10代子育て家庭への妊娠期からの福祉的支援に関する研究
-児童福祉入所施設出身者、施設職員への調査-
○ 東洋大学 若林 ちひろ (会員番号7491)
東洋大学 森田 明美 (会員番号0646)
日本大学 井上 仁 (会員番号6187)
江戸川大学総合福祉専門学校 田谷 幸子 (会員番号7045)
こども教育宝仙大学 前田 信一 (会員番号6424)
東洋大学 兼井 京子 (会員番号6391)
キーワード: 《10代子育て家庭》 《児童福祉入所施設出身者》 《妊娠期から子育て期の包括的支援》
本研究は、子育てが困難な10代の妊娠・子育ての実態把握と、それをふまえた10代の妊娠・出産・子育てへの継続した
福祉的支援システム開発を、10代の出産子育ての増加と施策化が先行している韓国での調査、韓国研究者との共同研究を手
がかりにして開発することを目的としている。
その中で、本調査の目的は、10代子育て家庭の妊娠期から子育て期までの実態や課題を明らかにするために、家庭的基盤
が脆弱である児童福祉施設出身者の妊娠期から子育て期の現状を明らかにすると共に、施設及び施設職員の支援の現状を明ら
かにすることである。そのうえで、妊娠期から子育て期までの体系的で包括的な支援体制の構築を目的とする。この報告では
、先行研究とプレ調査による研究方法について報告をする。
先行研究においては、妊娠期から子育て期にわたって継続的に調査された研究はこれまでの調べでは存在していなかった。
そのため、妊娠期から子育て期までの10代親に関する実態の調査をまず行うこととする。
調査方法は、施設及び施設職員に対しては、質問紙調査及び半構造化面接インタビュー調査を行う。10代出産の子育て
家庭に対しては、半構造化面接インタビュー調査を行う。
施設及び施設職員調査については、施設出身者の妊娠期から子育て期の支援に関わった児童福祉施設職員、児童自立支援
施設職員、また現在10代親の妊娠期から子育て期の支援に関わっている婦人保護施設職員が調査対象である。10代親の子育て
家庭調査については、児童福祉施設、児童自立支援施設での生活経験がある10代親を調査対象とする。調査期間はいずれも平
成21年8月1日~平成23年8月31日を予定している。
子育てが困難な10代の妊娠・子育ての実態把握の調査結果を踏まえた上で、10代の妊娠・出産・子育てへの継続した福祉
的支援システムを構築できるようプログラム開発などを目指していく。
学内の研究等倫理委員会の審査にかけ承認を得ている。ヒアリング調査に当たっては、対象者に実施目的、結果の活用方法 などの説明を行い、同意書を取り、職員の同席をお願いする。質問紙調査においては、結果の活用方法、個人情報保護になど に関する文書を同封することとした。
4.研 究 結 果全出生数における10代女性の出産はわずか1.5%である。だが、その子育ては課題が多く、先行研究においては、10代親は
妊娠期から子育て期にわたって孤立しやすい環境にあり、家族的・社会的支援が必要だと指摘されている。本研究の対象とし
ている施設出身者の10代での妊娠・出産数は、これまで明確な数字は明らかにされていないが、施設関係者の実感として一般
平均よりもはるかに高いと感じていることがプレ調査において語られている。また児童福祉施設出身者の場合は家庭環境がも
ともと脆弱であるだけでなく、本人自身が他者とのコミュニケーションに問題を抱えるケースが多く孤立しやすい環境にあり
、固有の支援システムを考える必要性ある。
児童福祉施設出身者の進学やライフチャンスについては、近年盛んに研究され、支援体制がとられつつあるが、新しい家
族をもつための支援、つまり妊娠期から子育て期への支援は見過ごされてきた。これまでの児童福祉施設及び婦人保護施設職
員への予備ヒアリングで、ほとんどの施設職員が子ども達の妊娠期から子育て期への支援に問題を感じている。しかし、現在
の制度においては利用できるサービスがなく、職員の個人的支援にとどまっているのが現状である。
このような問題意識および現状を踏まえ、支援システムを作り出すために、支援者と当事者の協力を得て行う調査研究の
枠組みを作り出した。今回の調査は児童福祉施設で生活した経験のある10代の子育て経験のある当事者と施設職員に対して行
う妊娠期から出産期、子育て期における10代親の養育状況、家族状況、心理的な変化、パートナー・家族・友人等との関係、
支援体制の現状などの調査である。
本研究は児童福祉施設で取り組まれているリービングケア、ファミリーソーシャルワークおいても新たな一面を提示する
ことになると考える。
今回の調査研究は、10代親への支援が行われている韓国においても同様の調査を行う予定である。韓国での10代親支援の
現状や課題を同じ調査内容から比較研究をし、日本での支援体制への一提言とする。
調査項目の詳細については、発表時に提示する。
*本研究は、科研基盤研究B(一般)「10代子育て家庭への妊娠期からの福祉的支援に関する日韓比較研究」(研究代表者:
森田明美)によるものである。