ポスターセッション地域福祉  崎原 秀樹

学科学会機関誌「ゆうかり」を中心とした学会活動の試み
-コミュニティソーシャルワークの視点から-

○ 鹿児島国際大学  崎原 秀樹 (会員番号6715)
鹿児島国際大学  田畑 洋一 (会員番号1412)
鹿児島国際大学  小窪 輝吉 (会員番号2758)
鹿児島国際大学  田中 顕悟 (会員番号3490)
キーワード: 《学科学会活動》 《機関誌》 《コミュニティソーシャルワーク》

1.研 究 目 的

08年度入試で、定員割れを起こした4年制私立大学は昨年比7.4ポイント増の47.1%に上り過去最悪になった。東京の有名私大 など大規模大学では、志願者が増えている反面、少子化による「大学全入時代」を目前に控え、小中規模の私大を中心に、 淘汰の時代を迎えている(私立学校振興・共済事業団)。社会福祉、介護系学科の志望者の減少も続いている。
  社会福祉や介護に関心を持ち、次代の関連業界を担う者を養成する小中規模大学の学部、学科では、さしあたってどのよ うに学生を集めるかが急務だ。他方、このような状況に至ったからこそ、集まった学生に教育を行い、国家資格合格者増加を 含む学生の「生きる力」を培うかかわりを通じて就職実績等を挙げ、様々な地域社会で活躍できる人を増やす必要があろう。 最終的には中高生や保護者、地域の福祉を中心に各業界から評価を得る中で大学社会福祉学科の役割をどのように果たしてい くかが問われている。
  本報告では、鹿児島国際大学福祉社会学部社会福祉学科設置の社会福祉学会、特に機関誌「ゆうかり」を中心とした活動 を取り上げる。

2.研究の視点および方法

本報告では、学科教育の場を学生と教員が共通の目標を持って過ごす擬似コミュニティと捉えたい。学科社会福祉学会は カリキュラム等の学科教育の縛りを離れて、学科教育を活性化するためのアソシエーション組織と言えよう。したがって学 科教育と学科学会活動をつないで、より豊かな学科教育の場を作っていく一連の取り組みをコミュニティソーシャルワーク の視点から捉えたい。具体的には社会福祉学科という擬似コミュニティが当面する課題に社会福祉学会として4年間どのよ うに取り組んできたかを紹介し、今後の課題を含めた学会活動の役割を学科の教育活動との関連で検討したい。

3.倫理的配慮

 機関誌「ゆうかり」掲載の実習体験やエッセイ等に登場する個人名、疾患名、施設名、地名等文全体から特定の個人 やその人に関する情報が漏れることがまずい場合、筆者と学会運営委員が話し合って内容に支障が出ない程度に削除ある いは変更した。

4.研 究 結 果
4.1.学科と学会の構成:1982年開設で定員600名(09.5.1現在、576名)、大学院前後期課程定員29名(30名)、教員20名(内、 大学院専任3名)。社会福祉学会は学生及び教員により構成され、事業は学会運営委員(教員4名、学生約40名)が中心に 運営する。
4.2.学科の課題と学会活動:学科の課題として①初年次教育(新入生ゼミ)の内容と方向性、②福祉・教育職やそれらに 限定されないキャリアデザインのための学びの内容と方向性、中でもⅰ)社会福祉援助技術演習、ⅱ)現場実習や報告書 作成後の教育的かかわり、ⅲ)国家資格取得や演習論文作成に向けた取り組み等が挙げられる。学会会則によれば、学術 研究を推進し、会員相互の学問的交流を促進するとともに、地域社会の文化的発展に寄与することを目的とし、会報や 機関誌の編集・発行、研究会・講演会の開催、その他、本会の目的を達成するための必要と認められる事業を行う。筆 頭著者は05年4月から学会運営委員になり、07年度から学会活動成果の一部を掲載し学科教育に役立てる方針で機関紙 「ゆうかり」編集に中心的に関わっている。5号(06年3月)~8号(09年3月)まで発行した。
4.3.機関誌「ゆうかり」5号~8号の目次から見た4年間の取り組み:5号では、学会自主研究助成による研究報告、大学 院福祉社会学研究科5周年記念大会報告、学会講演会要旨、演習論文テーマを掲載し「エッセイ:先輩達は今ここで」 を始める。6号では、昨年の内容に加え社会福祉学会九州部会第47回大会参観記、学生ボランティア体験記を掲載し、 シンポジウム「社会福祉学科に求められるものは何かー卒業生と、仕事や学生時代を語る」報告とシンポ参観記、合 格体験記(国家試験や教員採用試験等)を始める。7号では、社会福祉援助技術現場実習事後協議会・シンポジウム報告 を掲載し、在学生のエッセイを始め、8号では、精神保健福祉現場実習報告会報告を掲載し、「鹿児島の福祉・最前線 」を始めた。8号(全77p)は大学ホームページからアクセスすれば、PDFファイルで一覧できる。
4.4.機関誌「ゆうかり」編集・発行を学科教育に活かす試みと今後の課題:編集担当教員が他の運営委員の協力を得て OBのネットワークにつながり、また新入生ゼミを始め授業での学生の関わりや、教員の紹介により原稿依頼を行ってき た。原稿編集をメールや直接会って行う中で彼らの省察を通した人間形成に関わり、教員が多くを教えられている。合 格体験記、シンポ参観記、在学生のエッセイ等は他の教員にも少しずつ授業等で活用して頂けるようになり、学生の考 え方に影響を与えているという感想も得ている。筆頭著者は原稿執筆者に授業を行ってもらう機会も作っている。学生 やOBの中には読む側から書く側に回る者が出ている。教員が学科約30年の歴史にアクセスし学科独自の内容で、高3生を 大学生にする初年次教育、高3生の学力まで引き上げるリメディアル教育、仕事と人生等に関するテーマを、学生と編集 する営み自体がコミュニティソーシャルワークの視点とも言えよう。今後も教員では伝えられない体験や考え方に触れ る機会を、誌面編集を通じ少しずつ学生を主体にして企画したい。学会企画や運営に学生を巻き込み、自主企画や自主 研究助成による研究報告会開催等を通じ学科の課題に対する取り組みにつなげたい。

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