ポスターセッション高齢者  水主 千鶴子

老人大学に参加した高齢者の旅行に関する意識調査

和歌山県立医科大学保健看護学部  水主 千鶴子 (会員番号5156)
キーワード: 《高齢者》 《老人大学》 《旅行》

1.研 究 目 的

 グローバル化時代によって日帰り旅行や宿泊旅行、海外旅行など旅行形態が変化している。わが国の高齢化率は、2008年 に21.1%を記録し高齢者が増加している。最近の高齢者は、時間の余裕と健康面の余裕を増しているため今後ますます高齢者の 旅行の増加が予想される。旅行は、高齢者の1つの自己実現であり、家族や仲間との交流が深まり満足感や幸福感が得られるこ とから高齢者のQOL向上に役立つと考えられる。本研究は、老人大学に参加した高齢者の旅行の現状と旅行に関する意識を知 ることであり、高齢者の旅行にはどのような課題があるかを考察することを目的とした。

2.研究の視点および方法

 高齢者の旅行には、健康状態や就業状況、一緒に旅行する家族や仲間の存在などが大きく影響する。わが国において高齢者 の旅行を支援する体制がまだ未整備である。多くの高齢者が旅行をすることができるようになり、自己実現がなされQOLが向 上であろうという観点に立ち研究が実施された。
  調査対象は、K市で開催された老人大学に参加した高齢者137名である。調査方法は、無記名自記式質問紙を用いた集合調査 であり、講演終了後に回収した。調査期間は、平成21年5月である。有効回収率は、87.6%(120名)である。調査内容は、研究 者が自分で作成したものであり次の8項目である。①健康状態、②旅行が好きか、③去年1年間(平成20年4月~平成21年3月) に旅行したか、④去年1年間の旅行回数、⑤去年1年間に誰と旅行したか、⑥今後、旅行するにあたり体の不安があるか⑦旅行 するために何が必要と思うか、⑧何歳ぐらいまで旅行したいか(国内旅行、海外旅行)である。

3.倫理的配慮

 調査にあたり老人大学に参加した高齢者にこの研究の目的と研究方法について説明をした。この研究に参加するかは本人 の自由であり、拒否しても何の不利益も被らないことを伝えた。この研究によって得られる研究対象者の個人情報は保護され、 この研究以外の目的で使用されることがないことを伝えた。

4.研 究 結 果

 K市の老人大学は、入学資格が60歳以上の老人クラブ会員で意欲的で向上心、研究心のある者となっている。この老人大学 は、平成21年5月から平成21年2月まで毎月1回、計10回開催される。老人大学の参加した者のうち回答者は、60歳代24名、70歳 代60名、80歳代24名の合計108名であった。男性が25.9%(28名)女性が74.1%(80名)であり女性の方が多かった。仕事に従事 している者が常勤(農業も含む)20.4%、非常勤が6.5%であり、仕事に従事していない者は73.1%であり、仕事に従事してい ない者の方が多かった。
  健康状態については、とても良い9.3%、良い39.5%。まあ良い41.0%、あまり良くない10.2%、良くない0%であり、老人 大学の参加者の健康状態は良好であることがわかった。旅行が好きかについては、とても好き13.9%、好き46.3%、まあ好き34.2% 、あまり好きでない2.9%、好きでない2.7%であり、老人大学の参加者は旅行が好きな者が多いことがわかった。
  去年1年間に旅行をしたかについて、はい89.8%、いいえ10.2%であり老人大学の参加者は約9割の者が旅行していること がわかった。国内旅行をした者を年代別に分けてみると60歳代では日帰り旅行平均2.0回、宿泊旅行平均1.8回、70歳代では日帰 り旅行平均2.4回、宿泊旅行平均1.5回、80歳代では日帰り旅行平均3.2回、宿泊旅行平均1.3回であった。老人大学の参加者は、 年齢が高くなるにつれ宿泊旅行から日帰り旅行へ変化していることがわかった。海外旅行した者(1回6名、2回2名)は8.2% と少なかった。
  去年1年間に一緒に旅行した人を多かった順で述べると、60歳代では友人、仲間、配偶者、70歳代では配偶者、仲間、友人、 80歳代では子ども、友人、仲間であった。老人クラブの参加者は、高齢になっても友人や仲間との交流が続いていることがわか った。
  今後、旅行するときの体の不安については、60歳代ではあまり不安がない45.8%、少し不安29.2%、不安なし25.0%、70歳 代ではあまり不安がない40.0%、少し不安36.7%、不安なし20.0%、とても不安3.3%、80歳代では少し不安54.2%、あまり不安 がない20.8%、不安なし12.5%、とても不安12.5%であった。老人クラブの参加者は、高齢になるにつれ旅行するにあたり体の 不安を感じていることがわかった。その不安を軽減するためには、国内・国外の旅行地でも安心して医療機関を受診できる体制や 医師や看護師の同行、観光医学講座を受講し緊急時対応が可能なスタッフの育成などが今後の課題である。また、介護者が安心し て旅行に行けるようなショートステイの増床も今後の課題である。
  旅行するにあたり必要なこととして多く上げられたのは、60歳代、70歳代、80歳代ともに健康、体力、お金、仲間であった 。老人クラブの参加者は、旅行するには健康と体力が必要であると考えていることがわかった。高齢者の旅行には、高齢者自身 が健康管理と体力の維持できるような支援と仲間づくりの支援が必要であることが示唆された。
  何歳ぐらいまで旅行をしたいかについては、国内旅行では60歳代平均77.5歳、70歳代平均81.0歳、80歳代平均83.6歳であっ た。海外旅行で60歳代平均72.2歳、70歳代平均78.8歳、80歳代85.0歳であった。老人クラブの参加者は、高齢になっても旅行を したいと思っており、この気持ちを持ち続けてもらえるように支援していくことが重要である

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