ポスターセッション地域福祉  新井 康友

A県のBニュータウンにおける孤独死に関する研究

中部学院大学  新井 康友 (会員番号7336)
キーワード: 《孤独死》 《公営住宅》 《自治会》

1.研 究 目 的

2009年度版『高齢社会白書』によると、2008年10月1日現在の高齢化率は22.1%まで上昇した。さらに総人口に占める 75歳以上の高齢者の比率は、10.4%と初めて1割を超えた。そして、『高齢社会白書』では今後、ひとり暮らし高齢者が 加速度的に増えるとみられる都市部のひとり暮らし高齢者の対策の必要性が強調された。つまり、今後、ひとり暮らし 高齢者に関するさまざまな福祉課題が出てくることが予想されるが、その1つが孤独死である。
  孤独死が社会問題として大きく取り上げられたのは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の被災地に作られた 仮設住宅での孤独死からである。しかし今日、孤独死は全国各地で発生している。特に集合住宅を中心とするニュータウン は急激な少子高齢化、都市基盤の老朽化という問題を抱えている。そこでは高齢化率の上昇だけではなく、ひとり暮らし高 齢者や高齢夫婦世帯が急激に増加する。その一方で、子どもや孫と同居する世帯は減少傾向にある。
  すでに厚生労働省は、2007年度から都市部を中心に、地域から孤立した高齢者やひとり暮らし高齢者の死亡が増加し、 こうした高齢者の孤立死を防止する観点から、国・地方自治体等が主体となって総合的な取り組みとして「孤立死防止推進 事業(孤立死ゼロ・プロジェクト)」を実施した。そして、今日、孤独死に関する課題は無視することができない状況にな っている。また、常盤平団地(千葉県松戸市)では孤独死予防活動として、新進的な取り組みをし、孤独死の実態把握など に努めている。
  そこで本研究では、公団住宅、分譲住宅(戸建てなど)、公営住宅が混在するA県のBニュータウンにおける孤独死の 実態について分析する。

2.研究の視点および方法

現在、孤独死について明確な定義付けは行われていない。孤独死に類似することばとして、「独居死」「孤立死」とい うことばがある。本研究では、ひとり暮らしで誰にも看取られずに死亡した変死を孤独死と位置付ける。
  Bニュータウンを管轄するD警察署の協力により、2003年から2007年までに管轄内で発生した孤独死(変死)のデータ を得た。この5年間に発生した179件を分析対象にした。公表されたデータの内容は性別・年齢・住居形態・住区・発生月 であり、これらのデータを分析した。

3.倫理的配慮

孤独死(変死)に関するデータは、D警察署に研究の趣旨を説明し、データを入手した。開示されたデータには個人が 特定できる内容は削除されていた。そして、データは研究目的のみに使用し、かつ統計的に処理を行ない個人が特定・推測 できないように配慮した。また、データは、D警察署の了解を得た上で開示している。

4.研 究 結 果
【Bニュータウンの概要】
人口:141,877名、世帯数:57,634世帯、高齢化率:17.5%(2005年国勢調査)
面積:1696.12ha(2007年3月現在)
1967年入居開始、1983年建設事業完了
   Bニュータウンは大きく3つの地区に分けられ、その中に16の住区が配置されている。
住居形態:分譲住宅:22.1%
       賃貸住宅:76.9%(公営住宅:40.2%、公団賃貸住宅:21.8%、公社賃貸住宅:15.5%、その他:0.6%)  (戸数比。2005年『C市統計書』)

  Bニュータウンにおける孤独死の件数は2003年25件、2004年38件、2005年47件、2006年36件、2007年33件であった。 5年間で179件の孤独死が発生していた。65歳以上の孤独死の件数は65歳未満のそれの約1.7倍であることがわかった。 さらに男性の孤独死の件数は女性のそれの約2倍であることがわかった。つまり、男性の65歳以上の高齢者に孤独死が 多く発生している。
  そして、65歳以上の高齢者の中でも「前期高齢者」の孤独死の件数が多く、さらに男女比では男性に孤独死の件数が 多いことがわかった。
  また、住居形態別にみると、孤独死発生件数の約6割が「公営住宅」で起きている。さらに男女比では男性に孤独死 の件数が多いことがわかった。
  しかし、Bニュータウンにおける孤独死は高齢化率の高い住区やひとり暮らし高齢者が多い住区の発生率が比例して 高くないことがわかった。そして、孤独死発生率は傾向として、自治会加入率の高低が関係していることがわかった。

  本研究は木脇奈智子(藤女子大学)・棚山研(羽衣国際大学)と共同で行った調査の研究成果の一部である。そして、 本研究は、平成19年度に財団法人日本証券奨学財団研究調査助成(研究代表者:棚山研)を受けて行った研究成果の一 部である。

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