性を持つ専門職をいかに養成・確保するか 、その条件をいかに整備するか、今後の検討課題となることを指摘しておきたい。

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