ポスターセッション歴史・制度  宮永 耕

薬物依存者に対する回復援助資源の現状と課題
リハビリテーション施設の社会的機能と利用者の生活保護受給状況を中心に

東海大学  宮永 耕 (会員番号0631)
キーワード: 《薬物依存》 《回復援助》 《サービスプロバイダ》

1.研 究 目 的

わが国における薬物依存者処遇において相対的に大きな領域を占める司法及び医療諸制度と関連しつつ、社会福祉援助機関と 関連して役割を担ってきたリハビリテーション施設ダルク(DARC)の今日的な機能とその課題を明らかにするため、5年前(2004 年2月)に実施した生活保護利用者等に関する調査を再度実施した。この間の制度的変更による影響を整理分析することと合わせ 、薬物依存者を対象とする社会福祉援助の役割とその特徴について、特に低所得の状態にある薬物依存者を対象として実施されて いる生活保護制度の運用状況から考察した。

2.研究の視点および方法

民間薬物依存者回復援助施設であるダルクを対象として、平成20(2008)年2月現在活動している全国のダルク各施設に対し、 調査目的等を記載したマニュアルを添付した自記式調査票を送付し、2月1日現在の全施設利用者とそのうち生活保護受給する利 用者について抽出記入を依頼し、全施設より回答を得た。このことにより、薬物依存からの回復を目的としてダルクのプログラ ムを利用する薬物依存者を数量的に把握するとともに、前回調査時(2004年2月)のデータとも一部比較検討した。なお、前回 調査時点の調査対象施設数は25ヶ所であったが、今回調査では対象施設数が48ヶ所に増加している。

3.倫理的配慮

日本社会福祉学会研究倫理指針に照らし、調査に関する指針規定を遵守した。今回調査対象となった各施設に対しては、 本学会研究発表において調査結果の各数値の公表に関して通知を行い、異議の有無を確認した上で、承認を得ている。なお、 「ダルク」はその社会的機能、経過、規模から本研究では固有名詞として扱っていない。

4.研 究 結 果

①調査対象となった平成20(2008)年2月1日現在で薬物依存からの回復のためダルクを利用していた556人のうち、生活保護 を受給者は345人で、前回調査時の42.7%を大きく上回り、全体の半数を超えて62.1%を構成していた。②回復プログラム利用者 の全体としても、またそのうちの生活保護受給者で見ても、年齢階層別では今回も30歳代が最も多く、40歳代がそれに続いたが、 前回調査時には20歳代だったことから利用者年齢は高年齢に向かって移動している。③2004年以降この5年間に実施された社会諸 制度の改正ないしは変更、特に障がい者福祉施策との関連から、ダルクの運営組織自体も大きな変更を余儀なくされており、今 日ではNPO法人化(法人格取得)と各団体内での複数プログラム・事業運営を主とした変更の方向が顕著に認められた。④矯正施 設における改善指導への関与が、司法制度改革の中に位置づけられたことをインパクトとして、全国的に司法処遇領域との関連が 急速に強化されつつある。ダルクの機能の社会的な活用が新たな領域で開始され、外部より役割が付加されてきている。⑤当初 から薬物依存者自身の手による回復を目指したコミュニティ(共同体)として活動してきたダルクは、20年以上の期間にわたる 全国的に拡大する実践過程の中で、関連諸制度の変更及び社会資源配置の状況等の影響を強く受けつつ、今日ではサービスプロ バイダとしての機能を焦点として、業務の再編を迫られる状況にも直面している。

(本研究は、H.19年度厚生労働科学研究費補助金 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業として、報告者 が分担研究したものである。)

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