自由研究発表高齢者福祉8  小原 眞知子

ケアマネジメント実践における介護支援専門員の業務特性の研究(1)
-ケアマネジメント業務自己評価尺度開発のための予備的分析―

○東海大学  小原 眞知子 (会員番号2601)
東海大学  西村 昌記 (会員番号4173)
関西学院大学  大和 三重 (会員番号0258)
関西学院大学  小西 加保留 (会員番号0983)
岡山県立大学  村社 卓 (会員番号2119)
キーワード: 《介護支援専門員》 《業務の困難度》 《多元的尺度開発》

 

1.研 究 目 的
 本研究は、ソーシャルワークの専門性の視点から、介護支援専門員の業務遂行に求められる能力についての研修ニーズを明確化し、その職務に貢献できるものを取り入れた研修プログラムの開発を目的としている。そこでケアマネジメントの支援プロセスから抽出された33項目の業務をもとに、業務の困難度と重要度の関連性およびケアマネジメント業務における自己評価に向けた多次元尺度を作成するための基礎的分析を行った。

2.研究の視点および方法
 調査は2007年11月から2008年1月にかけて、関西地区の介護支援専門員専門研修に参加した介護支専門員600名と主任介護支援専門員研修に参加した主任介護支専門員492名を対象に、研修会場での集合調査法によって行われた。有効回収数(率)は、介護支専門員538名(89.7%)、主任介護支援専門員389名(79.1%)であった。
 分析1では専門研修に参加した538名を分析対象とし、2次元プロットを用いて業務の困難度と重要度の関連性の基礎的分析を行った。その上で、分析2で主任介護支援専門員研修に参加した者を加えた872名を分析対象とし、33項目の困難度評価を観測変数とする因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。

3.倫理的配慮
 本研究は、本学会の研究倫理指針に基づいている。研究目的・方法等を調査機関に協力依頼の同意、および発表の許可を書面で得ている。

4.研 究 結 果
 分析1ではケアマネジメント業務の困難度については「いつも困難を感じている」(0点)、「しばしば困難を感じる」(1点),「時々困難を感じる」(2点)、「ほとんど困難を感
じない」(3点)の4段階評価で回答を求め、重要度については多重回答形式で「特に重
要であると思う」項目をすべて提示してもらった。その結果、困難度と重要度の間に大きな乖離が認められた。重要度が高いと認識された項目は、「介護保険制度に関する最新の情報を収集する」「利用者の自己決定の尊重に努める」「介護保険制度の内容を理解する」などであり、一方、困難度が高いと認識された項目は、「現在の制度に対して何らかのアクションをする」「地域に新たにネットワークを形成する」「必要に応じて制度以外の資源を見つける」であった。また、重要度と困難度の2次元プロットから、両者が相対的に高い項目として「介護保険制度に関する最新の情報を収集する」、「必要に応じて制度以外の資源を見つける」、「介護保険制度の内容を理解する」、「利用者のニーズと家族のニーズをすり合わせる」、「支援に活用できるその人らしさを把握する」、「利用者に適したサービス担当者会議を運営する」が析出された。
 分析2では主任介護支援専門員を加えて因子分析を行った結果、5因子が析出された。そこから因子負荷量の高い変数を各3項目、計15項目を選び、再度因子分析を行った。その結果5因子が注出され、それぞれ「環境開拓」「制度理解」「利用者受容」「ニーズ尊重」「情報活用」と命名した。ぞれぞれの信頼性分析の結果、クロンバックのα係数の値はいずれも0.7以上であり、総合評価尺度も.874と十分な信頼性を有することが示された。基準関連妥当性(判別的妥当性)を検証するために、経験年数の浅い層と長い層の尺度得点の比較を行った。結果は、各尺度とも経験年数の長い層の方が高得点であり、尺度の妥当性を有することが示された。


5つの下位次元のうち、他の次元と比べ「環境開拓」の得点が著しく低い点には注目を要する。この得点は、基礎資格(福祉系か、看護系か)や主任介護支援員と一般介護支援員の間においても明確な差異が認められなかった。また、経験による差も相対的に小さい。これらのことは、ケアマネジメント業務において重要であると認識されているが、業務上困難と捉えられ、実際になされてこなかった業務内容と捉えられよう。
 本研究の限界としては地域が関西地区の1県に限定されているため、その妥当性については今後検証を深めていく必要がある。今後の課題として15項目を総合評価尺度とするには、さらなる高次な因子分析(構造方程式モデリング)を行う必要があること、及び自己評価尺度として用いるためには、下位次元ごとの具体的な評価基準を作成する必要がある。
 なお、本研究は平成19年度厚生労働省 老人保健健康推進等事業補助金、平成20年度文部科学省科学研究費補助金(研究代表者:白澤政和)「ソーシャルワークの特性に関する実証的研究」の助成を受けて実施した。

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